フェアな視点から法人税率の引き下げは不可避 --- 岡本 裕明

2013年09月10日 11:39

消費税を上げる議論をしている最中に法人税を下げる議論はある意味矛盾をしているかもしれません。国民からお金をむしりとり、企業にはいい顔という風に捉えられるからかもしれません。ただ、話はそう簡単ではありません。今日はこのあたりを考えてみましょう。

日本の法人税は復興特別法人税を別にして35.64%と現時点では世界の主要国ではアメリカに次いで高い国であります。そのアメリカ、現在の連邦法人税35%を28~25%に下げることを提案しています。この提案が通る可能性はあると思います。なぜならば、製造業の国内回帰を目指しているオバマ大統領としては製造業において25%というかつてない魅力的な税率を打ち出すことで米国企業の複雑怪奇な節税スキームに一矢を報いる形となるからです。


事の発端はアップル社、グーグル社、更にはスターバックス社などアメリカを代表する企業がせっせと節税対策を行い、本来アメリカに落ちるはずの税金が他国に流れていたという事実が議会を通じて議論されたことであります。そこからのアメリカの動きは早かったと思います。そして7月末には上記の提案がオバマ大統領からなされたわけです。

話の伏線はイギリスの税率低下があるかと思います。同国の場合、つい2年ぐらい前までは28%の税率だったものを再来年には20%まで段階的に引き下げます。これは欧州で法人税引き下げ競争が起きており、EUという枠組みにおけるひとつのパラドックスであります。モノや人の移動が自由なEUの枠組みにおいて税の徴収と国の財政は各国次第となればEUの加盟国は自国を魅力的な投資対象国として美しく見せる必要があります。企業が投資をするかどうかの尺度の重要なポイントのひとつは法人税率であることは自明ですから各国が競うように法人税率を下げるのであります。

では日本。多分ですが、財務省の役人は怖いのだろうと思います、税率の引き下げによる税収減が。それは役人がビジネスのリスクを取れないといった方が正しいかもしれません。欧米の一部の役人はある意味経営者的センスがあるようにも思えます。ところが日本の役人は固定概念にとらわれ過去に基づく推論で物事が進んでいきます。

会社は誰のものでしょう、という話は以前しました。従業員、経営者、そして株主がその対象となるのですが、株主が相応の持分と権利を所有することに異議はないでしょう。その株主は誰でしょう? いまや、外国人投資家の売買が日本の株式市場で半分以上を占め、当然ながら株主が外国人であるという事実はあまり声高に言われることはなかった気がします。

企業は株主の声には慎重に検討をせざるを得ません。ソニーがアメリカのヘッジファンド、サードポイントからエンタテイメント事業の分離上場の提案を受けましたが、そのサードポイントの持分比率は一桁台の%であります。つまり、外国人株主の声は別に過半数を持たなくても極めてその影響力は大きいということを考える必要があります。

次に企業に国境はない、という点です。極端な話、日本に本社を置くより韓国に置けば法人税は24.2%ですから実に11.44%ポイントも節税できるのです。株主から見れば「不要な税金」を払っていると指摘を受ける可能性はないとはいえないのです。

一方、日本は7、8割の企業は法人税を払っていません。だから、麻生大臣は法人税を引き下げる意味がない、と発言しましたが、それは逆さまでほとんどの企業が払っていないなら、法人税を下げてもインパクトは少ないだろう、というのが答えなのです。言葉というのはどちらにでも取れるという典型的な例です。

残念ながら日本が今の法人税率を維持することはほぼ不可能です。このままでいけばあと10年もすれば外国企業だけでなく日本企業の本社移転ラッシュが起きる可能性すらあるということを頭の隅に入れておいた方がよさそうです。とはいえ、世界の法人税下げ競争にそのまま巻き込まれるのではなく、フェアな形で税を徴収し、税が効率よく使われるという仕組みを作り直すことが大切でしょう。安倍首相の更なる活躍に期待しましょうか。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年9月10日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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