知的障害者とファッションをつなぐ元パリコレモデルの挑戦

2018年03月19日 11:30
画像は雑誌より

画像は雑誌より

週末のオフィスに雑誌が届いた。「またどこかの会社のDMかな」と思いながらペラペラとページをめくる。私の目は釘付けになった。本記事の画像をご覧いただきたい。表紙のカバーガールはMOEKAさん。表紙をめくると、緑の中をKAEDEさんがピシっとキメている図柄が飛込んでくる。実は、2人には知的障害がある。

ほかにも大勢の障害をもつ子どもたちが笑顔で登場している。雑誌の名前は『Just Smile』(企画・発行:一般社団法人スマイルウォーキング倶楽部)。知的障害者と健常者をつなぐファッションマガジンである。元パリコレモデルの髙木真理子さんが代表をつとめている。ここで、高木さんの経歴を簡単に紹介したい。

知的障害者と健常者をつなぐ

ファッションモデルとして「COMME des GARCONS」のコレクションでデビュー。その後、三宅一生氏に招聘されパリコレに参加。日本、アジア、ヨーロッパでも一流デザイナーのコレクションに出演しモデルとしてのキャリアを確立。高木さんは、海外を飛び回っている中で、日本人と外国人のアピールの違いなどに気がついたそうだ。

「それは、自己表現の違いです。ウォーキング指導の依頼を受けインストラクターとしてスタートして26年が経ちました。また、メイクやファッション、個々に合ったトータルセンスアップ指導にも力を入れ、グローバルな社会で不可欠なセルフブランディングする術も指導しています。」(高木さん)

「いまは、知的障害児童とその家族に向けた『スマイルウォーキング倶楽部』の責任者として、親と子の自立支援と知的障害の人たちの理解を深めるために若い人たちに向け発信する活動をしています。熱意と誠意をもって人と接することをモットーに、ユーモアのある表現方法で愛情をもって指導するように心がけています。」(同)

障害者支援を行う場合、健常者と障害者のギャップをいかにして埋めていくかに意識が置かれることが多い。結果的にギャップは埋まらず当事者は苦しむことがある。それほど社会は寛容ではないし、障害者が自立できるかという難しい問題も存在する。

「まだまだ未完成ですが、次のような意識で進めています。『保護者も普通に接してほしい』『この子を理解してほしい』『この子がステージで何か披露しても身内か福祉関係の人ばかり』。そのような保護者が何人もいたので、『では ファッションを変えましょう!今のままではどう見ても障害者!にしか見えないですね』と。」(高木さん)

「ジャージにスニーカー。これでは一流ホテルにも出入りできないし、社会人としても対応してもらえないですよね。イベントをやっても身内しかこ来ない?いやいや、障害があっても スゴイ!と思うものであれば他人でも拍手してもらえると。『理解してほしいは、理解させてるようにしてみたらいいんじゃないですか』と意識を変えました。」(同)

いまは、インストラクター、保護者 、メンバーの三位一体で支えあっているとのこと。受動的な待ちの姿勢ではなく、能動的な攻めの姿勢が重要であると高木さんは解説する。

画像はモデル時代の高木さん

画像はモデル時代の高木さん

「待ちではなく、攻めの姿勢で健常者を理解させようと、大学生、若者に働きかけています。そして 出来る!を証明したいと思います。知的障害者はバリアフリーでなくても大丈夫!と叫びたいのです。また、福祉ではなく、ファッションという視点からエンターテイメント業界で羽ばたこうという夢を実現しようと考えています。」(高木さん)

「歴史はまだまだ浅いですが、新しい風を吹かせることは障害があってもできると思います。『出来ない!』というのは 一番は親なんです。まずは、子離れを優先してトレーニングしています。今は、ウォーキングインストラクターですが、80歳になりましたら、超高齢化社会のために現役モデルとして復帰します。」(同)

簡単ではない障害者支援

4月から、改正障害者雇用促進法が施行される。現在の、法定雇用率は2.0%だが、2.2%へ引き上げられる。しかし、私が知る限り、企業側の理解が深まっているようには思えない。理解が深まらないのだから間違った認識しか残らないことになる。

あなたの周りには障害者はいるだろうか。家族や両親と話したことはあるだろうか。近年、テレビ番組などに障害者が登場する機会が増えてきた。啓蒙という点で考えれば大きな進歩だと考えている。しかし、なかには障害者を見世物にしているという意見がある。

これこそが差別の元凶であることを知らなければいけない。障害者や家族は世の中の偏見に苦しんでいる。偏見を無くすためには、一般的にも広く障害のことを知らしめなければいけない。そして啓蒙と理解が進むことを期待している。

2015年、ハフィントンポストに掲載されたダウン症の娘をもつ、キャロライン氏のメッセージに注目が集まった。「これが私の娘、ルイーズです。娘は生後4か月で、2本の腕、2本の足、2つの素晴らしいふっくらした頬、そして1つの余分な染色体があります」。キャロライン氏は「ダウン症」を可哀想だと決めつけることで、多くの親が苦しんでいると訴えた。

1972年に米国ペンシルバニア州裁判所は「Pennsylvania Association for Retarded Children,PARC判決」を宣言している。これは、差別的な教育に対する是正を求めたものであり、教育のダンピングを招く危険性があることへの警告である。

内閣府の平成29年度障害者白書によれば、身体障害者392万2千人、知的障害者74万1千人、精神障害者392万4千人とされている。多くの人が何らかの障害を有するともいわれているなか、障害者政策は私たちにとって喫緊の課題である。

なお、私は、表記について「障害者」を使用している。「障がい者」は使用しない。過去には、多くの障害者が権利を侵害されてきた歴史が存在する。それらの歴史を、言葉を平仮名にすることで本質をわかり難くする危険性があることから「障がい者」は使用しない。

今回、紹介した、高木さんとは過去に数回お会いしたことがある。社会貢献に造詣が深いことは承知していたが、このような活動を展開してるとは知らなかった。僭越ながら今後のご活躍を祈念申し上げたい。

尾藤克之
コラムニスト

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尾藤 克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員

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