円高のせいにしないで、堂々と胸を張ってグローバル戦略を

2011年10月03日 13:40

円高だ、エネルギー不足だ、法人税が高い、だから海外に移転せざるをえないという話がよく報道され、経済学者やコメンテーターも巻き込んだ大合唱となっています。しかし、以前、それを強く主張されていた経営者の方の企業の中期経営構想を見ると、それは3・11以前に発表されていたものですが、投資はアジアに全面シフトすることが掲げられていました。
それはそれでその企業の戦略であり、成長市場に軸足を移すことは当然だ思いますし、経営の積極性のあらわれだと感じますが、なぜそれを外部環境のせいにするのか、なにか後ろめたさがあるのかと疑ってしまいます。


そう感じていると、一橋大学大学院の楠木教授が、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューに、直球、どまんなかのストレートと感じるコラムが掲載されていました。タイトルから気に入ったのでご紹介します。
グローバル化せざるを得ない? そんなこと誰も頼んでないですよ|楠木建 ようするにこういうこと| :

楠木教授がおっしゃるように、国内市場だけを相手にするのか、自らの持つ技術やノウハウを生かして、広く海外にも製品やサービスを提供していこうとするのかは、それぞれの企業の意志であって、誰も強制している話ではありません。

賃金も安い、いまなら現地で良質な働き手も確保できる、またそこに世界の製造拠点が集積しはじめているとすれば、産業財や中間財の企業が現地に開発や製造拠点を移し、よりきめ細かく、迅速な対応をしようと思うのは当然です。賃金格差は円高によるコスト増よりもはるかに大きく、しかもアセアンはすでに自由貿易に移行していて、関税によるハンディもありません。

消費財でも、建材でも、重機でも、また設備機器でも、その国が高い経済成長をしており、所得も格差はあるとは言っても伸びている、またかつて日本がそうだったように、欧米や日本などの先進国のように豊かな暮らしを人々が求めていれば、日本の製品やサービスをそういった人々に提供し、それで企業としてもグローバル・ブランドになっていきたいと思うのは実に素敵なことです。

そういえば昨年末に、NHKが大阪府泉大津市の取水設備や水処理の会社、株式会社ナガオカを取り上げていたのが再放送されていました。中国人留学生を雇用し、三村社長がその留学生の瀋陽の実家を訪れた際の様子が紹介されていたのですが、両親は娘の日本留学に反対だったそうですが、日本の企業に就職できたことを母親が涙を流して喜び、ぜひ瀋陽も水道からほんのわずかしか水がでない不便な状況を変えて欲しいと父親が懇願していました。日本で培った技術で、アジアの人々、また世界の人々の暮らしを豊かにしたいと願い、中国に進出することは、称賛されたとしても、誰も非難できません。
株式会社ナガオカ|最新の記事 :

就職を考えてみましょう。もし、大企業でも、中堅企業でも、海外に拠点もなく、ただただ輸出頼み、あるいは国内市場しかビジネスを展開していないとなるとどうでしょう。もちろん市場の分野によって例外はありますが、一般には、経営の積極性が乏しく、将来性がないと見てしまい敬遠されるのではないでしょうか。

しかし、日本の直接海外投資の推移を見ると、2004年以降に直接海外投資が伸びてきたのですが、日本銀行による「2010年の国際収支(速報)動向」を見ると、2009年からの世界経済の減速とともに急速に減少しています。

それは世界的な傾向でもありますが、もともと、欧米と比べ、対外直接投資も、海外からの日本への対内直接投資も極めて低い日本です。それをあわせて考えると、決して日本の企業が産業空洞化への道をまっしぐらに突き進んでいる姿は見えてきません。直接海外投資

ちなみに2006年末の海外投資残高ランキングでは、日本は先進国中第11位にすぎなかったことをあわせて考えると日本はまだまだ本格的なグローバル化には到達していないと言えそうです。逆に言えば海外進出の機会を円高が千載一遇のチャンスをつくってくれているのです。そんなチャンスを利用するもしないも経営者の考え方次第でしょう。
図録▽主要国の海外直接投資残高 :
日本はもっとグローバル化を推し進めてもいいのではないかと感じます。経営者は、もっと、自らの意思とビジョンで堂々とグローバル化の御旗を掲げ、事業発展に邁進していただければ日本にも活気が蘇ってきます。

あえて言うなら、時々経済学者の人でも、このままでは企業は海外に逃げ出すという人がいますが、逃げ出してもらえばいいのです。日本がその企業を失うのではなく、その企業が日本での信頼も、ひいては日本の市場をも失うのです。今日では、いくらでもその企業が放棄した市場を埋める企業はあります。それでなくとも互いにしのぎを削る競争をしているのですから。海外企業でも、日本市場に深くコミットしている企業は、日本に投資し、拠点を置いています。

政治がもし役立つことがあるとするなら、課題は、グローバル化しようとする企業に、空洞化という言葉で足かせをはめようとするのではなく、また損失が見えている為替市場への介入を行うよりは、国内需要をいかに伸ばすか、新しい産業が伸びることの足かせになっていることはないかと血眼で探し、障害を取り除くことにあるはずです。

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大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

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