ウチナンチュは何を怒っているのか --- ヨハネス 山城

アゴラ

実は、ワシ、沖縄が好きで、よう遊びに行く。友達も何人かおるが、飲むとき結構、気を遣うことがある。「ヤマトンチュ(大和人=沖縄以外の日本人)は、ウチナンチュ(沖縄県人)を、未だに同胞と思ってないでしょ」と思われかねないことが、言葉の端々に出ないか、ということや。


かなり仲良くなると、「今、差別しましたね」と冗談めかしに、指摘してもらえるが、ヤマトンチュにとって些細なことでも、しっかり考えてみると酷いことを言っている可能性がある。今回は、あえて具体例は上げんがな。

さて、橋下市長はんは、なにがなんでも、米軍兵士を風俗店に行かさな気が済まんようやな。「軍人の性暴力の抑止には風俗店が必須」との固い信念。これが兵隊さんに対する侮辱になるという話は、この前書いたな

今回は、この提言、ウチナンチュにもたまったもんやない。ということを書くで。

こういう酷すぎる発言は、あまり分析されることがない。誰かて、投げつけられたウンコを詳細に眺める気にはならんやろ。そやけど、こういう発言を放っておくと、妙なオーラが輝きはじめ、「発言の仕方は不穏当だけど、内容は正しい」などと、言い出すヤツが出てくる。いや既に、出てきている。仕方ないから、ワシが汚物処理をさせてもらうで。

将兵の大部分は性暴力などふるわないという、当たり前の話。これは前に指摘したから、今回は、性暴力に走る少数の異常な兵士の方の話をする。

まず、考えてみるのは、性風俗をあてがえば、彼らは性暴力をふるわなくなるのか、ということや。現状でも、合法違法とりまぜ、性風俗店はある。それなのに、問題行動が絶えない。理由を三つに分けて考えてみる。

  1. 性暴力でしか満足できない、歪んだ性欲の持ち主である。
  2. 衝動的な欲求で、発作的に問題をおこした。
  3. 風俗店の料金が高すぎると思われている。

一つひとつ、考えてみよう。

まず、1.軍と言うのは、どう言いつくろっても、破壊と殺戮を目的とする組織や。ただ、逆の面もあって破壊と殺戮を管理するための組織ということも言える。そやから、所属する軍人個人も民間以上に、自己管理が必要になる。具体的に言えば、戦場のメンタリティーを持ち帰らないことに尽きる。制度やノウハウも充実しているはずやが、網の目からこぼれて暴力や性暴力に走ってしまう個人が出てくる。

「それみろ、やっぱり風俗店の活用を」、と言われそうやが、考えてみてほしい。本物の性暴力を体験できる合法的な店など、ありようがない。そやから、風俗店による抑止は、一番危険な犯罪者には無効という可能性が高い。

次に2.瞬間的な性衝動に風俗店が間に合わへんことは、防ぎようはない。

最後に、3.この問題を解決するには、何らかの形で、軍なり日本政府なり自治体などの公が、補助金を出すことになる。完全に従軍慰安婦制度の復活、おぞましい話や。そして、仮にそれをやったとしても、効果は限定的やろ。

「高いから我慢しよう」という、理性的かつ常識的な判断ができるような人間が、性暴力に走る可能性は低い。見つかれば、軍歴どころか人生丸ごと棒に振ることになる行為は、兵士にとって決して安くはない。それでも、性非行が絶えないということは、上記の1.か2.など、別の問題があるということや。結局、風俗店利用の推奨による異常者の性暴力の抑止効果は疑問やということになる。

さらに、この目的を達するためには、「性暴力の代用となるほどの過激なサービス」が必要になるが、そんなことが合法的に可能とは思えない。はっきり言うが、風俗業において生殖器に直接関連したサービスは全て違法である。

だから、本気で機能させようと思ったら、売春の合法化は最低条件や(上記のようにそれでも効果は疑問やが)。国のあり方自体を変えるような話やから、日本中での実施は無理。結局、沖縄の風俗特区化という事になる。

そこまで極端ではないにしろ、公の「おすみつき」メッセージが出れば、米軍関係者の出入りする店の取締は甘くなる。勢い、全国から好き者が集まり。店も増える。つまり、沖縄に性の防波堤を作るという話や。ヤマトンチュであることを立場上明確にしている大阪市長が言えば、差別ととられても仕方ないやろ。

「性暴力が絶えないから、自前の慰安婦を米国から連れてこい」橋下市長がこういうのなら、沖縄差別にはならない。それなりに、筋だけは通った議論や。そやけど、ウチナンチュがこういう発想を、心から歓迎するとは思えん。何せ、自分の安全のために他人を犠牲にすることに、日本で一番、ゲッソリしているのがウチナンチュやからな。

最古の職業などと言われながら、ほとんどの国や地域で売春が非合法なのは、「人はどんな理由があれ、望まない性行為をしてはならない」という、理想が世界のコンセンサスになっているからや。

たしかに実現は難しいことかも知れん。ただの建前、との批判もあるやろう。そやけど、これを剥ぎ取るようなことを言うんやったら、「女性の人権」てな、耳当たりの良い言葉を口にするのは、やめてほしいもんや。

少なくとも、一部の人間(生まれた地域、貧富の差)にだけ、「望まない性行為を拒否できる権利」に差があることは、どんな意味でも正当化できんやろ。

ウチナンチュの皆さん、すんまへん。なにせ、深く考えない男ですから。大阪人皆で、こんなやつを選んだことを反省して、きっと次は落とすと思います。これからも、あたたかく迎えてくれんかのう。

ヨハネス 山城
通りがかりのサイエンティスト