瀬戸際の新型肺炎拡大防止はなるのか?

新型肺炎のトピックスについては部分的には時折書かせて頂きましたが、あまり積極的に取り上げてきませんでした。理由は皆さまの方が詳細な情報をお持ちですし、今一つ、この新型肺炎の正体がよくわからなかったからであります。ただ、経済には甚大なる影響が出るということはこの問題が話題に出始めたときから指摘しておりました。

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日曜日に懇意にしているある議員からテキストメッセージがありました。バンクーバー近郊のある中華系モールのフードコートが悪い噂でガラガラとなり出店事業者の経営状態が厳しいのでたくさんの人を誘って励ます食事会をしたいというものでした。いくら何でも私もこればかりは返事に窮し、「事態を勘案してからご返事する」と申し上げました。

中国人がいまだに行き来できるカナダで新型肺炎の懸念度は異様に高まっており、風評被害も出始めているということでしょう。トロントも同様だと聞いています。くだんのフードコートはいつもなら人でひしめき合い、席を見つけるのも苦労しますが、今は売上8割減と報じられています。ほかの中華系モールも同様でしょう。

実は私は先週日本から当地に戻ったのですが、バンクーバー空港の検疫は至って普通。つまり、特段、防疫の対策はありませんでした。カナダの航空会社は中国便を欠航していますが、中国の航空会社はカナダに普通に入ってきているのでアメリカが相当厳しい規制を敷いているのに対して中国人人口が多いカナダは鈍感だと思っています。

そういえば機内でマスクをしていたのはアジア系でカナダ人はマスクをしている人が非常に少なかったのです。白人がマスク嫌いというのは昔からよく言われることで「マスク=病気持ち」というイメージを持つのでしょうか?白人文化では濃厚接触する機会が多いことも背景にあるのでしょうか?

では日本が大丈夫だったかと言えばアメリカなどから日本への渡航危険レベルが引き上げられているように正直、緩かったと思います。もともと人口密度が高い中、電車は相変わらず混んでいるし、マスクをしている人が多いわけでもありません。(手に入らないこともあるのでしょう。)行列する店は今でも繁盛しているわけでイベントが次々中止となっても人が集積する機会はいくらでもあるのです。

特に専門家のコメントにもあるように高齢者にそのリスクが高いとすればもともと高齢者大国の日本でありますから、より一層のリスク管理が必要だと感じます。

さて、週明けはイタリアや韓国の感染拡大を受け、株式市場を中心に荒れた展開になっています。中国では全人代開催の正式延期を発表したもののいつやるのかは言及しませんでした。個人的には終息に近づくまで延期せざるを得ないとみています。私は1-2カ月程度の延期かとみています。

SARSの際には2002年11月に始まり終息宣言が03年7月5日でした。今回もスタート時期は12月とほぼ同じ。ただし、前回は全人代をやるために中国側が実態を隠していたものの、今回は中国側の対応が早かったこともあり早い終息になるとは思っています。このところ中国国内の新規発症者数が3ケタ台の前半で収まってきていることも支援材料です。ただ、今回の肺炎は奇妙な広がり方をしている点がどうしても引っかかるのです。クルーズ船や教会等屋内感染が強力である点は懸念材料です。

中国ですが全人代が終わらないと政権幹部は外遊しないという原則がありますので習近平氏の日本訪問の延期はほぼ確実ではないでしょうか?オリンピックはやると思いますが、習近平氏の訪問はそのあとまで先送りされるかもしれません。そうすると今度は日本が解散総選挙の可能性があり、厳しい日程調整になりそうです。

そういえばトランプ大統領がクルーズ船のアメリカ人乗客をチャーター機で本国に送迎した際、感染者が多数いたことに激怒したと報じられていました。トランプ大統領が激怒した理由は新型肺炎がまかり間違ってアメリカに入ってこようものなら築き上げたアメリカ経済、そしてその指標である株式市場に大きな亀裂が入ることを嫌がっているためでしょう。つまり自分の選挙に多大なる影響が出るということです。それぐらいセンシティブになっているともいえます。

残念ですが、ここしばらくは経済も社会も文化活動も身動きが取れないというのが私の感じるところです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年2月25日の記事より転載させていただきました。