本気を出したAmazonの食品市場支配からどう生き残るのか?

2018年03月31日 06:00

サンフランシスコなど米国で先行、日本にも上陸したアマゾンフレッシュ(Andrew Nash/flickr:編集部)

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

今、EC業界を舞台に「生鮮食品戦争」が起こっているのをご存知でしょうか?

昨年、Amazonがオーガニック食品の高級スーパー・ホールフーズを買収したというニュースが世界中を駆け抜け、新鮮な野菜や果物を届けるAmazonフレッシュがサービス開始となりました。この動きに対抗する形で、日本国内にて生鮮食品を扱う各社で大きな動きがありました。

小売最大手のセブン&アイとアスクルが提携して生鮮食品のEC「IYフレッシュ」をスタート、楽天はウォールマートとネットスーパーを展開、更にローソンは店舗で予約した野菜が受け取れるローソンフレッシュピックのサービスを開始しました。また、イオンはソフトバンクとヤフーと提携協議をしていると発表されており、さながら、「生鮮食品戦争」がEC業界で起こっているのです。

この動きは主に「生鮮食品業者」だけに関わるものと思われがちですが、実は私のような食品を提供する中小ネットショップ事業者にとっても、決して無関係ではないと思っています。これまでAmazonは書籍やクラウドサービスの圧倒的優位性を獲得してきました。そんなAmazonが次に生鮮食品のシェアを取ることができれば、やがては「食品全体の市場」への本格参入に拡大していくのではないでしょうか?

もしもこの記事、食品を取り扱うネットショップ事業者の方が読んでおられるなら、余計なお世話かもしれませんが私から一言言わせて下さい。「あなたのネットショップはAmazonと競合しない独自のビジネス提供出来ていますか?Amazonから生き残る工夫をしたほうがいいですよ」と。これまで様々な市場がAmazonによって駆逐されてきた歴史を考えると、中小企業がAmazonの提供するサービスとガチンコで競合するビジネスをしても、生き残りは難しいと思えます。私は熊本県産の果物ギフト「肥後庵」を運営していますが、起業する前から「Amazonと競合するビジネスだけは絶対にしない」と考えてきました。その考えは今後も変わりません。

今回の話は、Amazonが生鮮食品市場だけでなく、食品市場全体の支配を目論んでいるのでは?という私の見解を前提にお話をしていきます。

右肩上がりのネット通販市場

さて、まずは「Amazonが食品カテゴリを狙うようになったのか?」という理由についてお話しましょう。

Amazonが食品カテゴリを取りに行っている最大の理由、それは「食品はネット通販の分野でもっとも伸び代があり、現在のAmazonが大きなシェアを取れていないから」です。以下は下記のデータを引用しつつ、解説をしていきたいと思います。

データ引用元:【2017年版】国内EC市場のEC化率まとめ|BtoBとBtoC

ネット通販(以下EC)の分野というのは未だにずーっと拡大を続けています。次の表を見てもらうと分かる通り、EC全体の市場規模(棒グラフ)もそうですし、リアル→ネット化も拡大(折れ線グラフ)が続いています。文字通り、「右肩上がり」になっています。

そんな成長を続けるEC物販市場の状況はこのグラフを見てもらうと一目瞭然です。

グラフは筆者作成

そして右肩上がりを続ける、EC物販市場の内訳を見てみましょう。次のグラフを見てください。左から順に市場規模が大きい商材が並んでいます。

グラフは筆者作成

……この意味が分かりますでしょうか?ファッションの市場規模が一番大きいのですが、その次に大きいのは食品です。食品はEC物販の中で、2番目に売上規模が大きい分野であるにも関わらず、EC化率はたったの2.25%です。EC化率というのは

EC化率とは、すべての商取引の内、電子商取引が占める割合のことを指します。

引用元:EC化率とは何なのか?~ECビジネスの可能性~

という意味です。簡単にいうと食品という商材は97.75%がリアル店舗(スーパーや百貨店)で買い物をされており、ネットで買われているのは売上全体の2.25%しかないということです。

もしもいまリアル店舗で食品の買い物をしている人たちが、ネットショップで済ませるようになったら…この14兆円という超巨大市場の97.75%のお金がネットに流れ込んで来ることになります。おわかり頂けるでしょうか?この意味を。市場規模が大きく、ECで化率がとても低いのですから、ハンパじゃない伸び代があるということです。Amazonがこの食品カテゴリを狙っている、という事をご納得頂けたのではないでしょうか?

