内閣府「人工知能ホスピタル」プロジェクト③

2019年09月28日 11:30

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それから、最先端の情報を共有するという非常に重要な課題への対応が必要です。技術革新によって、急速に情報量が増えてきているので、専門家でも、必要な情報にすべて目を通すことができなくなってきています。必要な情報かどうかは、目を通さないとわからないので、実際は必要な情報を得るためには、その何倍もの情報に目を通さなければなりません。これは現実的には不可能です。

したがって、人工知能が情報を選別し、ミニマムで絶対に知っておくべきことを知らせて、みんなで共有するというようなシステムが必要です。ミニマムエッセンシャルな情報を伝達するような、eラーニングシステムが必要ではないかと思います。

次に、パソコンのキーボードと画面を見ながら横目で患者さんと話をする時間がどんどん増えてきています。幾つかの病院が、アンケートをとりましたけれども、患者さんの目を見て話をするのは大体10分中1~2分です。これは、医療の本質を考えると、非常に大きな問題を生んでいると思います。

そこで、普通に話している言葉がテキストになり、サマリーができるというような人工知能が必要です。もちろん、看護現場や介護現場でもそのようなことが必要ではないかと思います。

それから、インフォームドコンセントに多大な時間が費やされています。先日、ある病院の院長と話すと、「私は土日しか行けないから、土日に説明してほしい」「仕事を休めないから、午後7時に説明してほしい」、そのような患者さんや家族が増えてきて、医療現場が回らなくなって困っておられました。

このような状況に対応するためにも、一から十まで説明するのではなくて、人工知能がある程度説明して、双方向で質疑応答でき、次いで医師と目と目を見ながら話し合って、最終的に患者さんや家族が判断するような仕組みが必要ではないかと思います。そのようにできれば、医師が説明に費やす時間は軽減され、働き方改革にもつながります。

アメリカでは、説明に時間を費やすこと、あるいは、クレームなどに対応することで燃え尽き症候群になって医師を辞める方、あるいは、自殺をする医師が増えてきています。一方で、患者さんや家族はきちんと自分に対応してくれないという不満もあるわけで、医師免許や看護師免許がなくてもできるような業務をできる限り人工知能に置き換えて、医療現場では目と目を見ながら患者さんと対面するという、心の通った医療ができるようにすることが、私たちのゴールの一つです。

実際、働き方改革が始まって、看護師さんの超過勤務などが大きな課題になっているので、人工知能が会話をテキストにして、さらにサマリーを作ることができれば、かなり医療現場での負担軽減につながるのではないかと考えています。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2019年9月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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中村 祐輔
医学者、内閣府SIPディレクター

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