足音が聞こえてきた電気自動車浸透の時代

岡本 裕明

そろそろ車を買い替えたいと思いつつも大して乗らないし、それ以上にどうしても欲しいと思わせる車がなかなかなかったのですが、昨年秋頃、車に関する記事を読んでいて「これなら乗りたい」というのがようやく表れました。

それはポルシェの「タイカン」でEVの本格的スポーツカーであります。二つの電気モーターで馬力数は600以上、0-100KMは3.5秒以下とされます。かつ、4ドアなので今乗っている日本を代表する2ドアのスポーツカーに比べて扱いはよさそうです。価格もポルシェにしてはお手頃でカナダでは多分10万ドルは下回ると記事に書かれていました。

ただし、唯一の問題はどうやって充電するか、であります。自分の家の駐車場はコンドミニアムの管理組合が電気自動車の充電を頑として認めていません。ここがクリアになれば検討する価値はありそうです。

テスラがなぜ、それでも売れるのか、といえば車の新時代の価値観を是非とも感じたい高額所得者層のハートを捉えたからでしょう。申し訳ないですが、日産リーフでは夢の部分がなくて無理。高額所得者層には絶対空間が必要なようです。

ところが最近、私の顧客がモデルSからモデル3に乗り換えました。なぜ、と聞けばモデルSはデカすぎる、でもモデル3でも500キロは走るしとても満足している、と嬉しそうに話していました。高収入者が現実と実用性を直視し始めたのかもしれません。

これから欧州の車を中心に続々と高級EVが出てきます。時代は着実にそちらに向かっていきそうです。EVが比較的普及しているのが中国で2018年は78万台程度が販売されたとみられ、補助金政策や自動車メーカーへの一定台数のEV販売の縛りなどで強引にEV化を進め、2020年に200万台、25年に全体の4分の1をEVにすると計画しています。

何故、中国ではEVが普及しやすいのか、といえば内燃機関の自動車では完全に出遅れたため、EV市場に賭けているというのが国策的理由でもあり中国の自動車メーカーのモチベーションでもあるのでしょう。日本は内燃機関の自動車性能が非常に高く、電気自動車に十分対抗できるという自負があります。

ほぼ国内だけでしか通用しない軽自動車に自動車メーカーが多くの開発エネルギーを使わねばならないのもある意味、マクロ的に見れば逆風です。自動車産業は日本国内だけではなく、世界市場が中心であることを考えるとこの先の自動車会社の戦略は転機を迎えていると思います。

トヨタがついに重い腰を上げ、パナソニックと共同会社を設立すると発表しました。トヨタのEV化戦略が本格化するということでしょう。その中には全個体電池の開発も含まれるようですから期待できそうです。但し、トヨタはこの数年、車のデザインがパッとしないのが気になります。

日本はインフラ的にはEV環境がだいぶ整備されてきていると思います。それでも売れないのは自動車会社の本気度がないからで特にトヨタが乗り気ではないこととマツダや富士重工が我が道を突っ走っていることでEVへの盛り上がりが限られるから、ということでしょう。こうしている間に日本の自動車がガラパゴス化するリスクを抱えつつあると私は見ています。

何事も変革期には変わる理由を探し求め、正当化するのに苦労するものです。日本はこの点で最近とみに変わりにくくなってきた気がします。一つには高齢化社会で世間の声の保守的思考が進んでいるからでしょう。

一方で先日、私の後輩の現役学生達と話していた時、「免許持っていないしー、でもいつか自動運転になるから免許いらないしー」という発言を聞いた時にはある意味、ゾッとするものを感じました。世の価値観も思った以上に変わりつつあるのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年1月23日の記事より転載させていただきました。