「人間臭さ」がこれからのビジネスのキーワード --- 岡本 裕明

2014年03月19日 12:11

バンクーバーの目抜き通り、ロブソンストリートを今歩くとあちらこちらに「for lease」の看板がかかっています。数年前も一時期空きスペースが多くなり、その後が心配されたのですが、一旦それも収まったと思った矢先でした。


この目抜き通りの家賃はもちろん東京やニューヨークのそれとは比較できないのですが、ちょっとしたファッション関係のお店やレストランは月に150万円という支出を余儀なくされます。その一方、人口が少ないカナダにおいて繁盛店でも売り上げはさほど上がらず、結果として家賃の売り上げ比率は相当なレベルに達します。多くのリーテーラーはそこまでしてアンテナショップを持つ意味がないと理解し始め、今や、かつての高い家賃に胡坐をかいていた大家は家賃を下げてでもテナントを募集すべきか大いに悩んでいることでしょう。

ロブソン通りとサーロー通りの交差点といえばその中でも最もにぎわいのあるエリアですが、この交差点の四つ角のうち二つはコーヒーショップでした。しかも両方ともスタバ。ところが一店は二年前に閉店し、そのあとに入ったのがライバル店のアルティジャーノ。もともといつも行列が絶えないスタバが閉店したのは何杯コーヒーを売っても家賃で消える、ということでした。そこにアルティジャーノはアンテナとしての絶好の機会が到来したと思ったのでしょう。ですが、オープン後の店の入りはスタバ時代よりも大きく劣るように見えました。そしてわずか1年ちょっとで閉店となってしまったのです。

いわゆる路面店の勢いがなくなった理由はいくつかあります。

一つはショッピングモールにとってかわったこと。これは駐車場が完備し、雨にも濡れないし、歩く距離が短くてもより多くの店を覗くことができる点で路面店に比べて圧倒的優位性を誇っていることがあります。

二つ目はリーガル的な交渉を経て極めて複雑なリース契約を結ばねばならない点は路面店もモールも同じですが、路面店の場合には大家の個人的意向が強く働き、モールのような汎用型リース契約ではない点が不自由と感じるテナントが増えてきたことでしょうか?「あそこの大家の要求は理不尽である」なんていうことはたまに耳にします。

路面店の特徴として洋服、靴、バックなどファッション系の店が主流であったのですが、それらの店はモール、ネット販売などその販売手法を変えてきており、不要で高価な家賃を払い、暇そうにしている従業員に払う給与をいかに少なくするかまさに喘いでいるということでしょうか?

更には街中に新しい建物がどんどん建設され、その一階部分にはリーテールを抱き込んでいることもあり、店舗物件の絶対供給量が増え、テナント側にとって選択肢が増えたということもあるでしょう。

こうなってくると一市民として感じるのは「街がつまらなくなる」ということだし、起業家としては「ではいったいどんな商売が儲かるのだろう」ということになります。

いろいろ考えたのですが、人が求めるものは案外人間臭いところではないか、という気がしています。昔、なぜ、東京に行くのかね、と聞けば「田舎の人間関係がうざかった」と答えたはずです。その東京に住めば休みの日には一言も会話をしないでパソコンとコンビニで一日が終わる人も多いのです。上野千鶴子氏も指摘しているように男は老人になっても寂しい思いをするくせに一人で居たがるのであります。でも本当に一人で居たのか、といえばそんなはずはないのです。

サービス産業というのは人間と人間の触れ合いがあってのビジネスです。銀行こそ、窓口に行く機会はほとんど無くなりましたが、スパにしろ、美容室にしろ、コーヒーショップにしろ、ホテルにしろ、フィットネスにしろそこに同じものを求めて人が来るのです。日本の居酒屋の何が楽しいかって、ワイシャツの袖をめくってでかい声でワーワーやっているサラリーマンが妙に恋しくて行ったりするものなのです。何が好きであんな狭いカウンターの席で牛どんをかきこまなくてはいけないかといえばあの人もこの人も同じ牛丼を食べているから、と考えたらこれも一つの人間臭さなのかもしれません。

となればビジネスとはモノを売るから、コミュニティを売り仲間を作るところというスタイルに変遷していくかもしれません。そこに行けば同じような人がいるから買いに行く、ということです。例えばカナダのルルレモンというスポーツウェアの店はなぜ流行るかといえば店員がルルレモンのファッションで如何にも今からヨガやりましょう、というスタイルで接客するからでしょう。そこに集まる人はナイキショップの顧客層とは絶対的に違う一種のクラブのような空気すらあるのです。

ビジネスとはもはや、モノを売る、フードを提供する、一定のサービスを代金と引き換えに提供するというスタイルから確実に進化しつつあります。それはネット販売との差別化を図るための必死の努力であるとも言えます。最後に日本の百貨店は今、変質できる最後のチャンスだと思っています。あの売り方はライフスタイルを提供していないという致命的な欠陥があると思います。デパートは主張しなくてはいけませんね。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年3月19日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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