TPPと政策の役割

小幡 績

政府の役割とは何であろうか。政策の役割とは何であろうか。

かつては富国強兵、今なら、富国平和といったところか。

しかし、ここで重要なのは、攻撃は最大の防御、0-0だけを目指していてはサッカーは勝てない、PK負けしてしまう、ということだ。

そして農業とは、業であり、経済活動、産業であるということだ。農業はビジネスと違うということは、農業で食べていくということを否定しており、自給自足以外は認めないということである。そしてビジネスとは戦いなのである。


農業は別だという議論は常になされるが、今回はこの議論に対する反論が高まっている。それはそのとおりで、農業も産業であり、それを職業として、さらにそれを消費者などに売ることによって生活している以上、生産と販売を行うビジネスマン、というより、事業体なのである。

一方、農業関係者の反論は激しい。そして世界的に農業関係者の政治力は強い。ここには何らかの合理的、非合理的理由が存在すると思われる。

農業関係者が政治力が強いのは、当然のことながら票になるということである。票になるのは、もちろん1票の格差があり、票が思い地域での票が多いこと、その地域がコミュニティとしてつながりが強く集票が効率的であり、かつ確実性があること(活動のリターンのリスクが小さい、つまり、金とエネルギーを投入すれば必ず票に結びつく。都市部はそうではない)、最後にもちろん投票率が高いことだが、それ以上に浮動票が少ない、一旦投票行動を決めたら長年にわたって同じように投票するということである。

そして、これは既得権益化する。票が確実で固く長期安定、ということは、政治側と集票側と癒着する。後者が、農業において既得権益化すれば、農業への政治的支援は固定化する。この固定化がもうひとつの問題だ。

つまり、農業への支援は、量的にも上方バイアスがかかっている(多すぎる)が、質的にも大きなバイアスがかかっており、この質のバイアスが問題なのだ。