簡単に論破できる電波オークション反対論 パート5

2011年02月07日 20:33

2011年1月31日に開催された電波オークションに関する慶応義塾大学でのシンポジウムで、国領先生から「そもそも電波オークションをなぜ導入するのですか」という質問を受けた。

目的は「総務省の過剰な権力をそぎ、天下りを撲滅する」ためなのだろうか。それとも「不足する子供手当の財源にする」ためなのだろうか。週刊ポストの記事はそんな論調だ。しかし、子供手当の財源に値する規模は保証できないし、総務省からの天下りを撲滅するには、他にも方法はある。

電波オークションの導入にはもっと大切な目的がある。それは「国民が電波をいっそう有効利用し、電波産業が活性化し、国際競争力を持つ状況を実現する」ことだ。国領先生にはその場で返答し、日経ITProの記事でも引用されたが、ブログにも記録を残しておこう。


M. Caveらが執筆した”Essentials of Modern Spectrum Management” (Cambridge University Press, 2007) は、美人投票型の電波配分システムには四つの問題があると指摘している。第一は、それぞれの電波帯ごとに異なるはずの経済的価値が、配分に反映されないこと。第二は、せっかく配分されても利用が進まない電波帯が生まれること。第三は、新技術が生まれても参入が極めてむずかしいこと。第四は、既存免許人には新技術に更改しようという意欲がなく、古い技術が何十年も利用され続けること。

電波オークションの導入は、上の四つの問題を解決するものだ。

わが国の電波産業には、免許が取れそうにならないと研究開発に取り組まない、という傾向がある。せっかく研究開発しても、市場化できなければ利益が得られないからだ。一方で、免許が得られそうとなると、市場性が期待できないとわかっていても研究開発を進める、悪い癖がある。デジタル化後の跡地に公共ブロードバンド移動通信システムを作る、という話がある。公共用だけで特別なシステムを作るという筋の悪い計画なのに、政府からの補助金があるので研究開発が進んでいる。

電波オークションの場合、電波帯の用途は指定するが、どのような技術を用いるかは落札した側に委ねられる。したがって、オークションで落札する気になれば、研究開発を先行させられる。実際、アメリカでは、電波分野にも多くのベンチャー企業が存在し、それぞれに独自の技術の開発を続けている。自ら市場に参入するほかに、大手企業に丸ごと売却する、という経営オプションもベンチャー企業は選択できる。クアルコムに買収されたフラリオンがその例である。

この日米の企業姿勢の差が、競争力に大きく影響しているわけだ。

電波オークションの導入は、わが国電波産業に課せられた「くびき」を外すものだ。ただし、これからは落札額を支払う必要がある。この落札額はそれぞれの電波帯の経済的価値を反映するものだ。免許を得た事業者は投資回収のために事業開始を急ぐから、せっかく配分されても利用が進まないという状況は起きない。新技術を武器に電波を獲得するのも容易になる。第四の問題点は、「簡単に論破できる電波オークション反対論 パート4」に書いたように、オークションにかける電波を発掘するインセンティブを持つ総務省が、既存免許人が有効に利用しているかをチェックすれば回避できる。

電波産業にとっては、くびきを外してもらう代わりにオークションに資金が必要になる。しかし、その結果、次々に新技術が市場に投入されるようになり、国民が電波をいっそう有効に利用できるようになるわけだ。ギブアンドテイクとして、悪い取引ではない。

山田肇 - 東洋大学経済学部

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