補正予算をみない防衛予算議論は不毛

清谷 信一

Wikipedia:編集部

<防衛費>来年度、過去最大に 概算要求5兆円超か(毎日新聞)

政府は、2019年度から5年間の次期中期防衛力整備計画(中期防)で、防衛関係費(米軍再編関連経費を除く)の伸び率を現行の年0.8%から1%超に拡大する方針を固めた。来年度の防衛関係費は22年ぶりに過去最大を更新する見通しだ。陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」やF35ステルス戦闘機の導入費など高額な支出が見込まれており、安倍政権下で進む防衛関係費の増額が加速する。【秋山信一】

6月に閣議決定された経済財政運営の指針「骨太の方針2018」では「防衛力を大幅に強化する」と明記されており、慢性的な財政赤字を抱える中でも防衛関係費は例外的に増加が認められる方向だ。防衛省は来年度予算編成に向け8月の概算要求で5兆円超の防衛関係費を計上する方針だ。

既に何度も申し上げておりますが、大震災以来防衛予算の来年度概算要求要求され、政府案になる段階で落ちた、「買い物」を、当年の補正予算で大人買いしております。

つまり「第二の防衛予算」となっています。ところが本来補正予算とは当初想定できなかった事態が起こり、それを手当するための予算です。例えば現在の大水害の災害派遣のための隊員の手当や燃料代、装備の損耗などを手当てしたり、急激な円安になどによる燃料代の高騰などに対応するためものもであり、本来本予算で買うべき装備を買うための、ポケット代わりに使っていい物ではありません。

昨年度の防衛費の補正予算は2,345億円ですが、その多くは本来の補正予算ではなく、「お買い物」に使われています。

概ね2,000億円というと、約5兆円の防衛費に比べて少ない気がしますが、約45パーセントの人権料食費、SACO、燃料代、基地対策費など義務的な固定費用が防衛予算の多くを占めており、装備調達に使える費用は約17パーセントに過ぎません。装備予算で1,000億、2,000億増えるのは決して小さな数字ではありません。

防衛費、特に装備の予算を国会で審議していても10パーセント前後も補正で追加されるのであれば、来年度の予算を精査して議論することになりません。

国会審議自体意味が無いことになります。
安倍政権はこれをGDPのかさ上げのために防衛産業にばらまいていると言われても仕方ないでしょう。

これは防衛省だけではなく、他の省庁でも同じです。ぼくはこの問題を長年指摘してきましたが、やっと昨年あたりから新聞なども取り上げるようになりました。

社説)来年度予算 財政規律 危機感がなさすぎる(朝日新聞デジタル)
2017年12月23日05時00分

財政規律欠く補正予算のバラマキ避けよ(日本経済新聞) 
2017/11/10 0:54

■本日の市ヶ谷の噂■
陸自のAH-XはNAHと名称が変更された。ヘリ部隊のエスコートのための速度、航続距離を重視するも、未だに国産にこだわってまたAH-64D同様、値段高騰による徹を踏む模様。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年7月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。