デフレ状態続く超低金利は激烈な金融業界大変革の序章 --- 岡本 裕明

2013年10月11日 12:17

デフレ脱却もありうるかも、という指標がぽつぽつ見え始めています。むしろ、実生活では食料品や外食代が上がるなど物価上昇を「実感」している人も増えてきているのではないでしょうか?

事実、黒田日銀総裁はデフレ脱却に自信と確信を持っているようです。マイナスからプラスに転換する可能性は高いかもしれません。需給ギャップは一部国内向け製品を海外に振り向けるなどしていけば更に改善していくとは思います。2%のインフレはそう簡単な目標ではないと思いますが、プラスサイドでの安定は近いうちに達成するかもしれません。

その中で「デフレが止まらない」業種もあります。そのひとつが銀行の金利。


住宅業界では人件費や材料費の高騰と手持ち工事量が増加していること、更には土地代が底打ちし、上昇トレンドに入りそうなことから住宅の駆け込み需要が発生しています。勿論、消費税増税前の駆け込み需要もあります。結果として2013年度の新築住宅の供給戸数は90万戸を軽く超え、2008年の水準までリカバーすることになりそうです。そしてその住宅販売を後ろから支えているのが銀行の金利競争であります。

銀行は店頭表示金利と優遇金利という二本立てで金利を表示しています。優遇金利とは「店頭表示金利からある条件を満たせば金利を割引します」ということであり、その中でももっとも優遇されると最遇金利が適用されることになります。たとえば某都市銀行の固定10年ローンは店頭表示が3.75%ですが、最優遇金利になると1.70%おまけされて仕上がりが2.05%になります。

なぜ金利をおまけしてまで貸し出し競争をするのかといえば銀行の本業である「金貸し」に対して、昨年あたりまで国債で手堅く低リスクで稼ぎまくっていたことへの反省、そして、イオンやソニーなど新興のネットバンクが常識感を打ち破るサービスを提供し始めたことが影響していると思います。ご記憶にあるかと思いますが、かつて、日本の銀行ほど横並び意識に激しいところはなく、サービスに差はほとんどないとされてきました。

ですが、銀行も預金獲得からローン獲得、新規貸出先確保まで必死の形相です。半沢直樹のドラマで5億円の新規融資が決算対策でどうしても必要だというストーリーは今でも普通におきています。特にこのところ、消費税上げの前の駆け込み需要を狙ったローン獲得競争がピークを迎えています。結果として金利は最優遇金利という名の大幅割引が徐々に拡大しており、「借入れ金利のデフレ」が生じているのです。

では、銀行は儲かるのでしょうか? 調達コストの一つである定期預金の金利は金額によって違いますがざっくり0.1%程度。ですから、最優遇金利でもまだ銀行の利ざや(スプレッド)は相当残っているようにみえます。ただ、ご承知のとおり銀行も大きな固定費用がかかる組織です。給与も高いし一流の場所に店舗を構えています。ですから、この程度の利ざやはなくてはやっていけません。むしろこれ以上下がることになれば銀行経営の健全性について疑問が出てくるかもしれません。

一般の銀行がネットバンクと戦う構図は証券業界がネット取引によって株式売買の手数料が100分の1に下がったことがよい参考例になるかと思います。結果としてそこに残るのはフルサービスを必要とするか、個人がネットで取引を自己完結させることが出来るか、の二つに一つになります。

お金の調達のコストは基本的にどこの銀行も大差ありません。ですから、中間管理コストを下げることで銀行の表面金利は相当の下げ余地はあるはずで結果として日本の住宅のみならず、企業の資金調達を含め、もっと借りやすくすることは可能になるのです。その上、金融緩和で調達コストの金利が下がり、デフレ脱却には逆効果に見える可能性すらありえるのです(金融緩和をすれば調達コストが下がり、貸出先への仕上がり金利は下がる、よって、企業や個人は商品やサービスをより安く提供できたり享受したりできるというシナリオです)。

多分、この金融機関の金利戦争はまだ序幕だと思います。今後、5年から10年という期間の間に日本の金融機関の体系はすさまじく変わる可能性があります。特に地銀と農協、郵貯は身構える必要があるかもしれません。そしてこの金利競争がある限り、本当の意味でのデフレ脱却にはならないのかもしれませんが、これは日本が体質的なリストラを進める重要なステップであるのかもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年10月11日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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