ウィワークはバブルの象徴だったのか?

岡本 裕明

不動産事業と投資事業を行い、シェアオフィスに入居する私からみるとウィワークは奇異な存在でありました。例えが古いかもしれませんが、ジュリアナ東京のような時代の象徴であります。長続きするかどうか、私の眼からはそのピクチャーは描けません。

(WeWork公式サイトから:編集部)

(WeWork公式サイトから:編集部)

このビジネスの基本モデルは単純です。事務所ビルのワンフロアを丸ごと借ります。大家には長期契約をするから安くしろと迫ります。その借りたフロアを細かく間仕切りし、様々なバリエーションある部屋を作り、入居者を募集します。これは「付加価値モデル」というものです。格好が良くて見た目が安い(小さいスペースを借りるので安く感じる)と感じるトレンディーな起業家の卵たちを大量に押し込みます。大家に払うリース料より高い収益を上げることで賃料収入との差額が儲けになるというものであります。

通常のアパートとシェアハウスはわかりやすい比較でしょう。規模によりますが、シェアハウスにすればおおむね賃料収入は2倍前後になるので確かにビジネスモデルとしては機能するのです。ただ、以前から申し上げているようにシェアハウスは住み方の変化であり一定需要が期待できるのに対してシェアオフィスはなぜ、それだけの需要があるのか私にはさっぱりわからないのであります。起業家がそんなに増えたのか、そして今までの起業家はどうしていたのか、であります。

結論からすると本当の起業家ももちろんいますが、多くを起業をファッションとして捉えていた若者のたまり場であったのです。事実、今、北米のシェアオフィスに行けば何処にも人はいません。私の入居するシェアオフィスには30数社いますが、来ているのは3―4社だけ。知り合いのウィワークに入居されている方のところはほぼゼロとのことでした。なぜ事務所に来なくて済むのか、といえばもともと仕事がフローティング型(根がしっかりとしておらずおいしそうな仕事を時々やるタイプ=自分探しを延々とやるタイプ)ともいえます。よってこんな時は仕事があるわけがないともいえます。

ではそういうバブっている若者たちを相手にしていたウィワークはどうなるのか、といえば大家への家賃は払わざるを得ず、マネージメントコストもかかります。

一方、顧客とは一定期間のリースだから賃料が入るだろうといえばそんな甘い世界ではありません。相当の取りっぱぐれが生じているはずです。リースがうやむやになって夜逃げ屋本舗になるケース続出でしょう。しかし、もともと机一つ借りていただけですから私物だってほとんどないはずです。ウィワークにはそれを回収する算段がありません。訴訟をすれば訴訟コストの方がかかるのです。それこそサービサー(債権回収会社)に債権を安く売るしかないでしょう。

ソフトバンググループは昨年9月に調印していた既存ウィワーク株主からの30億ドル(3200億円)相当の同社株の買い付けについて諸条件が満たされないので実行しないと発表しました。「盗人に追い銭」はしないということでしょう。これは同社がこの事業を再評価し直したという意味で評価するもののウィワークの資金繰りは厳しさを増すものと思われます。

以前にも申し上げましたがソフトバンクGやビジョンファンドはテクノロジーに投資をする会社だと理解しておりましたがウィワークなんて古典的でマーケティングギミック(手品)いっぱいの一時の流行に過ぎないところに1兆円も突っ込んだのは孫氏がビジョンファンド1号で金まみれになり過ぎてて投資の判断力を間違えたとしか思えないのです。スプリント地獄から解放されたら次はウィ地獄が待っているということでしょう。孫さんもしばらくは「ぼろぼろ」です。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年4月3日の記事より転載させていただきました。