文書廃棄:小池都政も酷いが、東京新聞も後出しジャンケン疑惑

2020年07月13日 06:00

東京都が、新型コロナウイルス対策で参考にした感染予測文書を破棄していたことが東京新聞の情報公開請求で明らかになった。

都が感染状況の予測文書2通を廃棄 1通は本紙の情報公開請求後に<新型コロナ>(東京新聞)

国の危機管理プロセスと同様に情報公開体制が不十分であるだけでなく、都や小池知事の意思決定プロセスの検証材料の一部が闇に葬られたことを明らかにした報道としては価値はある。会社の枠を超えて、小池都政を厳しく追及してきた日刊ゲンダイも、自社記者の会見質問が寄与したこともあって、早速ツイッターでこの記事を評価している。

小池氏にかつて造反した「ミスター情報公開」音喜多駿参議院議員も「これはひどい」と呆れていた。

都が廃棄した理由は、途中段階の内容で公文書に当たらないから捨てたというものだが、記事中の情報公開の専門家も指摘するように、「途中の経過として暫定的に提供された文書でも、職務上取得して組織内で用いれば公文書に当たる」のは当然だ。舛添知事時代以前の都政をブラックボックス呼ばわりしてきた小池氏の欺瞞さを改めて浮き彫りにしたといえるが、東京新聞の中沢誠記者は解説記事でこう結んでいる。

自らルールをゆがめ、検証を阻むようでは、都の判断を信じて自粛要請などを受け入れてきた都民らの理解は得られないだろう。

これは全くその通りだ。しかし、東京新聞の記事をよく見てみると、東京都民が検証するためのお膳立てにベストを尽くしたのか疑義がある。上記ツイッターのサムネイルにもなっているが、問題の文書を巡る経緯をまとめた表の一番下には、東京都が文書の不開示を決めた日付が6月19日とある。

東京新聞より(赤枠は筆写)

つまり、東京都が不開示を決めてから東京新聞が記事化するまで3週間以上も経過している。行政側が開示・不開示決定をしてから請求側に通知するまでタイムラグがあるにしても、一体どの時点で東京新聞は通知を受けたのか、今度は東京新聞側が読者に開示していない。少なくとも東京都知事選の投票日(7月5日)の2週間以上前に、都が開示請求却下をしたのは事実なのだから、なぜ投票日の前に東京新聞はこれを報道しなかったのか東京都民の一人として極めて疑義を感じてしまう。

なぜ投票日1週間後の掲載だったのか

論理的に考えられるシナリオは3つだ。

  1. 東京都から東京新聞への請求却下決定の通知が投票日の後だった
  2. 東京都から東京新聞への請求却下決定の通知が投票日の直前すぎて補足取材の時間がなかった
  3. 東京都から東京新聞への請求却下決定の通知は6月中にはあったが、東京新聞は書かなかった

1や2であれば東京都の事務処理の問題になる。しかし、東京都の公文書開示請求のルールでは、請求があってから開示・不開示の決定は14日以内に行うことが定められているわけだから、決定内容を郵送で通知し、都内にいる請求者に到達するまで14日以上かかるのは常識的に考えづらい(私も過去に中央省庁に請求経験があるが、決定から通知到達まで半月以上かかったタイムラグは記憶にない)。少なくとも1の可能性は低い。

では2の可能性はどうか。もし決定から14日後に記者に到達していたとすると投票日2日前の7月3日。金曜日の午後に郵便物に気づいたのであればそこから急いで都の担当幹部に電話でアポをとって記事化できなくもないだろうが、選挙戦の取材もしている中では、時間的には厳しいかもしれない。逆に、東京都側が、選挙戦への影響を考慮した事務処理のスピード調整をしていたのかという問題にもなる。

緊急会見を行った裏で文書廃棄が発覚した小池都政(当時のNHKニュースより)

問題は3だった場合だ。たとえば決定から1週間後の通知到達であれば、6月26日。投票日まで8日も猶予があったことになり、都の幹部や有識者への取材は十分にある。あとは記者からデスクに報告し、編集局幹部の判断でどうするかという問題になる。

東京新聞に「邪推」をしてしまう理由

もしかしたら私の邪推で、実は1の可能性もありうるが、それはそれで東京新聞は都の対応の遅さを追及すべき問題だ。しかし、もし3であった場合は、一人の都民として有権者になぜ十分な判断材料を提供しなかったのかという思いになる。

小池知事が都政記者クラブを「掌握」したという指摘はすでに様々なところから出て久しい。選挙中に記事を出してしまうと、圧勝が見え見えの小池氏が取材に応じてくれなくなるから、投票日から8日も経過して掲載するという忖度や自制をしたのではないか…。万一そんなことであれば、それこそ中沢記者の記事表現を拝借すると、

記事化の遅れで有権者の最善の判断を阻むようでは、東京新聞を信じて報道内容を受け入れてきた都民らの理解は得られないだろう。

と言われることになりかねない。

いずれにせよ、私と同じような不信感を持つ都民は少なくないはずだ。小池都政に大見得を切った以上、東京新聞にも嫌疑を晴らしていただければと思う。

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新田 哲史
アゴラ編集長、報道アナリスト

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