「STAP細胞」騒動を企業経営の側面から批判する --- 窪田 博

2014年04月18日 10:34

理研と小保方氏のSTAP細胞騒動は、研究者、マスコミ、評論家の夫々が百家争鳴の議論をなされているが、どの意見にも釈然としないので一文を投稿したい。

小保方氏は期限付きであれ理研が雇用した従業員である。雇用した理由は世界をうならせる技術を保有したから、若年にも関らず破格の処遇を行ったことは歴然である。それが全く思惑と違った結果を招来した。


民間の大企業の研究開発者が、例えば常温超伝導の技術を開発し論文発表したが、論文にはその実現の疑わしい事項が発覚した。民間経営者トップは如何に対処するか? かつて名経営者の誉れ高い松下幸之助氏、本多宗一郎氏、盛田昭夫氏、土光敏夫氏、そして存命する数多の民間経営者ならどのように処理するだろうか?

冒頭から従業員の論文を取下げるとか不正だと騒ぐだろうか? 民間と違い国民の税金で行われた研究である。当然、理研及び小保方氏は国民に対し説明義務を免れない。まず外部から指摘された論文の不手際は、理研内部の関係研究者が話し合えば10日間もあれば明確になる筈である。

この段階で「ご指摘の事実はその通りです。カクカクシカジカがこのようになっています。従って科学論文としての信憑性が失われましたから、STAP細胞が実在するか再度実験し証明します」と述べるに留め、特にSTAP細胞の存在と更なる発展に望みを繋ぐ難病患者の皆様や、再現に取組まれた方々には無用の手数をかけたさせた点を謝罪し、「実験スケジュール等は追って発表します」と素早く初動発表する。

第三者委員会を立ち上げゴタラゴタラ騒動にする必要はない。本件の本質はSTAP細胞が実在するかの一点である。全くもって逆の手順を踏み大騒動にしてしまった。マスコミは騒動を好むハイエナであって時には良識も示すが、大抵は有る事、ない事も平然と推測でぶち上げる習性は多くの国民が知る所である。小保方氏の会見においてもマスコミの諸氏が、どうでもよい興味本位の質問や、回答した事柄をクドクド繰り返す質問にもハイエナの一端を垣間見る。マスコミは恰好の餌食にありついたのである。

さて騒動の中で世間は小保方氏の実験ノートの粗雑さを知りやり玉にあげるが、民間のメーカーなら研究開発費を算出するために、作業時間と作業内容を記載する日報は不可欠である。日報の作業内容から問題点や、無駄な時間がないか管理者はチェックし、助言ないし作業手順の変更を指示する。

しかしながら研究開発の技術者は概して原価意識に乏しく、会社のルールに従わせ難い人種が集まる。ルールにガンジガラメに縛っては斬新な発想を阻害する意識がなきにしも非ずである。それでも最低限のルールに従わせ、原価意識を目覚めさせるのは技術管理職の役目である。日報を書かない研究開発者には賞与査定を悪くするなど、書かざるを得ない仕組みを導入している。

一般論として税金を使う役所に原価意識はない、または民間に及ばない。その証拠に予算を消化するをよしとする風潮が今日まで幾多発覚している。もともと原価意識の乏しい人種が集ま易い研究者の集団が理研組織であっても不思議はない。従って見事に実験ノートを書かせ管理する仕組みがないと、理研は自ら世間に露呈したのである。

日報であれ実験ノートであれ、出来栄えは通常個人差が著しいし、上司のチェック能力もバラつきがある。これらを一定のレベルに揃えるのは管理の仕組み構築であり、絶え間ない教育しかない。

そして日報とか実験ノートとかに限らずプロとして仕事をする限り、すべからく発生する書類と整理及びその保全は必須である。プロとしての仕事の何たるかを理解しないまま、研究しか念頭にない小保方氏の未熟さと、理研の研究管理体制の不在、及びトップを含む理研組織の幼稚なリスクマネージメントが大騒動にしてしまった。

要するに研究を離れ「と金」に成り上がった研究者や天下り官僚が、組織運営する日本の研究体制そのものを見直し、しかるべき研究体制を構築する点は理研だけの問題に留まらない。この度の理研は組織運営能力の不在を露呈して発生した騒動ではあるが、これは氷山の一角に過ぎない。

なおマスコミや評論家はさておき、それなりの研究者なら小保方氏の会見について、証拠がないなどの枝葉末梢に捉われず、STAP細胞実在有無の実験結果を待つ。また民間の研究開発日報や研究機関の実験ノートは、その出来不出来を問わず迂闊に公表できるものではない。一流の研究者なら特許出願に差し支えると知らない筈はない。

最後に小保方氏は刑事事件上の犯罪者なのか? もしSTAP細胞が全く実在しないなら、小保方氏は論文の捏造により、理研に回復し難い信頼失墜をもたらせた。法律の事は解らないが、これは損害賠償に値する民事事件が関の山である。今回のケースでは理研にも従業員の管理責任を問われ、一筋縄にはならないと予測する。

またSTAP細胞が存在が証明された時は新論文を出稿し、小保方氏の未熟ゆえのミスと認め、小保方氏の反省と謝罪を受入れよいのではないか。小保方氏は2度とミスはしないと期待できる。若い研究者を一度のミスで葬り去ることは国策上からもよろしくない。但し理研は国民の税金を使い研究を行う限り、研究管理体制の改善を公表し実施する義務は免れない。 

窪田 博
産業用電子機器の元研究開発技術者
ブログ

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