コロナを巡る、ブラジル大統領の息子のツイートが中国との外交問題寸前に

白石 和幸

エドゥアルド・ボルソナロ(Wikipedia)

ブラジルのボルソナロ大統領の3人息子のひとりエドゥアルド・ボルソナロの問題発言が中国との外交危機を招いた。

エドゥアルドは3月17日、ツイッターで次のように新型コロナウイルスの感染拡大が中国共産党によるものだと批難した。

チェルノブイリで起きたことを記憶している人は今ここで起きていることを理解できるだろう。原発をコロナウイルスに置き換え、ソビエトの独裁者を中国のそれと置き換えてみろ。数え切れない人たちを救うことが出来たにもかかわらずに、一度ならずも独裁者は真実を公表するのではなく隠すのだ。これは中国の責任だ。自由であることが解決の手段だ。

https://twitter.com/BolsonaroSP/status/1240286560953815040?s=20

これに対し中国側は即座に反発。在ブラジルの中国大使Yang Wanmingが公式に同じくツイートでこう答えた。

あなたの言葉は度を越えた無責任そのものである。あなたは貴方の友人の真似(トランプを指している)をするのはやめるべきだ。マイアミからあなたは戻って、残念ながら、メンタルのウイルスが両国の友情を冒しているようだ。

その後、同大使は更に最初のツイートに追加して、「(あなたは)国際化ビジョンに欠け常識にも欠ける。ブラジルにおける米国の報道官に変身することに急ぐ必要はない。なぜなら、失態を冒す危険に陥るからだ」と補足し、「あなたの言葉は中国そして中国人民にとって呪い罵りだ。あなたの振る舞いは連邦議員という役にはふさわしくない」と辛らつな回答で締めくくったのである。(参照:clarin.com

中国大使が、エドゥアルドがマイアミから戻ったことを指摘したのは、3月上旬にボルソナロ大統領一行がマイアミを訪問してトランプ大統領と会談したことを指している。この会談で米国とブラジルの絆はさらに深まり、両国が共同して防衛上のプロジェクトに参加することが合意されたのであった。ブラジルが軍事面で米国の傘の中に入ったということなのである。(参照:hispantv.com

ところが、ボルソナロに随行したブラジル政府のメンバーの内17人が帰国後コロナウイルスに感染しているということが判明したのであった。恐らく、直情タイプのエドゥアルド・ボルソナロはこの出来事に憤慨して世界で最初にコロナ感染が発生した中国がそれをばら撒いた国だと勝手に決めて今回のツイートを発信したのであろう。(参照:lavanguardia.com

「ブラジルのトランプ」の異名をとるボルソナロ大統領(Wikipedia:編集部)

父親のボルソナロ大統領は当初エドゥアルドを米国大使に任命しようとした程であった。だが、彼を大使として送ればどのような問題を巻き起こすかしれないと懸念した議会はそれを承認しなかった。その先頭に立ったのが下院議長ロドリゴ・マイアであった。

同議長は今回のエドゥアルドと中国大使のツイート上での相互の批難が両国の外交問題に発展しかねないと判断して次のようなメッセージを早速ツイートし、火消しを図った(参照:avanguardia.com)。

エドゥアルド・ボルソナロが思慮分別のない言葉を表明したことに対し、下院を代表して中国並びにYang Wanming大使に謝罪する。

ブラジルと中国の戦略的連携の重要性並びに外交法規において彼の取った姿勢はそれにふさわしくない。私と同僚議員の名において、我々両国の同胞愛の絆のあることを繰り返し強調したい。現危機から早く抜けて、より強い絆を結ぶことを期待する。

先週、コロナウイルスの感染拡大を防ぐ為に議会の閉会を求めて議員がマニフェストした。それが要因となってマイア議長はボルソナロ大統領と論争となった。保健相の「人が集まるのは避ける必要がある」という忠告も無視して大統領は議会の閉会を受け入れなかったという経緯もあった。

ボルソナロ大統領への支持率は下降するばかりだ。唯一、彼が救われる道はブラジル経済が回復することである。当初、経済は上向きになったが、ここに来て新型コロナの感染者の数がラテンアメリカで最多の国となってしまったことから経済の立ち直りはより難しくなっている。