ワクチンがない現状でこの厄介なコロナ禍を収める術が、外出を自粛し家でジッとしているしかないのが実に歯痒い。日本の1-3月の前年同期比GDPは年率で△3.4%となり、4-6月はさらに落ち込むという。4月半ばにIMFが公表した今年の世界経済見通しも△3%と厳しい数字だ。
だからといって軽率な行動もない感染者をとやかくいうのはお門違いだし、ウイルスを恨むのも、ウイルスはウイルスなりに存在しているだけだ。では、誰を恨むべきかといえば、それは中国共産党であり、その頭目の習近平であり、それに加担したWHOのテドロス事務局長だろう。
その習が18日に開幕したWHOのTV総会冒頭で演説するのも奇異だし、テドロスが「できる限り早い適切な時期」に新型コロナの検証を開始すると述べたのも、何を今更、だ。米国厚生長官は「少なくとも1つのWHO加盟国が新型コロナ発生の隠蔽を試みたことは明白」と述べた。
名指しせずともそれが中国であり、数多の隠蔽に武漢海鮮市場の閉鎖や次亜塩素酸による消毒が含まれることを国際社会は知っている。この5ヵ月余りもP4研究所などの証拠隠滅に十分過ぎる期間だ。明らかにWHOの対応は遅きに失している。
今や欧米の個人や団体や州からは、コロナ禍で被った損害の賠償を中国に請求する訴訟が相次ぎ、その金額は「京」の単位という。だが、そこには「主権免除」という国際慣習法の壁があるとする識者の声も聞く。そこで筆者も識者でないなりに、米国を例に引いてこの訴訟を考えてみたい。
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ポイントは二つ。一つは5月6日にEpoch Timesが載せた「The Coming Collapse of the Tyrant Regime(近づく独裁体制の崩壊)」と題するスティーブ・バノン氏のインタビュー、二つ目は先般の教科書検定で自由社の歴史教科書が一発不合格になった理由のひとつだ。
主権免除については、いま韓国で大騒ぎになっているいわゆる従軍慰安婦の大法院裁判で、原告側が、被告を日本政府でなく日本の民間企業とした理由としても知られる。要は、国際民事訴訟では、被告が国やその行政組織の場合、外国の裁判権から免除されるというもの。
とすれば、米国で起こされた訴訟も主権免除に阻まれそうに思うのだが、バノン氏はこう述べる。(以下は拙訳の要約)
中国共産党が12月の最後の週に責任を持って行動していたら、死者と苦痛と経済虐殺の95%が回避されただろう。よって、これはまさに習と王岐山と彼の側近に責任があり(at the doorstep of Xi…)、世界は彼らに責任を負わせようとしている
このことは裁かれ、彼らは個人資産を、中国共産党はその資産を剥奪されるだろう。最終的に彼らは、武漢の人々や後に世界の国々に放った生物学的チェルノブイリのために、武漢でニュルンベルク型の裁判にかけられるだろう。武漢市民が人類のために中国共産党を裁くだろう
彼がこのコロナ禍をチェルノブイリに、裁判をニュルンベルグのそれに擬したのは実に示唆に富む。共産ソ連による前者の情報隠蔽がグラスノスチを生み、それが体制崩壊に繋がったし、後者では(結局は実現しなかったが)当初ドイツ皇帝を裁くことを目指したからだ。
続いて「中国共産党が世界に賠償する可能性」を問われたバノン氏は、「確率は非常に高い」とし、9.11に関連して米国で起こされたサウジアラビアへの訴訟を例に挙げ、「我々個人も州も連邦も中国共産党を追いかけ、その主権免除を剥奪する完全な権利を持っている」と述べる。
そのサウジ訴訟とは、16年に成立した「テロ支援者制裁法(Justice Against Sponsors of Terrorism Act:JASTA)」に基づくもの。9.11同時多発テロの実行犯は、19人中15人がサウジ国籍だった。遺族らはサウジ政府を被告に、連邦裁判所に提訴したが主権免除を理由に門前払いされた。
