最後の授業を飾ってくれた日本商社マン②

2018年06月14日 06:00

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ブログを見た日本国際貿易促進協会編集部の大谷俊典さんから、同協会の機関紙『国際貿易』で、三菱商事の小山雅久さんが2016年に担当したコラム「今日の話題」計6回分が送られてきた。大学での講演と通じるものがある。最終回2016年12月6月号を共有させていただく。

実は小山さんが2015年3月をもって中国を離れる際、私が北京市内のレストランで送別講演会を開いたことがある。人の縁とは不思議なものだ。その際に使ったPPTを、今回、汕頭大学新聞学院での授業にも持ってきてもらった。当時、中国駐在編集委員だった私は、小山さんの名前は明かさなかったが、以下のコラムを紙上(2015年4月19日)に書いた。

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「中国市場の動向だけでなく、中国が世界で何をしようとしているのかを探ることが問われている」

最近、日本に帰任した在中歴の長い商社マンは言い残した。日本から3兆円を超える政府開発援助(ODA)の円借款を受けた中国は今や、日米に次ぐ投資大国になった。中国がどこで石油や鉄鉱石を買おうとしているのか、食糧の輸入先はどこか。外資にとって中国は、競争相手にもパートナーにもなり得る。ダイナミックな変化をベテラン商社マンは肌身で感じた。

その一方で、彼を含め多くの在中日本人ビジネスマンは本社との対中観ギャップにも悩まされる。2010年に米国に次ぐ世界第2位になった中国の国内総生産(GDP)はすでに日本の倍以上だが、「本社は援助する側の認識から抜けきれない」と嘆く。

「日本には『どうせ中国』『やっぱり中国』という見方が根強く残っている」

彼が残したもう一つの言葉だ。米国の政治評論家、ウォルター・リップマンが名著「世論」で「われわれは見てから定義しないで、定義してから見る」と指摘したように、人は見たいものを見て、聞きたい話を聞く傾向がある。ステレオタイプの思考から逃れるのは容易でない。

経済成長率の目標値が7%に減速され、「とうとう中国の崩壊が始まったか」との声が聞こえそうだ。だが7%のGDP増加分は、タイとマレーシアのGDPを合わせた額に相当する。また、経済発展を先導してきた沿海部では高度成長期を終え、産業構造を転換する局面に入っており、減速化は自然な流れだと多くの海外エコノミストが分析している。内陸部を見れば昨年、省レベルで二けた成長に達したのは5か所、9%以上は12か所に及ぶ。多くの地方は発展途上にある。

習近平国家主席が主導する集中的な腐敗撲滅で複数の指導者が不在となった山西省は、目標の9%を大きく下回る4.9%だった。容赦ない摘発で官全体の士気が低下し、李克強首相が今度は「怠け者は許さない」と叱責せざるを得ない状況が生まれている。9月3日の「抗日戦争勝利記念日」に合わせて北京で軍事パレードが行われるが、主要目的の一つは、習氏の軍での威信を誇示し、腐りきった軍内を引き締めることだ。中国は強さと弱さを抱えながら共産党の一党独裁を堅持する難題に挑んでいる。

深刻な環境汚染を改善し、産業構造の高度化を図り、持続可能な成長路線を目指す中国は、問題の解決を市場開放という外資導入による圧力に頼る道しかない。目ざとい外資は、その「弱さ」が生む商機をうかがう。技術やソフトパワーで中国より優位に立ち、国別では最も多い2万社を超える日系企業には、中国の各地方から多種多様なニーズが寄せられている。日系企業は約1000万人を雇用し、中国の国内経済、社会と不可分の関係だ。

先入観なしで中国の強さと弱さを見れば、日本との深い相互依存関係も見えてくる。

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小山さんとは多くの見解を共有しているように思う。往時を思い出させてくれた大谷さんにも感謝したい。


編集部より:この記事は、汕頭大学新聞学院教授・加藤隆則氏(元読売新聞中国総局長)のブログ「独立記者の挑戦 中国でメディアを語る」2018年6月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、加藤氏のブログをご覧ください。

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加藤 隆則
汕頭大学新聞学院教授、元読売新聞中国総局長

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