恐怖感ばかり煽られるコロナ対策の迷走

2020年04月18日 06:00

場当たり的、継ぎはぎ対策で混乱

7日夕、記者会見する安倍首相(官邸Facebook)

緊急事態宣言の対象地域が全国に拡大されました。7日に宣言を出した際、安倍政権は「2週間は様子をみて次の措置を決める」と言っていました。それを待たずに一気に「全国を対象」となると、事態が急速に悪化しているのかと、国民は恐怖感を煽られます。

ゴールデンウイークで人の移動が拡大すれば、コロナウイルスの感染も拡散する。それを防ぐためには全国を対象とする。そんなことは分かり切っていたのに、7都道府県にとどめたのは、医学・疫学的な判断より政治的な判断を優先した結果でしょう。そんな政治判断が敗れることの連続です。

安倍首相が「全国民に迷惑をかけることになった。だから1人1人に一律10万円を支給する」と、説明しました。「10万円を支給するから、移動を自粛してくれ」と、聞こえる。つじつま合わせの妙な理屈にすり替わった。休業や失業による生活苦の人に支給するのが当初の目的でした。

安倍首相は「第3次世界大戦は核戦争になると考えていた。だがコロナウイルス拡大こそ第3次世界大戦と認識している」と、ジャーナリストの田原氏に語りました。「核戦争を想像」は誇大すぎるにしても、「戦時並みの覚悟で臨む」が真意と、解釈しておきましょう。問題はその覚悟です。

全国民で12兆円という金額は巨額にしても、1人当たり10万円のインパクトは大きくはない。さらにその10万円はどうやって支給するのか。補正予算を成立させて12兆円を用意しなければならないにしても、素早く給付する方法をすでに検討しているのかどうか。

こういう時こそ、マイナンバー(社会保障・税の個人番号)と連動させるようになった預金口座に振り込み、これを機会にこのシステムの普及を徹底する。業者・個人の納税者番号と連動している預金口座があるならそれも使う。漏れている人は市町村が窓口になって手続きをする。

いくらでも方法はあります。ほとんどの企業は従業員の給与を口座振り込みにしているから、企業を通じてそこに払い込むのも簡単だし、瞬時に給付できます。スピーディに支給せよというのなら、野党もこういう時こそ具体案を示せばよい。

10万円には所得税がかかるか。富裕層の税率は50%程度で、給付の半分が国庫に戻ります。低所得層はまるまる10万円かもしれません。税金をとられるのが嫌という富裕層は、あしなが長育英会(病気や災害で親を亡くした遺児への経済支援)や、コロナ感染がこれから懸念される最貧国向け、例えばユニセフ(国連児童基金)への全額寄付でもいい。野党はそのリストを作れ。

経済対策費は事業規模で100兆円を超え、補正予算案での赤字国債は16兆円でした。10万円の一律支給への変更で赤字国債はさらに8兆円、必要になります。国債は将来、償還(返済)する必要があります。すでに国の長期債務は1000兆円を超えています。

今は「戦時」といえば、なんでもあり、で通る。平時に戻ったら、増税で国債を償還する。その覚悟を示して補正予算を組むことが政権と与党の責任です。デフレ脱却に効果がないのに、巨額の財政出動、国債の増発を続け、主要国最悪の財政状態に日本を追い込んだ。それがさらに悪化します。財政膨張論を擁護してきた論者は今、何を感じているか。

「戦時に臨む」といえば、格好はつく。トランプ米大統領もそういいました。日本は感染病の爆発、自然災害や震災に備えて、平時から戦時に備えていたのか。平時に戦時並みの金融財政政策を続けてきた。「平時に戦時並み、戦時は戦時」では、経済がもたなくなります。

「30万円をやめて一律10万円へ」
「補正予算を組み替える異例の措置への転換」
「非常事態宣言を7都道府県から全国に一挙に拡大へ」
「V字型回復を図ると首相が述べたら、その直後にIMF(国際通貨基金)は大恐慌(1930年代)以来の最悪の経済危機になると表明」
「新型インフルエンザ対策措置法があるのに、それを使わず、法改正にこだわり時間を浪費している間に、事態が深刻化」。

政権の迷走ぶりには、恐怖感が高まるばかりです。住民の事情に通じた自治体の知事たちが独自に声を上げ、中央政府を突き動かしているのは新しい光景です。米国では、ニューヨーク州知事らが連携して、大統領選対策で経済封鎖の解除を焦るトランプ大統領に異議を唱えています。コロナウイルスは政治のあり方が危機を深めてきたことを教え、反省を迫っています。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2020年4月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

過去の記事

ページの先頭に戻る↑