石破・倉重対談から「反安倍という病」を診断

2018年09月16日 15:00

「望月衣塑子なみに毎日記者が質問」で紹介したように、9月14日に日本記者クラブで行われた自民党総裁選候補への記者会見で、毎日新聞の倉重篤郎記者が、望月衣塑子なみに質問とはおよそいえない大演説で安倍首相を攻撃したことはジャーナリズムの自殺行為であって誠に残念だった。

倉重氏と石破氏

それに先立ち、倉重氏は「サンデー毎日」誌上で、『タブーなしの戦闘宣言』『石破茂「災害格差をなくす方策」』というインタビューをして、表紙にもそのタイトルが載っている。

こういう一方的なよいしょインタビューを掲載することと、マスコミ代表として、ともかくも、公平さを装わねばならない立場で質問することと両立しないと思うのが普通の感覚だが、残念なことだ。

また、石破氏も昨年の総選挙のときも同じように首相を「あんた」呼ばわりする品のない質問をして、自民党支持者のほとんどを不愉快にさせた倉重氏のインタビューにこのような形で登場することは、菅野完氏と対談などするのと同様に、そのインタビュー自体が票を減らすことになりそうと、どうして、気づかないのか。二人とも、政治家として、ジャーナリストとして鈍感と言わざるを得ない。

それは、そうとして、インタビューの内容は、さすが倉重さんらしく、ある意味で鋭いもので、分かりやすい。石破氏の考え方が要領よく浮かび上がっている。ただし、ダメなところも同様だし、倉重氏ほどのジャーナリストが明らかに突っ込めばいいとこを自制しているのも分かる。本当は、全文を紹介して論評したのいのだが、そういうわけにもいかないので、要旨を紹介しつつ論評しよう。なお、ここでの発言紹介はすべて要約なので、それを断っておく。

サンデー毎日 2018年09月23日号より(一部加工しています)

倉重氏はイントロで、総裁選挙で防災も論じるべきだと思っていたところ、石破氏のパンフで防災省などを論じているのでインタビューしたと言い訳がましくいっている。

倉重氏は防災省構想をよいしょしつつ危機管理の要諦を聞くと、石破氏は「常日ごろ頭の中で訓練して備えること」というようなことをいう。しかし、それなら、総裁選挙に出ても政策は当選してから考えるとしかいわないぶざまなことにどうしてなっているのか。必要なことは考えておくことでなく、最善の対応をできるようにしておくことだが、日ごろは仕事もない防災省などつくってもできるはずない。倉重氏は、組織をつくるというだけでは甘いとなぜ突っ込まない。

倉重氏は党員票で4割でも石破氏が取れば安倍批判が強いことの証明という。しかし、6年前に党員票で圧勝した石破氏が党員票では最低限勝たねば話にならないと最初は言われていたのに、ずいぶんと、勝敗ラインを下げたものだ。

これに対して、石破氏は、自民党が国民政党である以上は、国民の平均的な気持ちに寄り添うべきだという。おやおや、国民政党とは一党独裁国家の政党なのか。与党と野党が違う考え方で、対決し国民の支持を争うのが民主主義でなかったのか!

倉重氏はもっとモリカケに言及すべきだと言うのに対し、石破氏は「それより日本の将来像を論じたい」といったようにいったんいうが、「政府の言うことなんて信用できないと言われては前に進めない」といってしまう。モリカケを攻撃しても、その人に政権をとらそうということには結びつかないと思う。それは候補者以外に言わせておけばいいと思う。

政治の信頼を取り戻すにはという倉重氏の質問に、「人事の運用を客観化する」ようなことを石破氏はいっている。しかし、いま問題になっているのは、一般公務員の勤務査定などでなく、次官や局長や官邸のポストなどである。それを、客観基準で決めるべきなのか?民間企業でも幹部人事を客観評価で決めたりしないだろう。頓珍漢だ。ちなみに私は、政権と対立する意見の人を待避線に入れて保護するシステムを提案している。

トランプとの関係について聞かれて、友情と国益は違うというが、「まったく関係ないわけはない」。とくにトランプのような人相手には、友情があるかどうかで大違いであることを理解していないのか、どうせ、無理だと分かって話をそらしているのか。いずれにせよお粗末。

そして、アメリカへの依存を減らす、地位協定の見直しをするという。しかし、それは、石破氏が集団的自衛権に憲法上の制約や限界なしといたり、アメリカを守るために自衛隊は世界中どこでも戦うと行っていることとワンセットで、ここは、リベラルな(笑)倉重氏が突っ込むべきなのだが、無言でスルー。

拉致問題については、連絡事務所をつくって相手のいうことをよく聞いてやる」という持論を展開。要するに総連を大使館として認めてやるというのとほとんど同義だ。私自身は、どこかでそれに踏み切ることは腹案としてあってよい、というかあるべきだと思うが、核と一括で解決することを狙ってぎりぎりの神経戦をやっているときに総裁候補がそれをいうのは、戦場で後ろから弾を打つに均しい。外交センスなさ過ぎ。

中国に対しては「中国が航空母艦を持つから日本も持つ、という考えでは意味がない」「効果的な防衛力(量的には増やさなくて良いという意味か?)」などと、安倍政権が関係国と足並みを揃えて中国の軍拡に対抗措置をとっていることに後ろ向きな姿勢を示しており、愚かとしかいいようがない。食料や環境で協力すればいいとかいってるが、そういうことを散々、日本はやってきたが、その報酬が江沢民の反日や習近平の日本無視路線であったことを分かっていっているのか。代議士を30年もやって防衛相までやった人のいうこととは信じられない。

安倍政権の驕りという倉重氏に対して、三木武夫氏の三度の挑戦を引き合いに出しているが、三木氏は石破氏の親分(といっても最後は裏切ったが)の田中角栄のスキャンダルのお陰で総理になり、ほとぼりが冷めたらお払い箱になった人。それを持ち出すのが賢いのだろうか。

最後にといわれて、「国民世論に訴え、それが自民党の議員に影響を与えることを狙う」と宣言。つまり、野党支持勢力などの後押しで自民党を乗っ取りたいということだ。そんなこと思っていてもいうべきことか。組織の決定を、外部の圧力で自分に有利にもってきたいなどといったらおしまいでしょう。

『反安倍』という病 - 拝啓、アベノセイダーズの皆様 -
八幡 和郎
ワニブックス
2018-09-07
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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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