共産党が暴露:将兵を大事にしない陸自は弱い

清谷 信一

「残存兵30%まで戦闘」石垣での「島嶼奪回」作戦   赤嶺議員、防衛省内部文書を暴露(しんぶん赤旗)

日本共産党の赤嶺政賢議員は29日の衆院安全保障委員会で、防衛省の内部文書「機動展開構想概案」(2012年3月29日付)を暴露し、同省が沖縄県の石垣島を想定した「島嶼(とうしょ)奪回」作戦の検討を行っていた事実を明らかにしました。

「取扱厳重注意」と書かれた同文書では第一段階として、あらかじめ2000名の自衛隊が配備された同島に計4500名の敵部隊が上陸し、島全域の6カ所で戦車を含む戦闘が行われることを想定。「(敵・味方の)どちらかの残存率が30%になるまで戦闘を実施」するとし、戦闘後の残存兵力数が各々538名、2091名となり「劣勢」としています。

その後第二段階として、空挺(くうてい)大隊や普通科連隊からなる計1774名の増援を得ることを想定。最終的な残存兵力数は各々899名、679名で「優勢」となり「約2000名の部隊を増援させれば、おおむね再奪回は可能」などと結論づけています。

同文書は一方で、「国民保護」は「自衛隊が主担任ではなく、所要を見積もることはできない」と記述。住民保護は後回しにされ、大量の住民が巻き添えになる危険を示しています。

共産党GJ!

以前からぼくは防衛省の「島嶼防衛」がオカシイと指摘してきました。本来島嶼防衛は尖閣諸島など無人島や辺鄙な島の防衛が主体であったはずです。ところがAAV7などの装備をみれば石垣島や沖縄本島を想定しているとしか思えません。

これが限定的かつ小規模な戦闘ではなく、本格的な侵攻であり、また沖縄県民を再び戦火に巻き込む前提の作戦です。
野党や沖縄のメディアはなぜこの点を問題視しないのかと度々批判してきました。今回の共産党の質問でその疑惑が事実だったことが証明されました。このような計画が富士学校で研究されていたことは承知してはいたのですが。

島嶼への上陸訓練を行う西部方面普通科連隊の隊員(防衛省サイトより)

しかし、まあなんと粗雑で自慰的な作戦でしょうか。
恐らく2千名という部隊は水陸機動団でしょうが、損耗率7割の被害を前提とする作戦を立てるなんて、旧帝国陸軍の頭でっかちで空想的な作戦参謀ですら立案しませんよ。

そんな損害が許容できるわけもない。よく知られていることですが軍隊は3割の戦力を損耗すると全滅判定されます。全滅覚悟で爆弾三勇士の如く戦えと。

軍事的には極端なものを含めていろいろなシナリオを検討するので、こういういうのもあるという話もあるでしょうが
それにしても、なレベルです。それからゴジラや火星人の来襲もシナリオも必要でしょう。

しかも戦車を含む旅団規模以上の敵が揚陸するということは、海自や米軍の航空戦力がかなり減じていいわけですよね。そもそも敵が上陸する前に2000名の部隊と装備、武器弾薬、食料、兵站関連の装備をどうやって揚陸するんでしょうかね。

敵が本格的な揚陸を行うということは事前に相応の予備攻撃がなされており、また2000名の部隊のどれだけが石垣島に到達できるかもわからないでしょう。まあ、無事に2000名と装備が揚陸できるという自慰的な想定なのでしょう。

仮に到達できての以後の補給すらままならない。
航空優勢も制海権も相手方にあるでしょうから、増援の空挺部隊や陸自部隊も相当がたどり着けないでしょう。

以前富士学校で行ったこの作戦のシミュレーションでは陸自全部隊の半分以上が損耗すると聞いておりました。
この計画はそれの焼き直しだと思われます。

しかも自衛隊の衛生は未だにお子様レベル、お医者さんゴッコレベルです。昨年ぼくの報道もあり、やっと個人衛生キットに補正予算が9億円ついて、若干強化された程度です。その前陸幕は「国内には民間病院が有るので、止血帯、包帯各1個で十分」と強弁しておりました。一体隊員の命を何だと思っているのでしょうか。

しかも統合作戦のとの字もない。
恐らく空海幕とまともに調整も意見交換もしていないでしょう。

なんかこう、控えめにみてAVやフランス書院のウッフン小説を読んで、3Dの女の子を口説こうとしているおっさんの妄想のような作戦です。

何しろ富士学校で業者のレポートを丸写して発表したり、陸幕ではウィキペディアや2ちゃんねるあたりを参照して文書を作る組織です。

そもそも米軍にしろイスラエル軍にしろ、かつての南ア軍にしろ、強い軍隊は将兵を大事にして無理な作戦や損害を嫌います。平然と損耗7割許容なんて作戦を立てる参謀なんざ、即座に銃殺にすべきです。

そして住民保護は人まかせ。
まるでテレビゲームです。
それ以下です。以前ぼくはPC用「大戦略」で国内を舞台にしたシナリオで、勝利条件の第一を民間人の保護救出にしました。これは現実を見ない陸自への当てこすりでもありました。

以前から陸自の演習は例えば対着上陸作戦に関しても、「状況」は布陣してから始まりました。それは法規制などもあって布陣するのが難しく、蛸壺掘ることさえできなかったためです。
ですから「できたこと」にして演習をしてそしてお味方勝利の都合いい結果になるようになっていました。

ですからこの計画を単なる(頭の体操」と考えてはいけません。

■本日の市ヶ谷の噂■
陸自がご自慢のNEC製の無線機システム、コータムは他国製の規格された電池を排除するために独自規格のクソ高く汎用性ゼロ電池を採用。現場部隊から実戦では予備の電池の入手ができないクソ無線機と酷評との噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年12月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。