メキシコ大統領が初外遊先に米国と中国を選んだ理由

2018年12月にメキシコの大統領に就任したアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(アムロ)は就任するや早速政府の歳出の削減に取り組んだ。貧困者の多いメキシコで、これまで国家の歳出が多すぎるとして自らの歳費の減額を実行し、大統領専用機も贅沢だとして売却を決めた。ところが、専用機は1年経過しても買い手が見つからない。それを懸賞にして宝くじを開始した。抽選日は9月。更に、公的機関のトップや判事らにも給与の削減を要求した。

メキシコのロペス・オブラドール大統領公式サイトより

そして、コロナウイルス感染拡大による政府の出費や原油価格の下落に伴う歳入の減少を口実にして、高級官僚の給与の25%の削減や次官や局長の一部ポストの廃止などを4月下旬に発表した。但し、廃止されるポストに就いていた官僚は解雇するのではなく別の部署に配置換えすることを約束した。(参照:animalpolitico.com

その一方で、アムロも遂に外遊することを決めざるを得なくなっている。大統領に就任して以来、これまで外遊したことはなかった。しかも、アムロ自身も国内政治を優先すべく就任してから15カ月は外遊しない意向を表明していた。ということで、昨年大阪で開かれたG20や国連総会にも出席していない。いつも、マルセロ・エブラルド外相が大統領代行を務めて来た。両者はメキシコシティーでアムロが市長の時にエブラルドが補佐官を務めるなどしてお互いに深い信頼で結ばれている。

アムロが外遊することを決心したのは、米国から人工呼吸器の購入や最近の原油価格の下落で米国がそれに協力してくれているからだ。6月か7月のワシントン訪問となれば、トランプ、トレドーと一緒に新NAFTA協定に署名できる。(参照:elpais.com

一方、北京への訪問はコロナウイルス感染による医療安全防具類の入手をより確実にするためだ。

これらの内容に関係した訪問では大統領自らが訪問すべきだということをアムロ自身が理解したからである。

問題は、北京への訪問である。アムロには大統領専用機がない!宝くじの懸賞になっている!一般旅客機を利用しての訪問となる。そこで考えられているのが、メキシコを出てサンフランシスコに1-2日滞在してその後北京に向かうというルートが一番可能性としてあるとされている。

彼の側近や護衛、そして企業からも同行を望む者などがいると、ビジネスクラスの座席をすべて独占して飛行することになるであろう。或いは倹約家のアムロのことだ、エコノミークラスを利用するかもしれない。大統領専用機を維持するよりも経費は安く済むはずだ。国内での移動の場合はアムロは常にエコノミークラスを利用している。

中国はこれまでメキシコへの投資は隣が米国だということで控え目である。仮に、アムロが中国を訪問して両国の関係強化に動くと、米国のトランプ大統領が嫉妬を感じるようになるかもしれない。そうかといって、トランプはこれまで米国の大統領の中でメキシコ人を最も蔑視している大統領だ。要するに、トランプにとってメキシコは米国の属国であり続けてほしいと望んでいるのである。これが対米におけるメキシコ外交の難しいところである