丸山穂高議員に辞職大合唱の異常

2019年05月19日 06:00

丸山議員に辞職勧告が出た。同議員の所属する維新を含む野党6党の共同提出だ。が、自民党が賛同しなかったので決議案は可決されない見通しだそうだ。当然と思う。丸山議員はこの際、自民党に鞍替えすると良い。丸刈と断酒を条件に…。

衆議院インターネット中継より:編集部

アゴラなど一部ネットを除くと、丸山議員を非難する論が大半だ。そしてその多くが丸山発言(問答)を良く吟味していない上、詳しい論拠抜きに「戦争で取り返す」の部分だけで、問答無用とばかり一刀両断していると感じる。

この問題では5月14日に新田哲史氏が「丸山氏の処分は議員辞職ではなく『丸刈穂高』でよい」と題して投稿なさった。題だけ見て丸山議員への非難に対する異論と察せられたので、筆者はロシア批判の観点から「国後での丸山発言、ロシアは批判する資格なし!」を纏めに掛った。

丸山発言の吟味から入る必要があるから、ネットでHBCニュースに掲載された以下のやり取りを引いた。

丸山:「団長は戦争でこの島を取り返すことには賛成ですか?反対ですか?」

団長:「戦争で?」

丸山:「ロシアが混乱している時に取り返すのはOKですか?」

団長:「戦争なんて言葉は使いたくないです。使いたくない」

丸山:「はい。でも取り返せないですよ」

団長:「戦争はするべきではない」

丸山:「戦争しないとどうしようもなくないですか?」

団長:「戦争は必要ないです」

新田氏の投稿はテレ朝から引いているがHBCニュースのそれと一字一句違いがなかった。で、新田氏はこうお書きになった。

発言の前段がない上、読み方によっては、けしかけているように見えるが、ここだけを読む限り、ロシアに戦争を仕掛けるとまでは断定はしていない。もちろん、国会議員として発言が不穏当・不適切ではあるが、日本が戦争に敗れたから、敵国に武力を行使されて領土を奪われたのは紛れもない事実だ。そして戦後70年、外交交渉で地道にやってきても現時点で北方四島はロシアが実効支配している。それに、核保有国で近年も近隣諸国に侵攻してきたロシアに、長らく戦争から遠ざかってきた日本で戦争を仕掛けて領土を取り戻せるなどと、さすがに丸山氏も本気で考えてはおるまい。….とはいえ、丸山氏も軽率だったことは事実なので、頭を坊主にして反省の意を示し、「丸刈穂高」として、地元の有権者の前でお詫びするくらいの禊はしたほうが良い。

まさにこれで十分と思う。が、辞職勧告が出されたとなれば、筆者も丸山擁護論は書かねばならない。そこで、再度、丸山問答の詳細と非難論者の発言を調べてみた。

丸山問答については、5月14日の毎日新聞に詳しい遣り取りの様子が載っていた。(太字は筆者

丸山氏「団長は、戦争でこの島(国後島)を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」

元島民「戦争で?」

丸山氏「ロシアが混乱している時に取り返すのはOKですか?」

元島民「戦争なんて言葉を使いたくないです」

丸山氏「でも、取り返せないですね。戦争しないとどうしようもなくないですか」

元島民「戦争なんぞはしたくありません」「先生、やめてください」

丸山氏「何をどうしてですか。この島をどうすれば良いですか」

元島民「それを私に聞かれても困ります。率直に言えば返してもらえれば良いと思います」

丸山氏「戦争なく?」

元島民「戦争はすべきでないと思います。早く平和条約を結んで解決してほしいです」

丸山氏「逆に関係なく平和条約が欲しいんですか」

元島民「それは政府の方々に任せているわけで、あくまで私たちは交渉をやりやすくする下支えのために交流している。我々の署名運動などを今やめて元島民があきらめたと言われたら大変だから継続してやります」

