元に「戻す」ではなく、新たに「作る」② ハイブリッド型教育

2020年05月14日 06:00

作新学院がある栃木県宇都宮市でも、6月からの学校再開に向け段階的に「分散登校」が始まる見通しですが、コロナ危機が収束するまでの間は、ソーシャルディスタンスを保つため分散登校が基本になると予想されます。

本学も現在準備を進めていますが、どのように児童・生徒を「分散」させ、どのように学校教育を継続的に展開して行くか、その具体的な方策こそが重要であると思います。

コロナ感染が完全に終息するまでには年単位の長期戦も予想され、感染は一旦収束したかに見えても第2波、第3波が襲って来る可能性は十分あると、専門家も警鐘を鳴らしています。

その度に、再び休校を行なっているようでは学校教育は成り立たず、子どもたちの未来も、日本の未来も潰えてしまいます。

また感染の初期と異なり、昨今子どもたちの感染や重篤化が報告される中、休校解除後も登校することに不安を抱き、自主的に登校を控える児童・生徒および保護者が一定数存在することも予想されます。

そうした環境下での望ましい授業形態を模索する中、作新学院がいま実現に向けて取り組んでいるのが、「登校型授業」と「オンライン型授業」を授業内容や社会環境を勘案しながら組み合わせて実施する「ハイブリッド型教育」です。

このところ先進的な有識者から、平常時はオフライン(登校型)で授業を進め、感染者増加といった緊急事態には即、すべての授業をオンラインへ機械的に切り替える「スイッチング型授業」を提唱する声が聞こえますが、「ハイブリッド型授業」はこれとは本質的に異なります。

実際に、オンライン授業の実践に向けトライ&エラーを繰り返す中で私たちが学んだことは、学校の授業には、教科やテーマあるいは指導方法によって、オンラインになじみやすい(親和性の高い)内容となじみにくい内容があるということです。

つまり「ハイブリッド型授業」とは、「オンラインと親和性が高い授業」や「オンラインで実施可能な授業」は緊急時だけでなく平常時でもできるだけオンラインで展開し、限られた登校授業の機会は「対面でなくては成立しない授業」や「対面が望ましい授業」に優先的に配分する教育形態です。

ハイブリッド型授業を採用することにより、分散登校によって減少してしまう(登校しての)授業時間を有効活用することができます。

一方教員も、オンライン授業用のコンテンツ制作には相当の労力を要するものの、一度コンテンツを制作してしまえば、同じ内容の授業を複数のクラスで毎年繰り返す必要がなくなるため、その分のエネルギーや時間を、よりきめ細かい学習指導や自身の教育力向上をはかる研究・研修に充てる事が可能となります。

今後、コロナによる第2波、第3波への備えはもちろん、それ以外の感染症も含めたウイルスとの共生は、森を侵し地球環境を急速に悪化させている人類にとって、背負い続けねばならない十字架となるのでしょう。

本学では、コロナ対応として推奨されている「新たな生活様式」に合致する「新たな教育形態」を、いま自分たちが創造しているという気概を持って、「ハイブリッド型教育」の実現に取り組んで行きたいと思います。

ただそれにつけても必須となるのは、誰しもがストレスなくオンライン教育を受けられる「情報通信環境の整備」です。

学校がオンライン教育を行うと、通信環境が整っていない子どもたちが取り残されるという誤解が生じているようですが、今すべての学校が本気でオンライン教育に取り組まなければ、家庭環境の違いによって既に生じ始めている教育格差は、今後取り返しがつかないほど開いて行ってしまうでしょう。

そして、オンライン教育が受けられなかった日本の子どもたちは、大きな社会問題として世界的に報道されている米国のホームレスの子どもたちや中国の農村部の子どもたちよりも、さらに劣悪な教育環境に放置されることとなります。

子どもたちを生き物ではなく「製品」、学校を「工場」の如くみなし、教育問題を受験や就職といった形而下的ご都合主義で先送りしてしまうことほど、恐ろしい結末を招くことはありません。

政・財・官・学すべての人々が一丸となって、オンライン教育環境の整備に全力を傾注しなければ、もはや日本の未来はないという崖っぷちに、今この国は立たされている…。

そんな危機感を、国民全員が共有すべき時が来ているのだと思います。


編集部より:この記事は、畑恵氏のブログ 2020年5月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は畑恵オフィシャルブログをご覧ください。

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畑 恵
作新学院 理事長、元参議院議員

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