4Kテレビの2Kテレビと8Kテレビとの共存 ── 最近の考察

西 和彦

先日、NHK放送技術研究所2013年の公開展示を見学してきた。8Kのテレビシステムのオンパレードであった。常々4Kテレビは売れると言っているので、8Kはどうなのかを、「本家」、「元祖」、「家元」の所に行って見極めたいと思ったのである。


結論から書くと、8Kテレビは凄かった。しかし、やがて4Kから8Kに全面的に移行する時代がやって来るのかというと、それは無理なような気がした。つまり、私が感じたことは、2Kと4Kと8Kのテレビは共存するのではないかということである。そのヒントは20世紀のフイルムシステムにある。

8mmのフイルムシステムがあった。家庭用。16mmのフイルムシステムは報道用。35mmのシステムは劇場用。70mmは2倍にワイドになった劇場用。IMAXは35mmが4倍になったIMAX劇場用である。これらのフォーマットは35、70、IMAXについては共存している。ほとんどの映画劇場は35mmと70mmを掛けることができた。大都市や娯楽地にIMAXの劇場があった。今ではフイルムからデジタルに興業用のシステムは移行して、2Kから4Kに移りつつあり、IMAXもデジタルIMAXになりつつあるが、この20世紀後半のフイルム映画の世界でのメディアの棲み分けが、21世紀のデジタルの世界にも起こるのではないかと予想したのである。

私は4Kの意義を2Kの4倍とは捉えていない。4Kのフォーマットは、初めてデジタルがフイルムを超えたと言うところにその意義があると思う。それが理由で、2Kを拒否したハリウッドが映画製作を4Kデジタルに切り替え、コダックと富士フイルムも35mmのフイルムをもう作らないということなって、映画製作のデジタル化が完成しつつあるのである。

つまり、私の考えるシナリオは、昔のNTSCをデジタル化した720と2Kと4Kと8Kは並行して共存するということである。そして、その流通のフォーマットは4Kのデーターフォーマットが多くなると言うことである。

4Kが35mm。4Kをワイドレンズで引き延ばしたのが70mm。8KがIMAX的な表現フォーマットになるということである。4Kの信号をダウンスケールして2Kにしたり、4Kの信号をアップスケールして8Kにするようになるというのが、将来的な利用の形態になるのではないかと考えている。2Kは32インチ、4Kは60インチ、8Kは100インチ以上のスクリーンになると言うことである。

私は来年から2Kと4Kを取りあえずサイマルキャストし、ゆくゆく、2020年ぐらいには4Kだけに切り替えるのがよいと考えている。どうしても必要なら8Kもやればいいと思うが、帯域があるなら4Kのモアチャンネルのほうを選びたい。各局が自社のチャンネル編成で4K8Kを切り替えが出来るように出来ればよい。

技研公開の展示の大部分が8K関連であったが、次は2Kテレビ、4Kテレビ、8Kテレビが共存するシナリオの開発をお願いしたいと希望する。

西 和彦
尚美学園大学大学院 芸術情報研究科 教授