アメリカの正論の裏に潜む本音とは何か?

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歴史を紐解けば、国際情勢の真相や、今後の行方が見えてくることが多々あります。世界で最も多大な影響力を与える政治家は、間違いなくアメリカ合衆国の大統領です。アメリカ大統領選挙の歴史を知ることで、世界の動向を知ることができるのです。

教養としてのアメリカ大統領選挙」(神野正史 著)秀和システム

[本書の評価]★★★(80点)

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まずは中国に目を付けたアメリカ

神野さんはアメリカの〝正論〞の裏に潜む本音を理解しなければいけないと言います。

「フィリピンを押さえたアメリカは橋頭堡(前線基地)としてその先に〝照準〞を定めます。それが当時の中国『清朝』でした。しかし、このころの清朝はすでに英仏独露日が、それぞれ租借地や勢力範囲を設定して中国分割がほぼ完了しており、アメリカが付け入る隙がありません」(神野さん)

「そこでマッキンレー大統領は、時の国務長官Jジョン・ヘイの名で英仏独露日の各国に通牒(ノート)を送り付けます。それがかの有名な『門戸開放宣言』です。具体的には以下の3つを伝えます。

  • 門戸開放(中国における商業活動はすべての国に開放されるべきである)
  • 機会均等(機会はすべての国に差別なく平等に与えられなければならない)
  • 領土保全(清朝の領土は中国人のものであり、これを奪ってはならない)

ひとつひとつが正鵠を射た、文句の付けようのない〝正論〞が並びます」(同)

日本人は総じて〝お人好し〞なので、こうした〝正論〞をいちいち言葉通り受け取ってしまいますが、神野さんは本音を理解すべきと指摘します。

「それは『周囲の者からどれほど諭されてもオレオレ詐欺に引っかかる老人』に似て、そんなことではいつまで経っても彼らの本質を見誤りつづけることになります。アメリカに限らず国家であろうが個人であろうが、ことさら〝正論〞を振り翳す者は、その腹の底に〝悪意〞を隠しているものです」(神野さん)

〝正論〞の裏にある真意を理解しなければいけないのです。

トランプ事件から学ぶこと

トランプ候補、狙撃の1週間後にバイデン大統領は撤退表明をしました。党から正式に指名を受けた大統領候補が選挙途中で撤退するのは前代未聞です。

ですが、似たような構図は、ウィリアム・タフト大統領の2期目の大統領選でも起きています。しかし、投票間近になって指名を替えるというのは、同じ致命的失態と言えるでしょう。

神野さんは「歴史に大きな〝爪痕〞を遺した人物を調べてみると、『不思議なほど無名だった若いころから多くの命の危険に晒されながら、それをことごとく〝強運〞で切り抜けてきた』経験を持つことが多い」と指摘します。〝神の御加護〞でもあるかのように。

トランプ氏の「狙撃」が未遂に終わったのも彼の強運に拠るところが大ですが、それは、神から何かしらの〝使命〞を負ってこの世に生を享けたことを示唆しているのかもしれません。誰が大統領になるにせよ、次の4年間を注意深く見守っていきたいものです。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

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