丸山議員発言など

石破  茂 です。
丸山穂高議員の発言は、「急迫不正の武力攻撃」が発生した時にのみ自衛権の行使としての武力を行使することが出来る、という国際法や自衛隊法の基礎的常識を知らなかったという一点において、ただただ驚き呆れるばかりです。

市井の会話において「拉致被害者は自衛隊が取り返すために行動すべきだ」「竹島は武力で奪還せよ」などという勇ましい発言があることは事実ですが、丸山議員は市井の一般人ではありません。このような人が国家公務員として経産省に奉職し、国会議員を務めていたことにも驚きを禁じ得ません。国家公務員は、ただ勉強ができて試験の成績が良い人を採ればよいというものではありません。

丸山議員の離党の申し出を拒絶して除名処分とした維新の党は、同党だけでは決議案の提出に必要な数が足りないため、日頃批判してやまない立憲民主党に衆議院議員辞職勧告決議案の共同提出を要請、これを受けて立憲民主党の議院運営委員会筆頭理事が自民党に共同提出を呼び掛けたと報じられていますが、維新の党はまず党の責任において、丸山議員の発言の何処が問題であったのかを明確にし、議員としての基礎的な教育が出来ていなかったことを率直に認めた上で全会派に要請すべきだったと思います。

結局野党による共同提出となったようですが、丸山議員は辞職勧告決議案が仮に可決されても議員を辞めない旨明言しており、仮に可決されても何ら拘束力のない辞職勧告決議案提出などよりも、むしろ懲罰に値するか否かを検討すべきだったのではないでしょうか。

同議員が衆議院議員としての公務としてビザなし渡航をしたのであれば、憲法第58条に規定されている「院内」に当たると解釈することも可能であり(ここに言う院内とは単なる物理的な範囲を指すものではない、とするのが多数説であったと記憶します)、国会法の定める提出期限や、議長の懲罰委員会に対する権限などの諸規定と併せて考える余地があったと思います。議員の発言が不当に制限されることがあってはならず、さればこそ議員は不逮捕特権と共に発言に対する免責特権を与えられているのですが、この点との整合が一番難しいと悩んだことでした。

一方で、外交青書から「北方領土は日本に帰属する」との表現がなくなり、「ソ連によって不法に占拠されたわが国固有の領土である」との立場を明言しないなどということがあってよいはずがありません。丸山発言も問題ですが、このような姿勢を糺すことも自民党の大きな責務です。

昨日の水月会勉強会は、伊勢崎賢治東京外国語大学教授をお招きして日米地位協定についての講演を拝聴しました。伊勢崎教授の所論は「主権なき平和国家」(布施祐仁氏との共著・集英社刊)を是非ともお読みいただきたいのですが、憲法、特に第9条の改正にあたってはこのような視点こそ不可欠です。自民党憲法改正推進本部の下村本部長は、党内の政策集団に対して憲法の議論を行うように要請していますが、国政選挙を目前に控えて党内議論の低調振りや会議の運営に強い危惧を覚えています。

衆参同時選挙の有無や、消費税引き上げ延期についての萩生田幹事長代行の発言が政界に様々な憶測を生んでいます。あれほど経済の好調ぶりや税率引き上げ対策の万全性を喧伝しておきながら今更それはないだろうと考えるのが常識ですが、一方に「選挙は勝てるときにやるものであり、大義名分や理屈は後から貨車でついてくる」とする考えがあることもまた事実です。

しかし今までの一連の発言との整合性と共に、消費税率引き上げを見込んで高額な買い物を前倒しした人や、複数税率導入やポイント制、キャッシュレス社会に向けて投資した事業者の立場にはよくよく留意が必要ですし、経済政策や税制も従来型の企業中心型から消費者中心型への転換を真剣に論ずべきです。消費税の今後の在り方についての議論はその一環であり、政府・与党は国民に対する誠実さを決して失ってはなりません。

週末は自民党鳥取県連大会や公明党の時局講演会に出席のため帰郷いたします。
皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。


編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2019年5月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。