そこで米議会はテロに関与した外国政府への損害賠償請求を可能にするJASTAを可決した。もともと米国には国際慣習法に基づく「外国主権免責法(Foreign Sovereign Immunities Act:FSIA)」(1976年)があるが、9.11を機にテロ事件だけ主権免除から除外したということ。
JASTAの成立で遺族と保険会社らは18年1月、「サウジアラビアは、アルカイダを支援する慈善組織に資金を提供していた」として改めて訴えを起こした。今回のコロナ禍も「中国のテロ」であることを根拠に、国内法のJASTAで中国という国家を裁けるということだろう。
が、隠蔽の確かな証拠があると威勢が良かったトランプもポンペオも、最近はトーンを下げている。バノン氏もインタビューでは国家としての中国との表現を避け、その代わりに、中国共産党という党名やあるいは習近平や王岐山という個人名を出して、こう述べる。
中国共産党はこれに数十兆ドルを支払うだろう、習と王やその一味の米国とロンドンと西欧州の資産はすべて押収される、彼らの資産は中国でなく外国にある。彼らは中国の人々から盗み、それをドルに変え、国外に出し、ニューヨークやロスやロンドンの不動産などにした
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中国共産党を内側から揺さぶる方策の一つとしてバノン氏は、中国のネット検閲システムを破壊することを挙げ、別の番組でもトランプ政権の計画を述べている。中国国民を真実に触れさせて世論を煽ろうという訳だ。
その番組でレーガン政権の顧問弁護士だったホロビッツ氏は、「米政府が30憶ドルを投入し、米国の一流大学が持つ重要な情報技術を応用すれば、今年の大統領選前(10月末)に中共のネット検閲システムを破壊することは可能だ」としている。
中国のネット検閲についてはFOX Newsが、「Global Timesに170万人、新華社に1,260万、人民日報に710万、中国日報に430万、中国環球TVに1,400万のTwitterフォロワーがいる。が、Twitterがブロックされているので、中国国内では誰もこのコンテンツを見ていない。これらの「嘘」は専ら外国用に制作されている」とのPolitico紙報道を伝えた。
以上を纏めれば、このコロナ禍が中国によるテロならJASTAで中国という国家を訴え、テロでなくともFSIAで情報を隠蔽した中国共産党や習らを裁く、ということだろう。後者なら、それは国際慣習法に基づくから、米国以外の国も訴訟できる。
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そこで自由社歴史教科書の検定不合格のことになる。文科省の検定官から不適切と指摘された数百件といわれる記述の一つに、成立時の中華人民共和国を(共産党政権)と括弧書きした件がある。検定意見は「連合政権だったから生徒を誤解させるおそれがある」というもの。
確かに中国には当時から共産党以外に8つ政党がある。が、中国憲法の前文には「中国共産党指導の下における多党協力及び政治協商制度は長期にわたり存在し、発展するであろう」と書いてある。この外にも縷々書いてあるが、要するに、政府も軍も含めた一切が共産党の指導下に置かれている。
共産党以外の党派があっても、それが共産党の指導下に置かれるなら、それは紛れもない共産党一党独裁だ。「共産党政権」が誤解されるというなら、中国憲法の共産党の位置づけも併せて教えなければ、それこそさらに大きな誤解を生むおそれがあろう。
その中国憲法の第1条には「中華人民共和国は、労働者階級の指導する労農同盟を基礎とした人民民主主義独裁の社会主義国家である」とあり、第2条には「中華人民共和国のすべての権力は、人民に属する」とある。共産党の語は前文に5ヵ所出てくるが、条文には一切ない。
何をいいたいかといえば、「中国共産党は国家でない」ということ。つまり主権免除は、被告が「国または下部の行政組織」の場合であるから、中国共産党は免除対象にはならない。ならば、ここはひとつベトナム戦争を上回る死者が出て心頭に発している米国民の「怒り」に期待したい。