スマートグリッドは日本の救世主となるのか?

2011年04月12日 10:39

日本をすっぽりと覆う、不条理な自粛の強要とそのナンセンス。そして、自粛が実体経済に与える悪影響に就いては既に説明した。

賢明な日本国民である。自粛の愚かさに気付き3.11以前に回帰する日も近いと思う。後から振り返れば、3.11の後1ヶ月程自粛の嵐が吹いたなと笑って話す日も近いと思う。

寧ろ、深刻なのは予想される今後の製造業の落ち込みである。
DI

http://www5.cao.go.jp/keizai3/2011/0408watcher/bassui.html

DIが前月比マイナス13.7%で踏み留まっているものの、この数字は深刻な問題であるサプライチェーンの断絶を織り込んでいないと思われる。

そして、中長期で懸念されるのが電力の供給不足である。言うまでもなく製造業に於ける生産量は供給される電力量に正比例する。必要とする電力の半分しか供給されなければ、生産量も半減する訳である。

生産量が減少すれば当然の事ながら企業業績は悪化し、余剰人員の整理解雇に向かわざるを得ない。

一方、日本の慣習として整理解雇を進めながら、新卒採用に向かうと言うのは非現実的であり、それでなくても土砂降りと称される就活は更に悲惨なものに成るのは確実である。

上場企業の管理職であった50才の父親が職を失い、大学4年生の長男が就活に失敗し、それまで中流階級に属していた普通の家庭が、あっという間に貧困層に没落するというのもあり得る。日本のあちこちで当たり前の様に観られるようになるかもしれない。勿論悲惨な話であり、何とかしなければいけない。

手段の第一は原発の抜けた穴を他の発電様式で埋める事である。そして、既にネットを舞台に多くの論者、識者が意見を述べている。しかしながら主張の大半は尻切れトンボで結論がなかったり、堂々巡りで要領を得ない。

結論から言ってしまえば、再生可能エネルギーは不安定でしかもコストが高過ぎるので家庭用自家発電の様なケースを除き電力ソースとしては失格である。

一方、石油への回帰は二酸化炭素発生の問題以外にも地政学的リスクが積み増す一方の中東に供給源を依存する事になる。

LNGは価格が原油にリンクしており、オイルショックの影響を直接受ける。

石炭火力は比較的この種問題が軽微であるが、既に電力の中で大きなシェアを占めており且つ硫化物、窒素化合物等の大気汚染の問題が懸念される。

従って、一旦の結論としては以前説明の電力消費者は発電者たれ的な考えは大事にすべきであるが、既に総発電量の30%にもなる原発の抜けた穴を代替発電で埋める事は現実的には不可能であり、節電電力の最適配分(スマートグリッド)で埋めるべきと言うのが私の主張である。

節電は今の所、照明を暗くする、エスカレーターの運転を休む、電車の本数を間引く等、公共施設や公共サービスが大部分と思うが、今後は一般家庭を巻き込んだ一大トレンドになる筈だ。

例えば、住宅に於ける現在の電力を大量使用する床暖房は廃止して、日光を効率的に取り入れ、二重窓と断熱材装備の壁で熱を逃がさず、暖房を不要とする住宅の普及は割と早いのではと思う。

この普及の為には健全な中古住宅の育成がマストであり、政府は急ぎこれに取り組む必要があるのは言うまでもない。

大量の電力を使用する大型のプラズマテレビ等から、タブレットPCやスマートフォンへ視聴の移行も、起こり得る変化であると共に、節電の意味から好ましい変化である。

この為には、後述するスマートグリッドにより発電量に応じた一般家庭への電力供給の調整が弾力的に実行される場合の優先順位、(具体的には病人がいる場合は医療器用電源は最重要、次に冷蔵庫とかでテレビは最下位とか)設定がマストになる。

大事な点は、家自体、そして家の中身も家電を中核に、節電に向かいダイナミックに変化して行くと言う予測である。

最後に、今回のテーマであるスマートグリッドを使った電力の最適配分による電力危機克服の可能性に就いて説明する。

スマートグリッドは私の理解する所では3っつの要素から構成される。

第一は全ての送電センターとエンドユーザーを通信機能で連結し停電を即時に検知すると共に復旧時間を最小化し経済損失を限りなくゼロに抑える。

第二ディマンドレスポンスである。

3.11以前の発想が電力会社は需要予測に応じた発電を行い、電力を供給すると言うものであったが、ディマンドレスポンスはこの真逆で、電力会社が発電量に応じて各ユーザーに使用総量を命令すると言うものである。

各家庭を含む電力消費の監視を行う為のスマートメーターの設置はマストである。

最後はHome Energy Managemet System(HEMS)である。

個人的には、今後の一戸建て家屋は太陽光発電と蓄電設備設置が標準化すると思う。そうすると、仮に電力会社からかなりの電力供給調整があったとしても段階的にこれを吸収する事が可能となる。

先ずは逆潮流電源として、売電している太陽光発電による電力を全て自己消費に回すのは当然である。

次いで、蓄電電力を最大限放出する。

それでも電力が足りなければ、予め設定したプログラムに従い、例えば夏場であればエアコンの設定温度を3度上げる、タブレットPC等で代替の効く電力を浪費するプラズマテレビのスイッチを自動停止するとかである。

3.11以降、ヤフーの東京電力電力使用状況を観ておられる方も多いと思う。計画停電が騒がれながらも、実際は時間帯によっては使用率が60%台の時もある。

スマートグリッドが優れものである点は、需要のピークに合わせて発電設備を準備するという、従来の発想の呪縛から電力会社を開放した所である。

そして、日本がこの優れものスマートグリッドの導入に於いて優位な点は、特に改修しなくても既存の送電線網で、送電総量の約30%程度位なら、逆潮流電源(自家発電力)を吸収可能であると言う恵まれた事実である。

繰り返しとなるが、一般家庭、工場そして地域社会(ごみ焼却炉)での発電は仮に電力会社からの電力供給がゼロになったとしても、スマートグリッド経由、病院、消防、警察の如き地域重要地点に対する優先的配電を可能とし不必要な混乱を防止する。

仮に夜であれば一般家庭の太陽光発電は使えない為、各家庭には極めて抑制された電力ではあるが送電はされる。最低限度、非常灯と冷蔵庫位には使える筈である。

何があっても真っ暗になる事や、冷蔵庫の中身を腐らす心配はない。

節電とスマートグリッド活用により、賢く、無駄なく電気を使う事で製造業が使用するに充分な電力を確保すべきと言うのが、今回の私の主張である。

山口 巌

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