“将来”増税が良いか、“今”増税が良いか?!   ―前田拓生

2010年04月24日 13:17

「財政が危ない」という話は、特にここ最近、マスコミで大きく取り上げられるようになってきました。実際、40兆円弱の税収入に対して850兆円を超える政府債務残高を考えれば、国民としても「増税は致し方ない」と(積極的ではないものの)理解せざるを得ない状態にあるといえるでしょう。そういう機運は、ある程度、感じられるので、参議院前にも関わらず、政府から「増税議論」の話が出るようになったのだと理解しています。

ただ未だに「国債発行の増発は何ら問題ない」「景気が悪いのは日銀の問題」ということを平気で言う人々がいるのが気になります。


「日銀はもっと緩和政策をすべき」という話の問題点は、何度もアゴラでお話をしているので下記(※1)を参考にしていただきたいと思います。しかし現状、一頃よりも景気が安定し出している上にコモディティ等の価格が上昇してきているので、現行以上の緩和政策は社会的なボラティリティを高めるだけであり、一般物価を引き上げるより前に大きな混乱を招く可能性があるので、「出口戦略」とまではいかないものの、緩和の仕方を(あまり緩まないように)工夫しないといけない時期に来ているのかもしれません。

当然、実体経済主体(事業会社等、特に中小企業)などへの銀行等の貸出は、もっと増加させる必要があるでしょうが、上述の意味において「ここからさらに緩和」は全く見当違いということになるでしょう。ここは歴史に学ばなければなりません。

※1
責務を果たした日銀、次は政府の番ですね!
日本は本当に「おカネ不足」なのでしょうか?!?!
財政再建は「その後」で大丈夫?!
国会で金融政策を議論しても・・・

また「国債増発の問題」もアゴラで何度もお話をしているので下記(※2)を参考にしていただきたいのですが、多くの人がここからの「国債の増発は危ない」と考えているにも関わらず、一部で「国全体では資産超なので問題ない」という意味の話をする人がいるようですから、その点について考えてみたいと思います。

※2
国債増発を伴う財政政策の問題点
財政拡大の話が出てきていますが
国債利回りが“今”低いから「大丈夫」って、本当?!

現在、国全体としてみた場合、対外資産負債残高では225.5兆円の資産超過(2008年末)になっています。これは「国全体としてみた場合にはネット(資産から負債を引いた純額)で200兆円超の外貨資産がある」ということを意味します。

また現在、日本国債の保有者のほとんどは日本人が保有しています。

この「国債の保有」と「対外資産負債残高」の観点から「日本国債は、そのほとんどが国内で消化され、日本全体として他の国から借金をしているわけではない」ということになるので、日本国債の残高が多くても「身内から借りているだけだから、いくら多く借りていても問題ない」という主張をする人がいるのだと推察します。

確かに、現状、日本国債は日本人が保有している割合が圧倒的に高く、また、対外資産負債残高においても資産超であり、政府としても外貨準備を高水準に保有しているので、ギリシャ国債などにおいて懸念されているような「デフォルト(返済の遅延や不能)が起こる」という可能性は少ないと思われます。

しかし、借りているモノは返さないといけないわけであり、政府であっても借金をしたのであれば、それは「返す算段」をしなければなりません。つまり、国債を含む政府の債務残高は決められたスケジュールによって返済をする必要があり、それは政府に入ってくる収入から返済をすることになります。「政府に入ってくる収入」の中心は「税金」ですから、今以上に「政府債務残高が増加する」のであれば、それは追加的に「将来、増税になる」ということを意味します。

したがって、将来「さらに増税になってもよい」と国民が合意するのであれば、国債の増発も可能です。このような「合意がある」という状態において「身内から借りているだけだから、いくら多く借りていても問題ない」というのであれば、それは「正しい」かもしれません。

ところが現状、そのような合意が出来ているとは思えません。そうでなくても「増税はやむなし」状態になっているのですから、これ以上、将来負担が増えるということに対して、国民的な合意が出来るとは、到底、思えないのです。

以上より、「国債増発は良いことだ」という主張は、裏を返せば「将来のさらなる増税は良いことだ」と言っているのと同義ということになります。これって「良い」ことでしょうか?

当然「将来の所得が増加する」というなら、または/かつ、人口がドンドンと増加するのであれば、将来的には税収が増加するでしょう。そして、その税収の増加速度が「相当高くなる」という見込みがあるのであれば「国債増発」も合理的なのかもしれません。しかし「今」も、おそらく「将来」も70年代のような高度成長が可能である状態でもなく、「子ども手当」くらいで人口が素晴らしく増加するということも期待できないのですから、ここで「国債増発」という主張は「如何なものか」と思います。

そこで「将来増税」を招く「国債」よりも、「今、増税しよう」という案を、現在の政府の一部(およびそのアドバイザー)で出ているようです。

ここは「考え方」なのですが、この話(今増税しよう)に合意が出来るのであれば、それはそれで「良い」と思います。「国債」という返済の見込みが立っていない「先延ばし政策」よりも「今政策に不足している部分は増税で」という方が、ストレートであり、わかりやすい話です。

この場合、“今”増税して、そのおカネで「子ども手当」などのバラマキ政策を行うということに合意が取れるのか否かがポイントなのでしょう。が、やっぱり「増税するなら、借金返そうよ」という方が、合意は取れやすいように思いますが、どうなのでしょうか?

まぁ、それほど財政が緊迫しているのであれば「国債(将来の増税)」や「増税(今の増税)」で変なバラマキを考えるのではなく、事業仕分けでも何でもやって「政府の支出を絞る方が良い」と考える国民の方が多いようにも思います。

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