我が陸軍は無謬

2020年07月14日 06:00

本日防衛省で陸自の広域多目的無線機(コータム)に関する取材機会がありました。これは、ぼくが1月に大臣会見でコータムは通じないという声が多い、実際はどうなのだ、と質問したのがきっかけで実現しました。

会議室における説明と、野外でのデモがあり、デモでは通常の見通しのある場所、建物を間に挟んだ場所、移動する車両からというものでした。

結論からいいますと、陸自は間違えない。コータムは問題ないというセレモニーで終わりました。

実際のところ部隊の通信関係者、OB、業界の10人に聞いて10人が問題ありというものですから、こういうセレモニー的なデモをやっても意味がないと思います。周波数帯も軍用無線機向いていないのではないかと質問しましたが、全く問題ないとのことでした。

陸幕がやるべきことは関係者へのヒヤリングなどを行い、それをまとめて検討する。また他国の同等の無線機を購入して実際に使って比較してみるということが必要でしょう。

例えば米陸軍・海兵隊が使用する同種のAN/PRC-160(HF/VHF無線機)、AN/PRC-158(UHF/VHF無線機)、AN/PRC-163(UHF/VHF無線機ハンドヘルド型)などと比較してみるべきです。別に在日米軍に協力してもらうならば、わざわざデモ用の機材を買う必要はありません。ぜひとも同じ条件で米軍の無線機と比較をすべきです。

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単に防衛省の敷地で恣意的な環境で小芝居をして「問題一切ございません」いってハイそうですかと信用するわけにはいきません。今回のデモでは20名を超える人員がかかわっていたかと思いますが、単に大臣に言われたのでやりましたとイニシエーションで終わるならば時間の無駄使いです。

今日は河野防衛大臣も顔をだされたので、その旨ははっきり申し上げました。そうしたら大臣からは「そういうことはドンドン言って」と言われました。

実際問題として個人衛生キットにしても、かつて陸幕は米陸軍のシステムに匹敵する性能といっていましたが、ぼくの追求で撤回しました。その後多少は改善されました。

空幕の広報室はかつてF-2のレーダーに問題があると認めていましたが、調達機数削減が決定されると手のひらを返したように、F-2に問題は一切ありません。そういう報道は全部嘘です!と断言するようになりました。実際は問題を抱えていたのは皆さんご存知の通りです。

こういうことが積み上がれば、防衛省、自衛隊のいうことを信用していいの?という疑問を常に持たれてしまいます。失った信用を取り戻すのは容易ではありません。

今回撮影は基本許可制でした。特にPADの画面は取らないようにといわれましたが、こんなものは他国の軍隊やメーカーでは全部見せているものです。これを部外秘だと手の内がわかると隠していると諸外国から馬鹿だと思われます。
こういう何が機密かもわからずに、何でも隠すという習いグセは納税者の知る権利を侵害しています。また他国の製品との比較を困難にして、納税者の監視が届かないことになります。

今回不具合の改修はあったのかと聞いたら、それはないが性能向上のための改修はおこなっているとのことでした。前者であればメーカーがそれを負担し、後者であれば防衛省が費用を負担することになっています。ところが少なからず不具合の改修を「能力向上」に紛れ込ませているという証言も多数あり、コータムに関しても疑われても仕方ないと思います。

あとコータムに対する問題をいくつか指摘しておきます。

●携行型がフレームと一体化しており、他国のシステムのようにフレームと本体を分離して、バックパックなどに収納することが非常に困難である。バックパックはフレームの上から背負うことになるので、フレームの分だけ余分な重量が増える。現場の隊員たちからは背負うと背中が痛いという不満も聞いております。
●電池が専用。そりゃ、メーカーのNECは儲かるでしょう。ですが戦時に充分な備蓄がありますか? それはないでしょう。しかもリチウム電池は定期的に充放電しないと使えなくなります。諸外国では米軍やNATO規格の汎用電池を使うことが少なくないようです。
そうであれば兵站の負担が減ることになります。
●写真がPAD内臓のカメラで撮ったものしか送れない。他のデジカメなどで撮った写真は送れないそうです。これでは特に偵察隊が使う上で不便です。また動画も送れません。
●こういう問題があるし、また世界的には動画などデータ通信の速さと容量が必要とされているわけですが、導入から10年経ってもそういうことに対応する近代化は計画されていないそうです。更に申せば、コータム車載型は基本中隊長などようで、例えばここのトラックなどには基本無線はついてないそうです。これまた問題だと思います。

個々の隊員にクローズでのみ使えるSIMカードを刺したスマホでも支給すべきです。そうであれば一人あたり数万円で済みます。イージス・アショアもやめることですし、そのくらいの予算はなんとかなるでしょう。なんなら10式戦車の調達やめてその予算を回してもいいでしょう。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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