就職難 ⁉︎ 米国心臓外科医の仕事探し

2018年09月12日 06:00

前回の投稿でフェロー(訓練生)とアテンディング(独立した外科医)の給料の違いについて話しました。今回は現在僕(フェロー)がぶち当たっている大きな壁、アテンディングになるための就職活動について話します。

アテンディングになると給料も跳ね上がり、たとえばフェローは年収600万円ですが、アテンディングになると年収6000万円!といった感じです。皆からはドクター何々とか言われてなんか敬われますし(フェローは呼び捨て)、専用の手術器具を使えますし(フェローは使いづらくてもアテンディングのものを使う)、自分の部屋があったりします(フェローは小さな部屋にすし詰め状態)。そうです、圧倒的にフェローよりもモテそうなスペックなのです。

シカゴ大学に学生や若手医師などが見学にくると「米国に来た目的はなんですか?」と目をキラキラさせながら質問してくることなどがあり、なんか仕方なく(期待を壊すのもあれなので)「たくさんの手術の修練を積んで、早く一流の心臓外科医になりたいんだよね」とちょっと遠くを見つめながらカッコつけて言ってみたりしているうちに、本来の目的がそのカッコつけに飲まれてきてしまっていましたが、僕が心臓外科医になり米国に来た本当の目的は「いやー、なんかモテるかなーと思って」なのです。そしてモテるためにはアテンディングになることは必須なのだと思います。いきなり話が逸れましたが、今回は就職活動の話です。

残るか帰国か、慎重に選択

僕は現在シカゴ大学での2年目のフェローを終えようとしているところで、これから歩む道にはいくつかの選択肢があります。

まずは日本に帰るという選択肢。これは米国での修練を母国で活かす、学んだことを伝える、「米国帰りだわ!カッコいい!」となる、などの利点があります。しかしながら一方で「あの米国かぶれが」「あー米原(米国と北原を合わせた造語、バカにされている)がまたアメリカではどうだったとか言ってるよ」「あいつの日本語わかりづらいよね、英語も特にうまくないのに」と陰口を叩かれる可能性が大いにあり慎重に選択しないといけないと思われます。

米国に残るという選択肢を選んだ場合、何かしらの職を得ないといけません(ビザの関係上、あとお金)。その一つがアテンディングです。通常であれば心臓外科フェローを終えたあとはするするっとアテンディングの職を得ていくみたいですが、僕の場合は少し異なります。

と言うのも、僕のように途中から米国に入ってきた組は米国の外科専門医(5年間の外科研修が必要)が無いので就職の際に制約が生じるみたいなのです。制約は様々ですが、雇う際に別個に特殊な手続きが必要となり大変面倒くさいというのが大きいのだと思います。

逆にいうと手続きさえ行えば無理ということは大概なく(たぶん)、現に米国専門医をもたずにアテンディングをしている心臓外科医は米国にたくさんいますし、中にはUSMLE (米国医師免許)の資格すら持っていない人もいると聞きます。なんでもありなんですね。

そういった面倒臭い手続きをしてでも採用したい人間かどうか、その人の価値が大事ということなのでしょう。要は僕がその価値ある人間かどうか、というところが問題なのです。僕自身は「僕ってなんて価値のある人間なんだろう」とふとした瞬間に思ったりすることが結構あるのですが、必ずしも誰もがそう思ってくれるわけではありません。というかそう思ってくれる人は少ないと思います。というか今までいたかな。いませんでした。そのため、専門医なし・価値なし状態でアテンディングの職を得るという非常に高い壁にアプローチしなくてはならないのです。

職を得るために必要なその人間の価値、というのは非常に評価するのが難しい項目です。手術のうまさ?論文の数?持っている研究費の額?人の良さ?など様々な要因が絡み合ってきますが、結局はその場所で働き始めてみないとその人(特に若手医師)がその病院において価値ある人間になるかどうかはわからないのだと思います。

そのため、実際に一緒に働いている病院のスタッフの評判や紹介してくれる人のプッシュ感(こいついいぞ!感)などがこの就職活動の結果に非常に大きく影響していくのだと思われます。

そういったことも考慮して、知り合いを増やして就職先の斡旋、コネを得るため別のところに移ってフェローを続ける、という選択肢もあります。ただ、あくまでフェローは訓練生なので長く続けることが必ずしもいいとは言えず「俺はフェロー10年やってるぜ、まだまだ学びたいことたくさんあるからな」とか言っている人は、逆に10年間アテンディングの職を得られなかったという意味を持つため就職時に非常にマイナスに働きかねないのです。なので、このフェロー転々パターンも時間的な制限があります。

そんな中でも米国にいる先輩医師たちはこの限られた制限の中でアテンディングのポジション獲得に成功し、ガハガハ笑いながら生活しているので凄いなぁと素直に感心します。いずれにしろ狭い世界ですから、コネというものは非常に大事なファクターみたいです。専門医なし・価値なし、でも小さなコネと愛想はちょっとある奴、でなんとかアテンディングの職を得られないか日々挑戦しています。

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北原 大翔
シカゴ大学心臓胸部外科医

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