先日まで日韓首脳会談はあり得ないと主張してきた韓国が「環境が整えば、日韓首脳会談もあり得る」(韓国大統領府)と態度を変えてきた。
韓国側の変身は3月14日の安倍晋三首相の河野談話」見直し否定発言を受けたものと一般的には説明されているが、実際は米国側からの圧力があったことは否定できない。もちろん、日本側にも言えることだろう。
オバマ米政権は、同盟国の日韓が過去問題で対立し、肝心の北朝鮮問題への対応で歩調が乱れることを懸念してきた。そこでオバマ政権はまず、「条件付きではなく、いつでも首脳会談の門は開かれている」といってきた安倍首相に電話し、「河野談話」見直し否定発言を求めたはずだ。そして韓国に電話を入れ、安倍首相の「河野談話」見直し否定を評価して、首脳会談に応じるように説得した、というのが真相に近いのではないか。
オランダの核安全保障サミット開催前まで日韓両国の政治家に大きな失言がない限り、日韓首脳会談は実現できる可能性が高まったと見てほぼ違いないだろう。
日韓首脳にとって最大の問題は、首脳会談実現とその成果をどのように国内向けに説明するかだ。靖国神社参拝、「河野談話」と「村山談話」の再考をちらつかしてきた安倍首相は韓国大統領と会談し、「正しい歴史認識」を要求する韓国側に間違ったシグナルを送れば政権が吹っ飛ぶ危険性すら出てくる。韓国側の主張を100%飲み込んで歴史問題への謝罪を表明するわけにはいかない。
一方、朴槿恵大統領にとっても安倍首相から靖国神社を今後参拝しないといった言質をとれば万々歳だがそうはいかないだろう。そこで次善の成果として、戦争時代の蛮行に対する安倍首相の謝罪表明、できれば慰安婦問題へ明確な謝罪表明を勝ち取れば韓国側としては首脳会談は成功ということになるだろう。
米国は日韓首脳会談のお膳立てはできるが、首脳会談の内容まではもちろん干渉できない。それは安倍首相と朴大統領の責任だ。国内向けに首脳会談の成果をどのように説明するか、首脳会談まで時間があるから側近と知恵を絞って考えていただきたい。
隣国の首脳同士が定期的に会談し、意見の交換をすることは理想だが、日韓の場合、政権就任から1年が過ぎてもそれが実現できなかった。特に、韓国側は相手側を批判し、“告げ口外交”を展開してきた。そして首脳会談が実現できない主因は全て相手国側にあると主張してきた経緯がある。
だから両国首脳会談が実現した場合、日韓首脳が笑顔で会合することは容易ではないだろう。しかし、そこは職業政治家同士だ。何もなかったように笑顔で会合できると信じている。ただし、首脳会談後の国内向け記者会見では、両首脳は慎重に対応し、報告にズレが生じないように注意すべきだ。
オランダで最初の首脳会談が実現できれば、次回からは力むことなく自然に意見が交換できるはずだ。両首脳にドイツ語の諺を贈り、首脳会談の実現とその成功を祈りたい。
Aller Anfang ist schwer.(何事も始めは難しいものだ)
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年3月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。