科学こそが世界を前進させる --- 岩瀬 大輔

2013年06月11日 10:08

チームラボの猪子寿之氏にはじめて会ったのは、2007年のことだった。パネルディスカッションに登壇する彼のぶっとびぶりに一目ぼれして、終わってから突撃した。

「猪子さん、凄いですね。お友達になってください。ベンチャー投資家からのオファーが殺到していませんか?」
「いや、なんかぁ、僕の言ってること、訳分からないみたいで、誰も来ないっすよ」

これが最初の会話だった。


初めて本郷のオフィスに行くと、1時間待たされた。皆玉突きで、1時間待たされているようだった。
「谷家さん、凄い人に会いました!」 そういって、ライフネットの投資家である谷家さんを連れて行った。谷家さんと二人で、また1時間待たされた。あぁ、この人は偉い人かどうか分け隔てないんだな、と妙に感心した覚えがある。

ライフネット生命が開業してからは、アドバイザリーボードの委員に就任してもらった。生命保険会社のアドバイザリーボードに猪子さんを受け入れるとは、出口もなかなか懐が深いと思ったりもする。90分のミーティングの、だいたい残り30分のタイミングで颯爽と登場して、鋭いことを3つくらい語って、颯爽と帰っていく。そんなイメージだ。

猪子さんは、いつも世界のちょっと、いやずっと先にいる。

生命保険業界については、「生命保険は残された人へのラブレター、映画を創りましょう!」と提案してもらったが、当社が踏みとどまってしまった。もったいない。

軽井沢インターナショナルスクールについては、「軽井沢に学校作るなんて、発想が古すぎますよ!いまだったら、秋葉原に創るべき!」とアツく語っていたが、さすがに秋葉原インターナショナルスクールは、ポップすぎないだろうか。

それから朝まで生テレビに出て、その豪快な立ちふるまい、皆が語りたがらない、きれいごとを排した本音を切り口鋭く語る力、そして未来を見渡したビジョナリーとしての発言で、瞬く間に、有名人になってしまった。情熱大陸に登場したときは、Twitterのタイムラインが猪子支持一色で染まったことを覚えている。

前々週には友人の結婚式で同じテーブルだったり、パーティで一緒だったりと、最近は何かとよく顔を合わせるようになったが、先週の土曜、NHKの公開収録で再びご一緒して、示唆に富む発言を聞いた。

「結局、いつの時代も、世界を進歩させてきたのはすべてテクノロジーでありサイエンスであって、文系の学問じゃないんですよ」

この言葉が特に胸に響いたのは、自分が最近、2500年前に書かれた中国の政治本やギリシャ悲劇を読みながら、うんうん、そうそう、人間に関する洞察が深まるものだ、と思っていたから。2500年前のサイエンスの本を読んで示唆を得ることはあまりないだろうが、政治であったり文学であったり哲学であったり、およそ文系の学問であれば、得られるところは多い。

少し乱暴にまとめるならば、文系の学問は我々人間について内省を迫り、人間社会についての洞察を深めていくことを目的としているのに対して、理系の学問は将来を見据え、未来を創ろうとしている。そんな理解を整理できたことに感謝しながら聞いていると、3時間連続の公開収録中に発した猪子氏の言葉が会場を再び笑いに包んだ。

「もう一回、トイレ行ってきてもいいですか? いや、今回は、本当にトイレだから。さっきはタバコ休憩」


編集部より:このブログは岩瀬大輔氏の「生命保険 立ち上げ日誌」2013年6月11日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方は岩瀬氏の公式ブログをご覧ください。

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