電力政策と中東の地政学的リスク

2012年07月29日 16:30

読売新聞の伝える所では、原発比率の決定時期、延期示唆…国家戦略相との事である。

古川国家戦略相は28日、テレビ東京の番組で、政府が2030年時点の原子力発電所に依存する度合いを決定する時期について、「何があってもお尻を切ってということは考えていない」と述べ、当初の8月中から9月以降に延期する可能性があるとの考えを示した。古川戦略相は「8月中の決定は早すぎるのではないかとか、拙速だというご意見も頂いている。丁寧にきちんとやっていかなければ国民の信任は得られない」と説明した。

正直、2030年の話を今決めてどうするんだ? と言うのが率直な印象である。仮に原発から完全撤退と言う結論になり、一方、アメリカ辺りで極めて安全性が高く、しかも、燃料リサイクル迄パッケージで技術開発に成功する様な気がする。その場合、日本の立場は困難なものになりはしないか?

一方、原発から撤退となれば、現実的な輸出余力から推測して中東からの化石燃料を使った発電で代替する事になると推測する。果たして、日本政府や日本国民が考える様に、中長期的に日本が欲しいだけ安定して石油や液化天然ガスを中東から輸入する事が可能なのだろうか? 私は根拠の伴わない「楽観」と捉えている。

今朝のトップ記事でBBCはシリア動乱を、Syria: Opposition in call to arm rebel fightersと伝えている。

反政府組織トップの、Abdulbaset Saydaの言葉、

President Bashar al-Assad should be tried for “massacres” rather than be offered asylum.=アサド大統領は亡命ではなく、殺害されるべきである

が実に生々しい。シリアはリビア動乱の末期に似て来たと思う。そして、問題はアサド政権崩壊後、シリアがどうなるのか? 中東の安定が維持されるのか? と言う事であると理解している。

シリア問題は、中東、アラブ問題の縮図の様な所がある。曰く、

イスラム教vsキリスト教の宗教対立。
同じイスラム教であっても、支配階層であるシーア派vs抑圧、差別されているスンニ派の宗教対立。
シーア派が支配するイラン、イラクがアサド政権を支援し、一方、サウジを筆頭にスンニ派が支配する豊かな産油国である湾岸諸国は反対勢力を支援し、最早、明確に「代理戦争」の状況である現状。
イスラム教vsユダヤ教の宗教対立。
全アラブとペルシャ(現イラン)の対立。
全アラブとイスラエルの対立。
国内Tribe(部族)間対立。

リビアの時の様に欧米がさっさと軍を派遣し、決着出来ない理由、背景がここにある訳である。

シリアの今後は極めて不透明である。しかしながら、一度中東動乱となれば、日本に対する石油、ガスの供給が断絶するだけではなく、原油先物市場は暴騰し、これに連動して液化天然ガス価格も跳ね上がる事は確実である。

日本経済の破綻は先ず間違いないと思うが、こう言う可能性も考慮した上で、原発依存ゼロの可能性とか政府は提案しているのであろうか?

私は、中東へのエネルギー依存度は低ければ低い程良いと考えている。従って、最低でも既存原発の再稼働は早くやるべきであるし、トレードオフとしての原発依存の高まりは止む無しと思っている。

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役

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