日本の5つ星ホテルが外国人客ばかりな理由

黒坂岳央です。

先日、東京旅行へいってきた。日系とアメリカ系のホテルに泊まったのだが、レストランやフロントで違和感があった。それは日本人宿泊客の姿がまったくといっていいほど見られなかったことだ。

感じたことを取り上げたい。

recep-bg/iStock

日本人の旅行離れ

円安やインフレで日本人が海外旅行へ行かなくなった、といわれて久しい。問題は国内の旅行でも同じ現象が起きていることだ。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2024年7月比で外国人は伸びているのに日本人が減少していることがわかる。

昨今のインバウンド効果は凄まじく、5つ星ホテルのスイートルームは半年前の時点でドンドン空きがなくなるほどで、現地へ行ってみると利用者の多くは外国人であることに気づく。

今回宿泊したホテルでもフロント、宿泊者専用ラウンジ、レストランでも外国人だらけ。聞こえてくる言語も英語以外のヨーロッパ言語も非常に多く、中国語や韓国語はあまり聞こえてこなかった。

パンデミック後から海外へいっても日本人の姿がほとんどなく、日本人と思ったら韓国人、台湾人、中国人ということが多かった。だが本稿で取り上げているのは海外ではなく「日本国内のホテルでの体験」なのである。パンデミック後の経済事情の変化が影響していることは言うまでもないが、「内向き志向」は国内旅行にも表れているようだ。

現金支払いお断り

今回、豊洲市場へ行ってみたのだが、驚いたのは外国人の多さに加えて「現金支払いお断り」という張り紙の店舗を見たことだ。

自分は基本的に旅行先に1円も現金を持参しないのでこれはありがたい提案であり、なんら不満はない。おそらく外国人も同じでクレジットカードやQRコード支払いができるのは便利だろう。そしてそれは店舗側もお釣りのやり取りなどの手間も減るので、オペレーションの工数削減で助かるはずだ。

メニューも外国人向けと思しきものもあり、非常に有名な「インバウン丼」以外にも7000円、8000円というなかなか強気価格の商品が踊り並び、吸い寄せられるように買っていくのは外国人ばかりである。

国内の日本企業の中にも、完全に外国人向けのサービスに振り切って提供しているところも見られた。そうした店舗ではメニューや説明も英語(筆者は日本人なのに英語で説明された)、価格も強気だが「鮮度抜群の魚介を全部盛り!」のような高付加価値がついている。

日本人の旅行離れは、円安やインフレが主な要因となっているが、国内でもその影響は顕著だ。外国人観光客が高級ホテルや観光地で目立つ一方、日本人はそうした場から遠ざかっている。現金支払い拒否の店舗や高価格な商品も外国人向けにシフトしており、今後、国内観光がどう変化していくのか注目が必要だ。

 

■最新刊絶賛発売中!

[黒坂 岳央]のスキマ時間・1万円で始められる リスクをとらない起業術 (大和出版)

■Twitterアカウントはこちら→@takeokurosaka

YouTube動画で英語学習ノウハウを配信中!

アバター画像
ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。