GAFAをいじめてもプラットフォーム独占は止まらない

池田 信夫

世界的にGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)規制の動きが強まっている。EU委員会は3月20日、グーグルに14億9000万ユーロの制裁金を課した。アメリカでは2020年の大統領選挙に名乗りを上げた民主党のウォーレン上院議員が、GAFA分割を公約した。

GAFA各社ロゴより:編集部作成

日本でも公正取引委員会がGAFAの調査に不公正慣行について調査を始め、自民党は4月にGAFA規制の方針を打ち出す予定だ。こういうプラットフォーム独占が競争を阻害し、長期停滞の原因になったと考える経済学者も多い。

図のようにアメリカの各業界上位5位までの企業の売り上げ比率は、2000年代に大きく増えてほぼ50%になり、それとパラレルに業界全体の利潤率も上がっている。

アメリカの公開企業の利潤率(青線)と上位5社の売り上げ比率(右軸)ゴールドマン・サックス調べ

上位企業への集中は世界的にも強まっているので、競争から脱落した企業は衰退する。それは経済学の想定するような完全競争ではなく、勝ち残った強者が規模を拡大してますます強くなる進化論的な競争である。

1990年代にインターネットが急速に普及したとき、国家と大企業を中心とする社会から個人を中心とする自律分散型の社会になると予想する人が多かったが、それは逆だった。競争の規模が世界全体に拡大し、規模の経済が極端に大きくなったのだ。

これは日本メーカーが得意とする「いいものを安くつくる」競争ではなく、独裁的な経営者が巨額の投資をして独占を作り出し、その利潤を守る競争である。2004年に創業したフェイスブックを最後に、既存の企業を倒す「破壊的イノベーション」は消えた。新しい成長企業が、大企業に育つ前に買収されたからだ。

この点で企業買収を規制すべきだというアメリカの議論には一理ある。1980年代にIBMのプラットフォーム独占が崩壊したのは、アメリカ司法省との独禁法訴訟を抱えていたIBMが、マイクロソフトを買収できなかったからだ。

日本の問題は逆である。日本メーカーがグローバル競争に敗れたのは、資本市場が機能していないためだ。経営者は雇用を守ろうとして企業の売却に抵抗するので、企業買収ができない。新しい企業が規模を拡大できないので中途半端な規模の企業がたくさん残り、グローバルにはみんな負け組になってしまう。

プラットフォーム独占は国家を超えるので、各国政府が規制するのはむずかしい。20年前に司法省はマイクロソフトを分割して独占を阻止しようとしたが、それを打破したのは訴訟ではなく、グーグルという新しい独占だった。

GAFAを規制しても、長期停滞は止まらない。日本の製造業がだめになった原因は独占ではなく、むしろ独占が生まれなかったことだ。必要なのは独禁法の規制強化ではなく、資本市場を活性化して新たな独占を生み出すことだろう。