2020年度から始まる大学入学共通テストでの英語民間試験の導入が見送られることになった。経緯をチェックしているうちに、元文科省次官の前川喜平氏が9月に「文科省は大学入試への民間英語試験を延期した方がいい。仕切り直しが必要だろう。」とTwitterで批判していることに気付いた。そこでもう少し調べてみた。
文科省は大学入試への民間英語試験を延期した方がいい。仕切り直しが必要だろう。 https://t.co/cx7uuKVnCO
— 前川喜平(右傾化を深く憂慮する一市民) (@brahmslover) 2019年9月9日
発端は2014年12月の中央教育審議会答申である。答申は「英語については、四技能を総合的に評価できる問題の出題(例えば記述式問題など)や民間の資格・検定試験の活用により、「読む」「聞く」だけではなく「書く」「話す」も含めた英語の能力をバランスよく評価する。」ことを文部科学大臣に求めた。
答申を受けて2015年1月に『高大接続改革実行プラン』が文部科学大臣によって決定された。その直後に「高大接続システム改革会議」が組織された。
同会議第7回では、全国高等学校長協会が「現行の英語の資格・検定試験は受検料が高額でございます。また,学習指導要領で示された内容を必ずしも包括したものではありませんなどの課題があります。」と指摘した。全国高等学校PTA連合会も経済的に困難を抱えている家庭にとっては数千円の受検料負担といっても,非常に心理的にも経済的にも負担感が強いと指摘した。しかし議事録を追っても、その後、経済負担について議論した形跡はない。
会議の『最終報告』(2016年3月)「Ⅲ 高大接続システム改革の実現のための具体的方策」には、受検者の経済的負担への配慮・受検場所に短時間では行けない受検者への配慮などへの言及がある。しかし「Ⅳ 改革の実現に向けた今後の検討体制等」からは外れている。これら一連の情報から、会議では指摘されていたにもかかわらず、文部科学省は今後検討すべき事項から外し無視してきた状況が読み取れる。
前川喜平氏は2014年7月に文部科学審議官に就任し、2016年6月に文部科学事務次官となった。中央教育審議会の答申から高大接続システム改革会議の最終報告までは審議官を務め、この会議にも出席している。彼が責任の一端を担うことは明らかだ。
山田 肇