再び緊迫…新型コロナ、クルーズ船対応のルールづくりを急げ!

椋木 太一

こんにちは、広島市議会議員(安佐南区、自由民主党)・むくぎ太一(椋木太一)です。

長崎港に停泊中の大型クルーズ船「コスタ・アトランチカ」(乗員623人)で、乗員が新型コロナウイルスに感染していることが判明し、その後も感染が拡大しています。この原稿を書き上げた直後にも速報が入り、新たに乗員43人の感染が判明し、類型で91人に登るなど事態は深刻になっています(参照:時事通信)。

感染者拡大を速報するNHKニュースより

重症化の恐れがある乗員が長崎市内の医療機関に搬送され、また、陸上自衛隊に医師らの災害派遣要請が出るなど、事態は深刻化しています。クルーズ船での集団感染は、2~3月に横浜港に停泊した「ダイヤモンド・プリンセス」で様々な問題や課題が浮き彫りになりました。

国際法では、公海上の船舶の主権は船籍国にあるとされています(「旗国主義」)。しかし、領海内の船舶で集団感染等が発生した場合の責任や救護義務等には明確な取り決めがなく、「ダイヤモンド・プリンセス」のケースは事態が複雑になったのだと思います。

今回の「コスタ・アトランチカ」のケースは、「ダイヤモンド・プリンセス」とは発生状況等が異なるようですが、船舶という閉ざされた空間では感染が爆発的に拡大しやすいことから、緊急時のルールづくりの必要性が高いのです。

また、クルーズ船の乗客が寄港地などで落とすお金への依存度が増している昨今、集団感染というリスクを回避する上でも、日本はルールづくりを主導すべき立場にあると言えるでしょう。毎日新聞の報道によると、この点に関して、政府は調査費用などとして月内に成立予定の補正予算案に計上するということです。スピード感をもって取り組んでいただきたいと思います。

これほどまでルールづくりにこだわるのは、私の地元・広島市にも現在、クルーズ船が停泊中で、他人事ではないと痛感したからです。

停泊しているのは、世界一周の船旅の「ピースボート」のクルーズ船「オーシャンドリーム」(3万5265トン、乗員約100人)です。

広島県によると、「オーシャンドリーム」はオセアニアを周遊した後、2月15日に横浜港に着岸し、検疫を済ませました。同港と神戸港で乗客は全員下船し、行程を終えました。その後、中国で修繕予定もドック入りできず、待機するため2月20日に広島港に入港したということです。4月22日現在、乗員の感染が疑われるという報告はなく、29日に出港予定となっています。

オーシャンドリーム(Wikipedia)

これだと、特に何も問題は起きなさそうではありますが、一抹の不安を感じたことがあります。それは、検疫を済ましてしまえば、そのあとは日本国内の港に寄港して乗員・乗客が乗り降りしてもチェックがないことです。

オーシャンドリームも同様で、横浜での検疫後、2か月以上も公的なチェックはありません。緊急事態宣言が全国に発令されているにもかかわらずです。確かに、明確なルールがない以上、強制力を伴った検査等は難しいでしょう。

とはいえ、乗員・乗客の上陸は制限がないことから、寄港先で感染する可能性はゼロではありません。実際、「コスタ・アトランチカ」のケースでは、乗員が長崎市に上陸していていたと報道されていますし、「オーシャンドリーム」の乗員も広島市内などに出入り自由の状態なのです。

以上のようなことを踏まえ、外国籍の船舶について、集団感染等の非常事態においては上陸制限や検査を受けさせることができるルール作りが急がれていますと感じています。船内で集団感染が発生して重篤者が相次げば、人道上、寄港地やその周辺自治体が知らぬ存ぜぬという姿勢を貫くのは難しいでしょう。

とはいえ、医療態勢には限界があります。「ダイヤモンド・プリンセス」が停泊していた横浜はともかく、長崎や広島といった地方都が首都圏と同規模の医療態勢を整えるのは困難極まりないでしょう。それこそ、「医療崩壊」が目に見えています。現在進行形で感染者が増えている状態ではなおのことと言えます。

「ダイヤモンド・プリンセス」のケースでは、我が国が感染者のケアを懸命に行ったにもかかわらず、非難を受ける屈辱を味わいました。緊急事態宣言が全国に発令された今、「ダイヤモンド・プリンセス」の教訓を生かさなければなりません。国には早急のルールづくりを、港湾を管理する県などの自治体には危機感を持って臨んでいただきたいのです。