今って本当に氷河期なのか? - 村上たいき

2010年12月08日 23:20

下のグラフは大卒求人数を大卒就職希望者数で割ったものです。いわゆる求人倍率というものです。

グラフ1
※出所:リクルートワークス研究所

確かに、これを見ると今の大卒の就職は厳しく見えます。次のグラフは大卒求人数を21歳人口で割ったものです。学歴無視のホワイトカラー求人倍率というところでしょうか?


グラフ2
※出所:リクルートワークス研究所および人口問題研究所

上位の一定割合がホワイトカラーに適した人材だとすると、彼らにとって、今はなんとも就職しやすい幸せな時代です。そして今、就職に困ってるのはレベルは低いのに大学に行っちゃった大卒です。大学進学率20%→50%に増加したことを考えると、だいたい6割程度の大学生がこれにあてはまると考えてはいいのではないでしょうか。つまり
「今、ホワイトカラー職に就きやすい」
「今、大卒の就職難の理由は、大卒が増えすぎたから」
は正しいと言えます。

最初のグラフを見れば判るように、求人倍率は1を超えています。内定率が悪いのは池田信夫先生が仰るようにこのレベルの低い学生が選り好みをしているからです。しかし彼らを責めるのはかわいそうに思います。彼らが現状把握のために上に挙げたような統計を調べることは無いでしょうし、メディアがそれを教えてあげるようなこともありません。今思うと、メディアが「マッチング」と言っているのは、実は「自分の分を知れ」という意味を、反感を買わずに表現しているだけなのかもしれません。このように彼らには自分の能力の低さを知る機会があまりありません。

誰でも、自分の能力が低さを認めるのは辛いものです。まして自分の大学の卒業生が就職しているような企業に就職できないとなると、それは自分の能力の低さではなく、他の何か(たとえば景気)のせいだと思いたくなるのも判ります。そう考えると、大手企業の就職活動の早期化は良いことなのかもしれません。大手企業が早いうちに採用活動をはじめることにより、能力の低い大学生は早いうちに「内定0」がつきつけられます。これにより彼らは自分の能力の低さを早いうちに気づくきっかけになります。彼らの本当の就職活動はこれからなんです。もともと大学の教育に関して、企業はあまり期待していませんしね。

ところで、大学進学率を低下させ、大卒の数を減せば万事解決するかというとそうではありません。今度は高卒の就職難がやってくるでしょう。日本国内におけるブルーカラー人材の必要数は確実に減っていますし、これからも減り続けるかと思います。実際にはそれ以上に高卒が減ってしまったためこの問題が隠れてしまいまっていますが、日本の雇用の本当の問題は「ブルーカラーの雇用不足」になるのではないでしょうか?

逆に、日本の大手企業でホワイトカラーの人材は不足しています。本当に不足しています。大手企業で採用数が少なく制限されているのは、不景気だからだけではなく、優秀な人材が集まらないからという理由もあります。近年日本国内で採用数を満たすことができないので、外国人に人材供給を求めるようになっています。そこで、高度な教育によりホワイトカラーにふさわしい優秀な人材を多く作り上げればこれらの問題は一気に解決します。しかし、実際はそうはなっていません。

企業が大学の教育に期待していないのは、企業における人材にアカデミズムが必要ないからではありあせん。会社や業界にもよるでしょうが、実際には企業は採用する学生にはちゃんとした基礎学力を求めています(せめて分数は理解してほしいです)。大学にそれを期待できないのは、大学がそういう教育ができないからです。その理由のひとつは大学進学率上がってしまったせいで、入学してくる学生に高校で習得すべき基礎学力がなく、大学で習得すべき基礎学力が身に着けることができないためです(最近では大学で、高校物理を教える補習授業があるそうです)。

また、大学の入学がいくら容易になっても、米国の大学のように卒業を難しくすれば卒業する人材が一定以上にできますが日本の大学にそれができません。それをやるには一定レベルに達しないかぎり単位を与えないようにすれば良いのですが、単位取得率が7割を下回ると文科省から大学にクレームがくるんだそうです。建前の理由は「入学試験で一定レベルに選別しているので単位取得率がそれほど下がるはずが無い」らしいですが文科省のホンネはわかりません。(だれか知っていたら教えてください。)

仮に上のようなことが実現できたとしても優秀な大卒が大量生産できるかというと、それもわかりません。Judith Rich Harrisが言うような「人間の能力は、遺伝と幼少期の環境でほとんどが決まる」が正しいとすると、大学でいくら教育をがんばっても能力の低い人間は、低いまままかもしれません。どう転んでもホワイトカラーに適した能力を持った人材の割合は、大学への進学率が上がっても増えることはないのかもしれません。

以上のように、なかなか悪者探しをしているだけでは解決しがたい問題ですし、仮に有効な解決を施しても結果が出るにはしばらく時間が必要です。当事者の学生には「就活どうにかしろ」「就活くたばれ」「ここがヘンだよ就活」「シューカツしたくないよぉ~」という名前でデモをして「競争させるな!」「助け合いをさせろ!」と叫んでいるようですが、同情しますが共感はできません。現状が誰のせいであっても、自分のことは自分が何とかするしかないのです。

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