バイデンが米大統領になればベネズエラ民主化の糸口が見いだせる

2020年07月07日 06:00

トランプ米大統領はベネズエラのマドゥロ大統領と会談する意向のあることを先月21日、米デジタル紙「アクシオス」の独占インタビューで語った。ところが、翌22日のトランプのツイッターでは、マドゥロが政権から去る場合にだけ会談すると修正した。トランプの対ベネズエラ外交への迷走は今も繰り返されている。

同インタビューの中でトランプは、グアイドー暫定大統領への信頼が薄いことを表明した。それはボルトン前大統領補佐官の著書の中で、グアイドーとホワイトハウスで2月5日に会談を持ったあと30時間後に、トランプはグアイドーへの信頼を撤回したい意向をボルトンらに表明したと明らかにされている。

今回のトランプの発言はそれを具体的にさせたものだ。グアイドーには信頼を寄せられないからトランプ自身がマドゥロと会談して問題を解決させようという意向を表明したようなものだ。

トランプはグアイドーへの信頼を失っていることは同インタビューの中でも表明された。両者の会談からトランプが感じたのは、ハード―なマドゥロを前にしてグアイドーは恰も子供のようなものだという印象であったというのである。

しかし、仮にトランプがマドゥロと会談を持ったところで、問題は解決しない。現在のマドゥロは政権から去ろうにも去れない立場にあるということを理解する必要がある。マドゥロが政権を握っている現在のベネズエラは、キューバそしてロシア、更に中国の存在を無視できない。

仮にマドゥロが退陣する意向を示そうとすれば、彼と同じ政治外交を展開する意向を持った人物を後継者として指名してからでないと、マドゥロはキューバ又はロシアから暗殺される可能性があるということだ。この両国にとってベネズエラは絶対に米国の影響下には渡せないからである。

キューバのフィデル・カストロが構想したのは、ベネズエラをして嘗てのロシアのように資源や食糧の供給国にすることであった。フィデルの弟のラウル・カストロがキューバ―の指導者になると、フィデルと同じような方針を遂行しようとした。

チャベスの正当な後継者は当時の国民議会議長だったカベーリョであったが、ラウル・カストロはチャベスを説得して当時外相だったマドゥロを推した。それをチャベスは尊重して後継者にマドゥロを指名したのである。この判断はメディアでは誰も予想しなかった。また、当時軍部もそれには敢えて強い反対はしなかった。というのも、マドゥロはくみし易い人物だと思われて、彼の政権はそう長くは続かないであろうと思われたからであった。その後、軍人のカベーリョが容易に大統領になれると軍部は予測していた。

ところが、待ったをかけるかのように、キューバのラウル・カストロはマドゥロを守る為の諜報部隊を派遣。それをチャベスの時代よりもさらに強化させた。キューバはそれによってベネズエラをキューバのための資源と食糧の供給国としての体制を確実なものにさせようとした。

マドゥロ大燈籠退陣を求めるベネズエラの民衆(MARQUINAM/Flickr)

だから、マドゥロ体制下の現在のベネズエラから、トランプが望んでいるような会談でマドゥロを説得させて退陣に導こうというプランは、空想論でしかない。

またトランプはベネズエラの問題を解決させるにはラテンアメリカを始め、ヨーロッパからの協力が必要であるということを十分に認知していない。50数か国がグアイドー暫定大統領を支持してはいるが、その先の伸展がない。そのリーダーになるべき米国のトランプが今も単独で問題を解決させようとしているからである。しかも、今回のトランプのインタビューでグアイドーに信頼を寄せていないということを表明したのはリーダー国の大統領として絶対にしてはならないことである。この発言はグアイドーを支持している国々の結束を弱める以外の何物でもない。

マドゥロは今後も公正な選挙をする意向はない。これからもキューバ、ロシアそして中国、更に新たにイランからの支援を基に、この先も長く政権を持ち続けるだろう。そのような彼と会談を持っても意味がない。

マドゥロの方から一度米大統領との会談を望んだことがあった。2015年に再選されたブラジルのデゥルマ・ルセフ大統領の就任式に出席したマドゥロが、短時間ではあったが当時米副大統領だったバイデンと会談し、その時にオバマ大統領(当時)と会談を持ちたいことを伝えた。その際にバイデンがマドゥロに伝えたのは、オバマ大統領と会談を持つ前に、ベネズエラの市民と対話し、民主政治を尊重することであるということであった。それは残念ながら今も守られていない。逆に彼に反対する市民と野党を弾圧しようとしている。

トランプ政権が続く限り、ベネズエラの民主化への移行は遠のいて行くだけである。その意味で、少なくともバイデンが大統領になればベネズエラの民主化への移行に道が開ける可能性はある。バイデンはキューバとの国交正常化の回復に努めた人物であり、トランプのようにロシアに借りはない。また、ラテンアメリカそしてヨーロッパでも支持を集めることができる。

バイデンのマドゥロについての意見は「マドゥロは単純明快に独裁者だということだ」。

トランプのような軸のない対ベネズエラ外交では今後も解決の糸口は見つからないと思う。

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白石 和幸
貿易コンサルタント、国際政治外交研究家

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