米民主党寄りガイトナー回顧録に、今さらモニカの暴露記事 --- 安田 佐和子

2014年05月13日 21:10

5月12日の朝、出勤前にCNBCを観ていたら懐かしのティム・ガイトナー前米財務長官が出演してました。本日発売の回顧録「ストレステスト—金融危機への考察(Stress Test : Reflections Of Financial Crises)」のプロモーションです。インタビューに応じたのは、金融危機の裏側に迫る「リーマン・ショック・コンフィデンシャル(Too Big To Fail)」を執筆したニューヨーク・タイムズ(NYT)記者で、現在は朝番組の司会を務めるアンソニー・ロス・ソーキン氏です。

英国の製薬会社2位のアストラゼネカを買収する米ファイザーを始め、足元で本社移転を通じ法人税の節税に取り組む企業が増加しつつある現状、インタビューの注目は法人税制改革が挙げられました。2012年の同改革に反対した米議会を槍玉に上げ、ガイトナー氏は「法人税制改革は、部分的にこうしたリスクを解決するため、国内投資を一段と推進するシステム創設を目指していた」と振り返ります。ちなみに、2012年に法人税率を35%から28%への引き下げ・税制抜け道の廃止、米国企業による海外投生産移転費用の税控除廃止、海外から米国内への移転に与える税制優遇制度の設置──などが含まれていました。

未曾有の金融危機に陥ったアメリカを救うべく、最前線に立った男の回顧録。本題はさておき発売当初から、噛み付いた方がいらっしゃいます。ポリティコによると、2012年大統領選で共和党候補ミット・ロムニー氏の陣営についたグレン・ハバード元米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長がその1人で、「嘘つきだ!」と糾弾。なぜなら回顧録では、ハバード氏が財政赤字削減に向け増税に賛成したとの記述があったから。当時、オバマ大統領が超党派で発足させた財政責任改革委員会(共同委員長はアラン・シンプソン氏、アースキン・ボウルズ氏)の赤字削減案に、他ならぬオバマ氏自身が支持せず、ハバード氏が不満を漏らすなか増税を必要とするガイトナー氏の意見に「もちろん」と応じたんだとか。当時のロムニー陣営との政策に反故が生じるだけに、ハバードさんはしっかり否定しなければならなかったというワケです。

もう1人は、不良資産救済プログラム(TARP)のニール・バロフスキー元特別監査官。この方は自身で「救済(Bailout)」と題した回顧録を2012年に出版し、ガイトナー氏を「Fワードを使用したかつてない財務長官」と表現していましたっけ。財務長官を辞任するまでお役所勤めに徹して来たガイトナー氏とウォールストリートの密接な関係を批判した1人でもあります。ガイトナー氏の回顧録出版に際しては、わざわざリンクトインでもガイトナー氏の回顧録に対し抗議文を掲載してましたよ。溝の深さが、うかがい知れますね。

マーク・カーク米下院議員(イリノイ州選出、共和党、2010年から米上院議員)が米中関係委員会委員として2009年に訪中した際、中国当局者に米国債を購入しないよう働きかけていたとは驚きました。回顧録によると、カーク米上院議員は「政府支出はデフォルトを招き、FRBが金融政策を通じハイパーインフレをもたらす」と警告していたんですって。これにはガイトナー氏、著書で「妄想に基づく不安」を煽ったと断じたほか、「国益を損ねる行為であり、外遊中に自国を批判しないとの尊い政治規律に反する」と憤りを隠していませんでした。ちなみにガイトナー氏は、2010年に初めて北京に赴いたときに中国大使館の高官からそっと耳打ちされ、カーク米議員の発言を知ることになったといいます。

カーク議員、2012年に心臓発作で倒れ翌年政界に復帰。

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(出所 : kirk.senate.gov)

カーク議員といえば、2009年に「中国は米国のクレジット・カードの役割を捨てた」と豪語した人物。一方で2010年に企業による抜け道廃止案が共和党のフィリバスターによって葬られる以前には、中国企業と関係の深い米企業関係者を招き資金集めを行っていたんだとか。カーク議員は今年の中間選挙に関係ありませんけど、ガイトナー氏がわざわざ回顧録で批判するとは何らかの意図を感じます。2012年時点で報じられていたのに、自身の後任に当時の米国務長官だったヒラリー・クリントン氏を推したとあえて書いてますし。

こうしてみるとガイトナー前米財務長官のメモワール、どちらかといえば法人税制改革の下りを始めオバマ政権・民主党寄りな内容と解釈する余地があります。中間選挙を控えた出版は、政権にとってダメージなしと判断したのではないでしょうか。

回顧録といえば、モニカ・ルインスキー氏もヴァニティ・フェア誌に暴露記事を掲載したんです。

当時はホワイトハウス実習生だったモニカ、40歳になりました。

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(出所 : Vanity Fair)

不倫スキャンダル後は就職先が見つからず、自殺という言葉すら頭を駆け巡ったと赤裸々に吐露。母親こそが支えだったとお涙頂戴な内容に仕上がっています。そして「そうよ、上司の方から私を誘惑したの」と明言する有様。これになぜか反応したのが、リン・チェイニー氏。そうです、ブッシュ前米大統領を支えた副大統領の奥様ですね。ヒラリーこそ、暴露記事の「黒幕」と非難の矛先を向けます。理由は、2016年の米大統領選を控え「キレイさっぱり悪材料を片付けるため」だそうです。

チェイニー夫人の推測が正しければ、なぜニューヨークで事業家として優雅なセレブ生活を送るモニカが「2016年の大統領選では黙っていられるか自信がない」と記事中にコメントしていたかが謎ですが。しかも1999年に女性著名ジャーナリストのバーバラ・ウォルターズ氏との独占インタビューに応じ、アンドリュー・モートン著「モニカの真実(Monica’s Story)」の出版を支援していたので、今さら感はたっぷり。何にせよ2014年、中間選挙を控えてすでに情報戦が繰り広げられているのは間違いありません。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年5月12日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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