スペインがいよいよ財政破綻か?

山口 巌

NHKが伝える所では、スペイン最大の州が政府に支援要請との事である。

信用不安が続くスペインで最も経済規模の大きい北東部のカタルーニャ州が、28日、中央政府に対して、およそ5000億円の支援要請を決め、今後、政府の財政状況が一段と悪化することへの懸念が高まっています。


カタルーニャ州と言ってもピンと来ない読者の方もおられるだろうが、要はバルセロナオリンピックを開催したバルセロナが州都のスペインで最も経済規模が大きく、本来豊かな州である。

そう考えれば、日本で言えば差し詰め東京都が財政破綻と言った所かも知れない

夕張や、類似の地方行政が、仮に財政破綻しても地域行政の失敗として理解して良いだろう。しかしながら、東京であれば日本全体の破綻と受け取るしかない。事実、NHKの記事は下記で終わっている。

スペインでは17ある州の多くが財政難に陥っていて、このほかにも政府に支援を要請する州が出てくるとみられることから、今後、政府の財政状況が一段と悪化し、ヨーロッパの信用不安の行方にも影響を与えかねないとする懸念が高まっています。

スペインの経済規模はユーロ圏第四位であり、ギリシャ等とは比較にならない。そして、問題を深刻にしているのはスペイン国債の格付けがムーディーズでは、現在既に投機的(ジャンク)等級を1段階上回る水準に迄下がっている事である。更に、6月14日の時点で3ヶ月以内の更なる格下げに言及している経緯である。

カタルーニャ州の支援要請を受け、昨日のブルンバーグは、スペイン10年債は下落、カタルーニャ支援要請へ-英独債は堅調 と伝えている。

スペイン10年債はこのまま下落を続け、更には来週辺りにムーディーズが投機的(ジャンク)等級迄の格下げを実行するのではないか?

勿論、世界の投機資金はこれを濡れ手に粟のチャンスと虎視眈々と狙っているに違いない。欧州首脳に取っての悪夢である、「スペインのギリシャ化」が正夢に変わる瞬間である。

スペイン国債を保有する金融機関は一気にバランスシートを毀損させ、「貸し渋り」から「貸し剥がし」に狂奔する展開になる。流動性の欠如から多くの欧州企業が、結果、破綻に追い込まれるのではないか?

勿論、失業問題は重篤化し深刻な社会問題に発展する事は確実である。

結果、EUやユーロは崖っぷちに追い込まれる事になりはしないか?

無論、日本も無傷ではおれない。先ずは、スペイン国債を保有する金融機関が暴落に依る損失を蒙る。

次に、欧州向け輸出が激減する。更には、欧州を主力市場とする中国や中国に雁行する新興産業国の生産が落ちるので日本のアジア向け輸出の下方修正も必然となる。

この辺りは、昨日のアゴラ記事、8月月例経済報告を考える で説明した通りである。

「転ばぬ先の杖」と言う諺があるが、日本政府は9月6日のECB理事会結果、スペイン国債の推移を注視する事は当然として、スペインの経済破綻とこれに依るEU破綻を視野に対策、対応を準備すべきと思う。

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役