大学「秋入学」の代案

phon-ta/写真AC

一時盛り上がった大学の9月入学は表向き継続審議となっていますが、日本ではトリガー(引き金)がないと動かない社会体質ですのでよほどのことがない限りこの議論が再び俎上に上がることはないでしょう。しかし、文科省をはじめ、教育関係者がこれで安堵してもらっては困るのです。

役所も社会も慣れ親しんだやり方から動けないとなれば改革は一つも起きないのです。そこで今日は9月入学という高いハードルを低くしながら教育の抜本を変えるやり方をもう一案、提案したいと思います。それには二つの仕組みを組み合わせます。

まず一つ目が大学の4学期制度(クォーター制度)をより一般的にすることを提唱したいと思います。日本の小中高校は3学期制度、多くの大学は2学期制度だと思いますが、これを大学については4学期制度にするのです。4学期とはおおむね一つの学期が2カ月で年間8カ月の履修になります。2学期制度よりやや短くなるため一回の授業は90分より長い105分程度になります。

あまり知られていませんが、4学期制度を採る日本の大学は割と多いのです。東大、阪大など国立が17大学、公立が5大学、私立が早稲田、津田塾など18大学あります。私立は一部の学部に限定しているところが多くなっています。また高校では野球で有名な花巻東高校も4学期制をとっており、大学に限らず一定の広がりがあります。

東大総長の五神真氏が日経ビジネスのインタビューで「既に秋入学は行われています。毎年、外国人留学生を中心に何百人も入学しています」と述べているのは東大が開かれた大学であり、学生のみならず大学を会社のように経営母体として考えながら産学共同で資金もとりこむ発想で研究レベルを世界水準に引き上げる方策だということがインタビュー全体から読み取れます。つまりかつて東大が提唱した9月入学は結局のところ、その目的の一つであった海外留学生を取り込むことには成功していたわけです。

4学期制にすると取得する単位が2カ月という枠に集約されたものになるため春入学だけでなく秋入学など入学時期のフレキシビリティが生まれます。当然ながら9月入学が主流の外国人にとって日本への留学がしやすくなるメリットがあります。とすれば今回議論された9月入学への全体の変更という大きなハードルは回避することができます。

二つ目の仕組みは大学は4年で卒業するという枠組みを外すことです。自分で決めてどのペースで勉強し、単位を取得するか計画し、卒業までの期間にフレキシビリティを持たせる発想は極めて前衛的でありますが、実はもっとも現実的でもあるのです。勿論、就学期間が長くなれば集中力と学費の問題がありますので結局一定の年次に収まる傾向がでるものの発想としてとても重要なのです。なぜなら、早く終わるということも可能なのです。

カナダの一部の大学はサマークラスがあり夏休み中である5-8月のタームもあります。更には休みなくほとんど通年でクラスを行うところもあります。日本でも4年の枠組みを外し、4学期制を加わえると早く単位を所得させ3年半とか3年9カ月で卒業できることを可能にしてもよいのではないでしょうか?

では早く卒業したらどうするか、就職してもよいし、海外に勉強に出てもよいでしょう。つまり企業側も4月一括採用からより通年採用にシフトしなくてはいけないのです。学生がいつ卒業するか、今までは一斉でしたがそれがばらけることで採用時期もバラバラになるということです。

これは企業側にとっても新入社員を集団教育で企業色に染めるというやり方を変えなくてはいけないことになるでしょう。つまり、たったこれだけの変化であまりにも多くの影響が生じ、学生側も勉学に対する姿勢が変わってくるともいえます。

多くの人が知らない間に4学期制が導入され、秋入学が実施されている現状を日本の社会はもう一度認識すべきでしょう。それは外国人の為だけにメリットがあるものではなく、日本人学生にこそメリットがあるものでなくてはいけないのです。世の中は静かに改革が進んでいるともいえるのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年6月14日の記事より転載させていただきました。