一般人には見えない未来を見ているAmazon

そうなると顔色を変えるのがリアル店舗で食品を売っている事業者です。Amazonはこれまでスーパーやコンビニなどで買い物をしてきた顧客を狙っています。

そしてAmazonはネットで販売するわけですから、ネット通販で食品を提供している事業者にもこの影響があるでしょう。Amazonが本気を出して食品の分野を開拓するとなると、消費者はこれまでリアル店舗やネット通販で産地直送の買い物をしていた人たちは、Amazonのブランド力や、価格優位性に従って同社へ流れていきます。つまり、これからリアルとネットをまたいだ食品市場争奪戦が本格化するわけです。

肥後庵も熊本県産のフルーツギフトを提供しているので、完全に無関係というわけではありません。幸い、購入頂いているお客さまの9割以上は自分用ではなく贈答用として買い物をされているので、Amazonがスーパーやコンビニに代わる食品提供をしてもただちに影響を受けることはありません。しかしながらAmazonは本当にすごい企業で今後何をするかまったく想像がつかないので本当に目が離せません。これからもAmazonが出来ないこと、やらないことを考えて提供していくしかないと思っています。

Amazonは一般人には見えない未来をみる力があります。将来的には飛行船とドローンを活用した「空中配送」なども考えており、その考えは私たち一般人には理解できるレベルを遥かに超えています。

【シリコンバレー=兼松雄一郎】米アマゾン・ドット・コムが飛行船と小型無人機(ドローン)を組み合わせた「最速配達」を構想していることが特許申請書類で分かった。「空の倉庫」として商品を飛行船に積み込み、空中からドローンで数分以内に注文者へ届ける。1930年代に米国で使われていた小型戦闘機を飛行船に積み込んで燃料を節約する「飛行空母」の物流版ともいえるアイデアで、都市部での大規模販促への活用を想定している。

参考:日本経済新聞「アマゾン、飛行船+ドローンで「最速配達」構想 」

「何をバカな。さすがに空中配送は未来すぎるだろ。そんな事を真に受けてバカじゃないか。」とそう思うでしょうか?いえいえ、考えてみて下さい。少し前までは「なにそれ?そんなのありえるわけないじゃん!」と言われてしまいそうな「個人出版」も、電子書籍のAmazon Kindle ダイレクト・パブリッシングで実現したではないですか?Amazonが登場する前の時代にいって、「これから個人出版が出来るようになり、お金をかけずに誰でも簡単に出版ができてしまう世界が来るよ」といったらどういう反応が返ってくるのかを想像してみて下さい。「バカじゃないか?」と言われてしまいそうですよね?

私が言いたいのはそういうことです。本当にめちゃめちゃやばいんですよAmazonは…。

食品通販事業者がAmazonから生き残るには?

私を含めた食品を扱う企業は、Amazonが出来ないサービスや商品開発をやることが賢明だと思っています。つまり彼らの土俵に入らず、「戦わないで済む戦略」で生き延びるわけです。

世界最大規模の大企業であり、完全無敵で敵なしのように思えるAmazonですが、彼らにも取れない分野があると思っています。それは同じ食品カテゴリでも「オリジナル性の高い食品」や「市場に大規模に出回らない珍しい食品」、それから「贈り物」といった分野です。Amazonは徹底的な合理性を追求し、低価格や便利なサービスがその強さの厳選です。しかし、オリジナル食品や、贈り物の世界は「合理性」だけでは語れない側面があります。生産者が近所の業者にしか提供していないレアなフルーツもありますし、誰もが知っている定番品ではないギフトが相手の心を掴み、喜ばれることは往々にしてあるからです。

私は今後、海外展開や流通量が少なく、他の店舗がなかなか仕入れを出来ない商品や、心をつかむギフトサービス、細やかなカスタマーサービスなどに注力していきます。これらはビジネスをやる側としては、手間もかかりますし、IT化しづらい側面があります。しかし、こうしたAmazonがやりづらい、やれないことに注力し続けて戦いの土俵に入らないようにしたいと思っています。

私は今後もAmazonの食品市場支配から生き残る道を歩み続けていきたいと思います。

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黒坂 岳央
フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」 代表

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