「現金は王様」という投資格言

2013年09月24日 09:00

金融危機になれば、現金の価値は高くなる。なぜか。

金融危機に見舞われれば、不動産業者は、販売不振に陥る一方で、銀行借入等の資金調達が困難となり、資金繰りの急激な悪化に見舞われる。問題は、在庫が膨らむ中で、その在庫を維持する資金が不足することだ。解決策は一つしかない。安くてもいいから、在庫を可及的速やかに処分して、現金化することである。


苦境にある不動産開発業者から売れ残りの在庫を著しく安く買い取って転売すれば儲かる。安く買える理由は、現金で買い取ることである。資金調達が困難なのは、買う側も同じだ。買う側が簡単に資金調達できる状況ならば、売る側も資金調達できる可能性が高いわけである。

売る側は債務の弁済期日に追われているのだから、即時に売却代金を決済できることが重要な条件になる。買う側として、そのような売る側の条件を満たすためには、既に現金を用意できていることが必要である。この現金を用意できていることが安く買う力になるのだ。

こうして、金融危機では、現金をもっていることが、収益源泉になる。不動産に限らず、金融危機では、何でも安くなる。そこを現金で買うのが投資だ。これが「現金は王様」という投資格言の意味である。

これまでは、収益を生まない現金の保有は、極力小さくすべきと考えられてきた。しかし、現金には、危機的状況において、急激に買う力を増すという意味で、別の魅力がある。つまり、投資対象として現金の魅力は、静態的なものではなく、動態的に状況によって変化するものなのだ。

従来の投資の理論的枠組みでは否定されてきたが、機会があるときだけ投資して、機会がないときは現金を保有しているという投資方法もあるのである。いまどきは、世界のどこかで危機がある。危機は常に機会である。様々な機会の生起に従い、機会があるときだけ現金から投資に向かう、そのような投資方法を、片仮名でオポチュニスティックという。片仮名を使う必要もないので、機会主義といってもいい。

一般に、オポチュニスティックな投資は、絶対価値戦略になる。従来の投資は、割高・割安という判断に基づく相対価値戦略である。相対価値評価のもとでは、市場自体がどんなに割高でも、半分の銘柄は、相対的に割安になってしまう。ところが、絶対価値評価のもとでは、市場自体が割高になれば、そこには、もはや投資価値がない、つまり機会がないということになって、その市場から出て行く、即ち現金化することになる。その現金は、別な市場に価値を見出せば、そこへ動くが、機会を見出さなければ、現金のまま留まることになる。

よく考えてみると、現金が機会を見出し、機会の生起・消滅にしたがって移動していくということ、このようなオポチュニスティックな現金の動きのほうが、より原初の投資に近いのであろう。

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
HC公式ウェブサイト:fromHC
twitter:nmorimoto_HC
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