丸山氏「取材はするけど何もしない人(マスコミ)に言ってほしい」

太字部分がHBCやテレ朝にはなかった部分だ。確かにしつこい。が、これを加えたところで筆者がアウトの一線「自分は戦争してでも取り戻そうと考えている」とか、元島民を愚弄するような「そんな心構えでは絶対に戻って来ませんよ」などというところまでには至っていない。

この島がロシアによる中立条約破りとポツダム宣言無視によって不法に占拠されていることや、ラブロフ外相が「日本が第二次世界大戦の結果全てを、議論の余地なく認める」のならロシア政府は平和条約締結に取り組む用意があると述べたのを念頭に、「戦争しないとどうしようもなくないですか?」と元島民に問い掛けた、と読むのが素直ではないか。

仮にこの元島民が「戦争してでも取り返したいというくらいの気持ちです。でも、戦争はすべきでないと思います」と答えていたとしたら、丸山発言が、果たして辞職勧告に発展するほどの問題になっていただろうか、おそらくそうはなっていまい。

元島民の発言をどうこういっているのではない。いきなり戦争などという物騒な言葉が出てくれば、この元島民でなくともとっさに否定するのが普通の対応だろう。が、だからといって、先述の様な経緯のあるこの問題で、例え話としてさえ戦争を口にしてはならない、とは筆者は思わない。

それは原発の避難訓練をすれば原発が危険と思われるからやらないとか、核兵器保有のシミュレーションすらしないとか、東大で軍事兵器の研究をやらないとか、憲法改正は論議すらしないとかいった類の、極めておかしな事象と同工異曲といえまいか。

次に非難論者の論拠だが、やはり「戦争で取り返す」の部分にだけ反応した問答無用論が大半だ。上述した私の論がよほどのピント外れでない限り、普通に丸山問答を読めば議員辞職を勧告するほどの非難論は出せないからだろう。

が、アゴラに掲載された石破茂議員の「丸山議員発言など」は、以下のように誠実に非難の論拠を述べておられる。

丸山穂高議員の発言は、「急迫不正の武力攻撃」が発生した時にのみ自衛権の行使としての武力を行使することが出来る、という国際法や自衛隊法の基礎的常識を知らなかったという一点において、ただただ驚き呆れるばかりです。

そして極めて厳しい言葉でこう続けておられる。

市井の会話において「拉致被害者は自衛隊が取り返すために行動すべきだ」「竹島は武力で奪還せよ」などという勇ましい発言があることは事実ですが、丸山議員は市井の一般人ではありません。このような人が国家公務員として経産省に奉職し、国会議員を務めていたことにも驚きを禁じ得ません。国家公務員は、ただ勉強ができて試験の成績が良い人を採ればよいというものではありません。

筆者は、果たして丸山議員が「国際法や自衛隊法の基礎的常識を知らない」、「ただ勉強ができて試験の成績が良い人」かどうか知らない。

しかし、丸山発言は「自分は戦争しても取り戻そうと考えている」と言っている訳でなく、記事が「?」を付けているように「戦争しないとどうしようもなくないですか?」と問い掛けていると読めるから、石破先生のおっしゃる「拉致被害者は自衛隊が取り返すために行動すべきだ」といった市井の会話とは同じでないと筆者は思う。

因みに、青山繁晴議員は「拉致被害者全員の帰国は、果たせていない。最大の理由は憲法9条です」を枕に憲法改正を主張する。が、これが「自衛隊が取り返すために行動すべきだ」という意味でなく、北朝鮮への牽制になるとの趣旨と多くの人々が理解しているし、まして青山議員に辞職勧告などという話は聞かない。

だから、丸山辞めろ!の大合唱などせず、有権者の判断に任せれば良い。直に衆参同日選があるだろうから。

高橋 克己 在野の近現代史研究家
メーカー在職中は海外展開やM&Aなどを担当。台湾勤務中に日本統治時代の遺骨を納めた慰霊塔や日本人学校の移転問題に関わったのを機にライフワークとして東アジア近現代史を研究している。

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