財務省の財政制度分科会(平成30年10月24日開催)において防衛予算に関しても討議されまた。その資料を財務省がHPで公開しています。
引き続きこれについて重要な指摘とその解説を行います。
装備品の効率的な調達等に向けた取組み(P60) 財政制度等審議会財政制度分科会(平成28年10月20日)資料
○ 防衛省は、装備品の効率的な調達に向けた取組みとして、「防衛生産・技術基盤戦略(平成26年6月)」において、①装備品の取得方法の効率化・最適化をはじめ、②装備品のライフサイクルを通じたプロジェクト管理の強化、③「防衛装備移転三原則」(平成26年4月)を踏まえた装備品等の海外移転、④研究開発に係る知的財産権の活用、⑤国内産業の組織再編・連携を自ら掲げており、早期の具体化を図る必要。その際、各取組みの進捗状況が外部から分かりにくいため、同戦略の進捗を可視化する工程表を策定する必要。
さらに、装備品の価格の低減等を図るため、⑥原価の監査の徹底、⑦GCIP率の在り方、⑧契約時における価格上昇リスクの抑制に取り組む必要。
無論これらは重要なのですが、それ以前の問題があります。
マトモな兵器を選んだり、開発する能力がないことです。例えば4人乗りの軽装甲車である、軽装甲機動車を主力APCに選び、その後継の小型装甲車もこれを踏襲しようとしています。そこいらの軍オタよりも程度が低い。
海自のFFMのRWS(リモート・ウェポン・ステーション)にしてもそうです。常識で考えれば、コストダウンのためとはいえ、元々ついていたレーザー測距儀と自動追尾装置を外すことなんてありません。本来近接防御のためのRWSの近接防御能力を取り去るわけですから。そこまでコストダウンを図るならば、M2機銃もFN製を入れればよかった。ところがFNの5~6倍も高い国産を使っています。
そして機銃はRWSの2丁だけ。カバーできる範囲はせいぜい240度で、後部はがら空きです。諸外国の水上戦闘艦はRWSも12.7mmクラス2基、20~30mmクラス2基さらに、ミニガンや、7.62ミリ機銃を多数そろえています。こんなもの「世界の艦船」を眺めるだけでも分かる話です。
まったくもって戦うことを考えず、コストダウンだけを考えて作っているとしか思えません。レーダーなどにして然りで、海自OBがFFMは浮かぶ棺桶と嘆くのも頷けます。
つまり軍隊としてマトモな軍事的な思考を身につけて、諸外国の動静に気を配り、将来の世界のトレンドはどうなるかを予測する柔軟な思考力を身につけるべきです。それがなければ、いくら川下のコストを弄っても本当の意味での調達改革、コスト削減はできません。
クズを努力して如何に安価に調達、運用してもクズを選んだ時点で税金の無駄使いです。
これ以降の記述に共同開発などもでてきますが、このような素人並の知見で、諸外国とマトモに共同開発ができわけがないでしょう。
防衛省、装備庁、自衛隊の情報に対する意識と、戦争に備えた装備調達をするという当事者意識&能力を改善しないかぎり、テクニカルなコストセービングだけをやっても意味がありません。
■本日の市ヶ谷の噂■
海自の企画している哨戒艦は事実上だめ装備の典型例のミサイル艇の更新で、海自の焼け太り。これで無用な予算と乗員を無駄使いして自らを弱体化との説。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2019年11月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。