今冬、渦巻く鳥インフルエンザ --- 外岡 立人

2014年01月31日 12:51

(1)中国、H7N9鳥インフルエンザの巨大な第2波が発生

昨年(2013年)3月31日、中国政府は突然、新規鳥インフルエンザ(H7N9)で感染者と死者がでたことを発表した。それは新華社通信を経て世界に広まり、世界の専門家の間ではパンデミックの再来を予見させる事態となった。

その後H7N9鳥インフルエンザにより東中国、すなわち浙江省、上海、江蘇省を中心に131人の感染者と32人の死者が5月上旬までに発生した。


6月以降は気温の上昇と共にウイルスの人への感染頻度は低下し、7月から9月には感染者の報告はほとんどなかった。

H7N9鳥インフルエンザの特徴は、鳥に対しては低病原性のために症状は起こすことはないが、人に感染すると重症化および死亡する例が多いことである。

ウイルスに感染した生家きん市場の鶏に触れたり、購入した市民、さらには業者が感染する例が多いとされているが、明確な感染源は未だ謎に包まれている。

生家きん市場や家きん処分場近くに住んでいたことが原因で発病し、死亡している例もある。ウイルスの感染力の強さを感じさせるが、発生はあくまでも散発的である。

中には全く家きんや市場と無関係に発症した例もある。

ウイルスは未だ人人感染は起こさないと考えられており、発病者周辺からの感染者の発生は数件とされる。
 
WHOのリスク評価では、持続的な人人感染の事実は未だ観察されず、人へのウイルス感染は家きんを介したものと考えられ、現時点では地域内での流行の危険性は低い、とされている。

 
H7N9鳥インフルエンザの感染者数は夏には著明に減少したが、気温の低下する秋から冬にかけて再び再流行する可能性が専門家およびWHOから指摘されていた。気温の低下がウイルスの感染力を高めると推定されていたからである。

 
それは10月に入って2人の感染者が、再び浙江省で発生したことで確かに裏付けられた。
 
そして感染者は12月に入って、南部の広東省でも多数発生しだした。
 
広東省は春には感染者は出ていなかったが、もともと各種インフルエンザやSARSが発生した地域でもある。
 
広東省は渡り鳥が多く飛来し、また野生動物を摂食することで、新型ウイルスが発生しやすい環境にある。
 
春には感染者は出なかったものの、秋には渡り鳥からウイルス感染を受けた鶏が、地域の生家きん市場を中心に人に感染しだしたものと考えられている。

H7N9鳥インフルエンザは2014年1月に入ってから、さらに広東省や浙江省、江蘇省で感染者を増やし、本稿を書いている22日の時点で70人以上の感染者数となり、昨年春のピーク時を超えつつある。
 
しかもウイルスの感染力は4月まで持続すると考えられ、今後、どの程度の感染者が中国内で出るか予想はつかない。

1月31日は春節(中国での旧正月)のため、その前後の国内の人の移動数は多く、また祝いのために鶏を中心とする家きんの消費量が増大する。

WHOや中国当局はH7N9感染者と死者がある程度出ることは予想している。
 
しかし、ウイルスが変異して人人感染を起こさない限り、事態はある程度楽観できるような態度をとっているように思われる。
 
このようなWHOの対応に、香港や米国の専門家は、ウイルスがいつ変異して人人感染を起こしだすか予想できないから、警戒態勢は十分続ける必要があると警告している。

また補足しなければならないこととして、H7N9鳥インフルエンザウイルスは人に感染して発病するまでの期間(潜伏期間)が、長い場合で2週間近く、そのために中国人旅行者が国内で感染してから、国外の旅行先で発病する可能性がある。
 
実際に昨年末に中国江蘇省からの旅行客が台湾に入国2日後に発病して、2週間ほどの経過で死亡している。
 
今後、このような事例が我が国でも起きる可能性があるが、同時に邦人が中国へ旅行して帰国後に発病する事例も発生しうる。
 
こうした事態の発生をWHOは警告している。
 
我が国で、厚労省や地方衛生当局が、全国の医療機関に十分通知しているか、一抹の不安が残る。

(2)渡り鳥が韓国内にもたらしているH5N8鳥インフルエンザ

1月19日、韓国の中央部の全羅北道のアヒル農場で多数のアヒルが死に、ウイルス検査の結果高病原性のH5N8であることが判明した。同ウイルスはこれまで世界で2度しか検出されたことがなく、高病原性のH5N1ウイルスが変異したものである。

H5N1と同じく鳥が感染すると大多数が死ぬと考えられているが、人への感染性と病原性については不明となっている。しかし、H5N1の変異型であることを考えると、人へは感染しずらくても、感染すると高い致死率(50%以上)を示すと推定される。

このH5N8鳥インフルエンザウイルスは、発生農場近くのシベリアからの渡り鳥であるカモの死骸からも検出されていることから、渡り鳥がウイルスをシベリアから運んできたものと考えられている。それを裏付けるように、数日間の間に多くのアヒル農場で発生が報告されだしている。日本近くの済州島でも渡り鳥が多数死亡している。

2011年に韓国では渡り鳥から多くの農場の家きんがH5N1鳥インフルエンザに感染しているが、我が国でも九州や和歌山県などで多くの養鶏場の鶏や渡り鳥が感染している。

韓国内で現在H5N8鳥インフルエンザが広がっているが、我が国でも近日中に発生することが予測される。人への感染力と病原性が不明なことが医学的には大いに気になるところであるが、国の関係機関は情報を速やかに公表し、一般社会への啓発に努める必要がある。

外岡 立人
医学ジャーナリスト、医学博士


編集部より:この記事は「先見創意の会」2013年12月28日のブログより転載させていただきました。快く転載を許可してくださった先見創意の会様に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は先見創意の会コラムをご覧ください。

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