日本語の誤用番付があれば「豹変」はきっと三役入りだろう。「君子豹変」は中国古典「易経」に「大人虎変」「小人革面」と並んで出てくる。意味は「虎や豹は夏から秋にその汚れた毛並みを見事に生え変わらせるが、小人物は表情(面)を変える(革)のが精々」だ。よって「豹変」は歴とした誉め言葉。
このコロナ禍にあって未だ死者6名に抑え込んでいる台湾の報道にこう書いてあった。
因應疫情變化,中央流行疫情指揮中心政策不斷更新,有些甚至翻轉了前期防疫措施(感染状況の変化に応じCDCの方針は絶えず更新され、前の対策を覆すものさえある)
まさに「君子豹変」というべきか。
安倍政権が制限付きの世帯当たり30万円に代えて、1人一律10万円の給付に方針を変換した。これに一部野党は「前代未聞」(立憲)、「総辞職に値」(共産)などと猛批判だ。が、この感染症の急激な伝播ぶりこそが「前代未聞」なのだから、政権がそれに応じて「豹変」するのは当たり前ではないか。
朝日新聞も安倍政権が支持率を上げては困るのか、「土壇場の修正“首相のメンツ丸つぶれ”」などとの見出し記事でディスる。が、総理のメンツが潰れようが潰れまいが、結果が歓迎されるならそれは善政が施されたということで、いずれ政権の支持率アップにつながるだろう。
ここ最近の立憲や共産の振る舞いが国民の支持を得ていないことは、この11日~12日に行われた産経新聞・FNN合同世論調査に明らかだ。10万円給付が公表される前の調査だが、立憲の支持率は3月の7.7%から3.7%に急落、5.2%に上げた維新に野党トップの座を譲った。勿論、共産も下げた。
先の国会で、このコロナ禍をものともせず、傷レコードよろしく「桜」や「森友」を繰り返した報いだろう。だのになお懲りず、おそらく国民に支持されるはずの一律10万円への「豹変」を、「前代未聞」だの「総辞職に値」だのと腐すばかりでは、いずれ支持率は地を這うに違いない。
筆者は何でもかんでも政権支持な訳でなく、対中姿勢や経済対策などは大いに不満がある。が、ことコロナ対策では批判よりも建設的な提言が必要だ。最善でなくとも一歩でも前進する次善の策ならば、最善を提言しつつそれを支えて迅速に実施させることが肝心。維新にはその姿勢を感じる。
例えば「アベノマスク」。長年筆者は大人の喘息と慢性副鼻腔炎を患っていて、口呼吸に伴う舌先や口腔の乾燥を防ぐため就寝時のマスクは必需品。毎晩のことなので不織布マスクも破れるまで洗って使う(愚妻の洗濯はパンツもマスクも一緒)。コロナ感染を万全に防ぐには不足かも知れぬ。が、洗える布製アベノマスクはきっと重宝する。
466億円かけて5千万世帯に郵送することに批判や揶揄がある。が、製作費1枚260円で5千万世帯なら2枚で260億円、残りの200億円は日本郵便の収入か。が、アベノマスクがなくとも郵便屋さんには毎日配達がある。何を言いたいかといえば、この際日本郵便こそ配達料を勉強せよ、ということ。
ただし、政府にはまだ「豹変」が足りぬ。それはPCR検査の覚束ない拡大だ。当初のクラスター調査中心の方針は、検査陽性の者を軽症でも必ず入院させる法運用の下で一定の役割を果たした。だが、既に感染急拡大でフェーズが変わり、借り上げホテルへの入所などによって軽症者の入院を不要とした。
であるなら、評判の良くない従来の保健所経由の検査ルートを迅速かつ大幅に見直して、感染の自覚のない軽症者・無症状者が、そうと知らずに他人と接触するケースを減らさねばならない。韓国に嘲られようとテレ朝に「それ見たことか」といわれようと、「君子」なら「豹変」が必要だ。
政府はもっと大きな声でこの方針変換を公表すべきだ。中小企業など200万円・個人事業主など100万円の給付金や雇用調整助成金などのPRも足りない。マスコミ、特にワイドショーなどでも制限付き30万は腐すが、これら給付や助成や無利子融資などの効用解説はほとんどスルーだ。
個人営業の飲食店などは大半が100万円の有資格者になろうし、今回の一律一人10万円と地方からの協力金(10~50万円ほど)とを合わせれば何とか急場は凌げよう。長引けば追加支援もあるはずだ。最善を提言しつつ一歩前進策なら一致協力して支え、時宜を得た迅速な「豹変」を政府に促そうではないか。