日本尊厳死協会に入会することに

2019年03月18日 06:00

終末期の医療用語は意味不明

尊厳死協会の会員証(協会サイトより:編集部)

親しかった友人、知人が周囲で少なからず多数、亡くなっていきます。自分もいつ末期がんと言われたり、植物人間状態に陥ったりするか分かりません。そこで以前から気にかけていた日本尊厳死協会に入会すべく、申込書を郵送してもらいました。

公立福生病院で透析治療を中止したため、死亡事故が起きました。生前の意思の確認、患者や家族への説明に行き違いがあったようで、調査が始まっています。そんなこともあり、尊厳死協会に入会することしました。会員は12万人で、高齢化が進展、がん死による死亡増加のわりには、少ないでしょうか。

欧米が終末期医療の先進国、日本は後発国であるためか、日本語としてこなれていない医療用語が多く、理解の妨げになっていることを痛感します。「尊厳死」、「リビング・ウイル」がその典型で、とにかく何のことか分かりにくい。この協会は安楽死協会として発足し、1983年に尊厳死協会と改称しました。安楽死のほうがよほど、分かりやすい。

国際的にみて特異な日本

安楽死というと、「死に至らしめる」というイメージもあるので避けたのでしょうか。では尊厳死はどうでしょうか。近著の「安楽死・尊厳死の現在」(松田潤著、中公新書)は、「日本では、安楽死と区別し、生命維持装置の中止を尊厳死と呼ぶ。この用法は世界の中で特異である。国際的には、安楽死や自殺介助を含めて、(全体を指して)尊厳死と呼ぶ」と、指摘しています。

松田氏は、狭義の安楽死(医師が患者に致死薬を注射して生命を断つ)、医師による自殺介助(患者に致死薬を処方し、患者自らが服用して死ぬ)、生命維持治療の中止(日本でいう尊厳死)に分類でき、前二者を合わせて「広義の安楽死」と呼ぶと表現しています。

「尊厳死」という表現も分かりにくい。「個人の尊厳」とは、「全ての価値の根源は個人にあるとみて、国家権力をもってしても侵すことができない」という思想が背景にあるのでしょうか。「患者が自分の意思で延命処置を行うだけの医療をあえて受けずに死ぬ」のは、「個人の意思に基づく死」だから「尊厳死」となるのでしょうか。欧米の思想を理解してからでないと、分かりにくい。

「リビング・ウイル」は「生きている、つまり生前ないし事前」と「意思」を結びつけた言葉で、これまた日本語になじまない。尊厳死協会の説明書では、「終末期医療における事前指示書」と、訳しています。わざわざ英語を持ち出すから、「リビングルームのことかも」という疑問も沸いてきます。

延命治療主義からの転換を

写真AC:編集部

言葉の問題はこれくらいにします。協会の説明書では、「自分は不治の病の状態にあり、死が迫っていると、診断された場合、単に死期を引き延ばすためだけの延命措置を拒否します」、「苦痛を和らげるためには、麻薬などの使用より、十分な緩和医療をして下さい」、「回復不能で持続的な植物状態に陥った場合、生命維持装置の使用をやめて下さい」を事前指示書の骨子にしています。

法的にも過去の経緯を踏まえています。1995年の横浜地裁の判決では、「患者が耐え難い苦痛に苦しんでいる」、「患者は死が避けられず、死期が迫っている」、「苦痛を除去する方法として、ほかに代替手段がない」、「生命の短縮を承諾する患者の意思表示がある」などを「治療行為の中止の要件」として裁判所の判断を示しました(松田氏の近著からの引用)。

特に「患者の意思表示」が重要な要件で、意識が正常な段階で自分の終末期医療のあり方を事前に指示しておく、その手伝いを協会がするわけです。死期が迫ってから家族が判断に迷わないように、医師が後に殺人罪で訴えられたりしないようにしておく。

安易な延命治療主義から転換が必要です。日本では寝たきり老人が欧米に比べ、圧倒的に多い。寝たきりにしておけば手がかからないし、医療費も病院や施設に入ってくる。それではいけません。

本来なら「医療基本法」を制定し、その中で「終末期医療で患者の意思の尊重が明確に規定されることが望ましい」(松田氏)という指摘は同感です。判決、厚労省や各種の医師会のガイドラインに従うのはもちろん、法制化はぜひ必要なのに、日本は主要国に比べ、法的な対応が遅れています。

また、医療技術は日進月歩ですから、かつての「不治の病」も治療できるのかもしれません。「耐え難い苦痛」も、「疼痛緩和と鎮静の両者を適切に用いれば、ほとんどの苦痛はコントロール可能」、「肉体的苦痛というより、精神的苦痛、生きる意味の喪失、周囲に対する迷惑や負担への対応に変化してきている」(松田氏)そうです。国会でも議論を避けてはいけません。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2019年3月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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