三崎港ホテル計画:バブル時代に戻ったような開発案件

2020年03月24日 14:00

日経電子版を見ていて「えぇっ!」と思ったのが「安田造船所、神奈川・三崎港でハーバーやホテルを整備」という記事です。記事冒頭に「クルーザーを輸入販売する安田造船所(東京・大田)は神奈川県三浦市の三崎港でリゾート開発に乗り出す。5月にも三浦市から7ヘクタールの土地を購入。海外の富裕層をターゲットにクルーザーを係留するハーバーやホテルを一体整備し、2020年代半ばの開業をめざす」とあります。

開発予定地(プレスリリースより)

もう少し読み進めるとマリーナは100フィート以上のクルーザーが10隻以上停泊出来てホテル、コテージといった複数の宿泊施設、更にヘリポートやプール、クルーザーにはホテルが清掃サービスを行うとあります。

開発規模はさほど大きくもないのですが、こんな時期だからこそインパクトがある記事でした。しかし、私は不動産開発事業者、およびマリーナ事業の運営者としてこの計画の意味があまり理解できませんでした。せっかくやるなら成功して欲しいからこそ意見させてもらいます。

まず、ロケーション的に三崎港が富裕者層に受けるのか私は疑問なのです。三崎港といえばマグロなどで有名な漁港で周辺は水産加工業者などがひしめく典型的な漁港街です。京急の終点、三崎口駅から車で15分ぐらいかかり、正直、東京からはかなり遠いのです。目の前は北原白秋「城ヶ島の雨」で有名な城ヶ島がありますが、廃れています。

次に100フィートのクルーザー10隻という発想が「えっ」と思うのです。私の経営するマリーナには100フィート越えは3隻分スペースがありますが、カナダでも個人では需要が極めて少ないため、いわゆるビジネス用途の船(パーティーや近辺クルーズ用途)に貸しています。100フィート越えのプレジャーボートですと運航にクルーが必要な場合もあり、食事提供のためシェフを抱える船もあります。日本ではほとんど存在しないと思います。加山雄三さんが所有していて火災になったあの船ですら85フィートです。

とすればこの顧客層はどんなターゲットなのでしょうか?通常はクルーザーの所有者はそれこそ週末別荘のように風光明媚なマリーナに停泊しながらワインでもくるくる回しているのが絵に描いたような富裕層のスタイルです。

私どもの顧客の主流は60フィートと46フィートで普通、家族、夫婦で楽しむのはこのサイズまでです。またTransientといって他のところから私どものところにやってきて数泊停泊するサービスも提供しており、アメリカから多くのクルーザーが来ますが、100フィート越えはなかなか聞きません。

次にクルーザーに乗る人はクルーザーに寝泊まりするものです。私どものマリーナの真横にも高級ホテルがありますが、私どもの顧客は誰一人泊まったことはありません。つまり、マリーナとホテルは親和性がありそうですがビジネスの関連性はゼロなんです。

実は私どものマリーナが完成した際、そのホテルが10隻分リースしたことがあります。彼らも親和性を期待したのでしょう。散々な結果でリースを3年で切り上げてしまったことがあります。ましてやヘリポートといった発想自体がどうなのかと思っています。

カナダでもマリーナは顧客がいるところと埋まらないところに分かれます。その分岐は街中にあるかどうかであります。理由は大型クルーザーであればあるほど所有者は富裕層であり、時間に限りがあるからです。街から離れれば離れるほど埋まりにくくなり、停泊料は加速度的に下がります。

私は新入社員の頃、逗子マリーナの工事現場を担当しており同マリーナで仕事をしていたことがあります。いわゆる日本の高級マリーナの老舗ですが、なんでこんなに遠いのだろうと思っておりました。日本は海に囲まれているのになぜこんな辺鄙なところではないとだめなのだろうと思ったものです。

不動産開発は開発者が顧客をどれだけ理解できるか、そこにかかっています。そして一番大事なのは金儲けをする気持ちを抑え、確保した土地に何を描くのか、白いキャンバスに向かう画家にならねばなりません。画家はこの絵はいくらで売れるなんて考えて絵を描かないでしょう。それと同じなのです。三崎の漁港の前に立って画板を広げたとき、どんな絵が描けるか、ある意味不動産開発ほど感性的なものもないのかもしれません。

せっかくの開発計画ですので是非ともよいものを残してもらいたいと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年3月24日の記事より転載させていただきました。

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